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金氏徹平インタビュー

金氏徹平インタビュー

インタビュー・テキスト
小林宏彰
撮影:柏井万作

わからないものを、わからないものとして面白がってもらえれば

―作品のもとになる実体験というのは、強い思い入れのある体験でしょうか?

金氏:家族が死んだとか、誰かを好きになったというような大きい話ではなく、捨てられているゴミを見たときに感じた、あの感覚はなんだったんだろうとか、電車に乗ったときにチラッと見た風景が、ずっと頭に残っているのはなぜなんだろうとか、ふとしたときの感覚を作品にするほうが多いですね。

―そうした、ちょっとしたことに気づいていく感覚が、見ている人の笑いを誘うんだと思うんですよね。

金氏徹平インタビュー

金氏:なぜ笑うかと言えば、見た人が作品のどこかに共感しているからだと思うんですよ。自分もこの感じ知ってる、とか、同じ感覚を持ったことがある、と思えたときに、笑えるのかなと。自分の実体験をもとにして作っているから、他の誰かと急につながる瞬間がある。

―にんじんや、洗濯物干しが作品に入っている唐突さ。それに気付いたときに、クスッと笑ってしまいます。

金氏:知ってる物があると、笑ってしまう。笑いという意味では、なにかを台無しにしてしまうとか、ずっと大事にしてきたことをひっくり返すようなことも好きなんです。例えば、わざわざ積み上げてきた物の上に樹脂をかけてしまうのもそうです。

―制作過程が、本当に楽しそうですね。

金氏徹平インタビュー

金氏:常にニヤニヤしながら創ってますよ。一番楽しいのは、例えば、木の枝とパイプといった全然関係のない物どうしを組み合わせたら、スポッとハマったときですね。それは開放感でもあるんです。昔から、ずっと漠然とした閉塞感があって。それを打破するために、「社会」とかそういう中間を飛ばしてしまって、なにか大きなところ、自然現象とか、時間の流れにつながることができれば、すごく自由になれるのではないか、という気がしています。

とはいえ、社会のすべてを無視してやっても意味がないので、立脚点を見失わないために作品の中に身近な社会にある日用品や既製品を使って、そうして大きいところにつながることが重要だと感じています。自分にとっての「自由」とは、インドに放浪したりとか、山にこもるとかそういう意味での社会との離れ方とは違うんじゃないかと思います。

―2009年3月20日から横浜美術館にて開催される個展、『金氏徹平:溶け出す都市、空白の森」では、どれくらいの数の作品を展示されるのですか?

金氏徹平インタビュー

金氏:100点くらいです。プラスチック容器を使った大きいインスタレーションや、木とパイプをつないだもの、アニメーションの作品もあります。「空白の森」という言葉の意味ですが、何もない森というわけではなくて、空白があるというか、空白でできた森、という逆説的なイメージなんです。なにもない場所をつねに創っておきたいというか。閉塞感を感じている、という話にもつながるかもしれませんが、すきまを空けることで、自由な場所を作るという感覚があります。

それから「森」には、これなに? という生き物や、わけのわからない生え方をした草がありますよね。わかんないものがいっぱいゴロゴロしているけど、全体としてなにかになっている、という展示にしたいと思っています。

―探検するような感じで、とても楽しそうですね! 最後に、展示の見どころを教えていただけますでしょうか。

金氏:そうですね。森や街を探検するような気持ちでご覧いただければと思います。よくわからないものがゴロゴロしていると思うのですが、それはわからないものとして見て、面白がってもらえればと。この世界には、わからないものもたくさんある。この展示が、皆さんそれぞれがかつて感じたことのある、何かしらの感覚を思い起こすきっかけになれば嬉しいですね。

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イベント情報

『金氏徹平:溶け出す都市、空白の森』展

2009年3月20日(金・祝)~5月27日(水)
会場:横浜美術館

プロフィール

金氏徹平(かねうじ てっぺい)

1978年大阪出身。京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。2005年に横浜トリエンナーレでCOUMAとして参加。最近では、広島市現代美術館にて『金氏徹平展 splash & flake』(07年)、森美術館にてグループ展『笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情』(07年)、東京都現代美術館で『MOTアニュアル2008』(08年)など。

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