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金氏徹平インタビュー

金氏徹平インタビュー

インタビュー・テキスト
小林宏彰
撮影:柏井万作

実体験をもとにして創っているから、誰かとつながる瞬間がある

―フィギュアへの関心という点で、村上隆さんの手法への意識はあるんでしょうか?

金氏:同じようにフィギュアを使っていたとしても、村上さんと僕はむしろ逆ですね。僕の場合、村上さんのようにフィギュアを日本の特別な文化として扱うのではなく、身の回りにある当たり前のものとして扱いたいなと。だから僕は、フィギュアやアニメに対して、ちょっと引いたところから見ているところがあって、だから、フィギュアから取り外した髪の毛ばかりで構成した作品を創ったりできるのかな、と思うんですよ。

―“teenage fan club”という作品は、フィギュアの髪の毛のパーツだけで構成されていますね。

金氏徹平インタビュー

金氏:あの作品は、いろんな方向のアイディアがくっついたものなんです。コンサートに行って、後ろのほうからステージを見ていると、人の頭がたくさん揺れ動いているのが見えますよね。僕には、それが流動的なひとつの生き物に見えたんです。

で、家にあったフィギュアの髪の毛だけ取り外して、組み合わせてみたら、その生き物のように見えてきました。髪の毛という共通点があるので、土台となっているひとつの生き物から生えているようにも見えるし、注意して見ると、ひとつひとつの髪の毛のもとのキャラクターが分かるのも面白いんです。また、全部毛だけで出来ていて顔がない、髪の毛の境目が空洞になっています。その空洞になにがあったのか想像できる余地を、常に創りたいんです。

―「流動的」なものを表現したいという、金氏さんの思いの延長上にある作品なんですね。

金氏:そうですね。あの作品がポスターに使われているのを見た人が、すごく大きい作品なんだと勘違いして、実際に見たらとても小さいことにがっかりされることがありますが、それは狙いでもあるんです。スケール感がずれていて、あれっと思う感覚って、とても面白いと思うんですよ。

―作品には、フィギュアが使われていたり、木の枝など自然物が使われていたりしますが、作品に使う素材は、どのように決めていますか?

金氏:自分でコントロールしきれないようなものが好きなんです。例えば先ほどおっしゃったコーヒーのにじみ方だとか、樹脂の垂れ方もそうだし、それから日用品も、誰かがなにかのために作ったものという意味で、完全に自分の制御下に置けるものではないですよね。そうしたものを作品に取り入れるのが面白いんです。

金氏徹平インタビュー

―お話をお聞きしていると、金氏さんは、自然、というか外側の世界と、自分の感性という内側の世界のバランスを大事にしていらっしゃる感じを受けます。自分の身体や、創る作品というのは、その二つの世界の結合点で生まれたものだというような。

金氏:そうですね。何かが自分の身体を通り抜けてるだけというか、自分はフレームみたいなものですね。そのフレームも絶えず変化しているので、液体のフレームと言ったほうがいいかもしれません。液体を液体でくるんでいる、というか、たまたま途切れるところで一瞬切っているというか、そんな感覚があります。

―創っていて、これで完成だ! と思う瞬間はあるんですか?

金氏徹平インタビュー

金氏:よく聞かれるんですが、実はないんです(笑)。いや、正確に言えばいくつかあるんですが・・・。ひとつは、タイムリミットがきたら終わりです。もうひとつは、ちょっと足してもいいし、もしかしたらちょっと引いてもいいかな、という状態で終わる。なにも必然性がなく、常に動いている状態にとどめたいんです。たまに、完成してから、ちょっと足してみたりすることもあります。でも、誰も気づかない(笑)。今回の横浜美術館での展示では、会期中に変化する作品も作ろうと思っています。

―現在、横浜美術館に滞在して創作活動をされているわけですが、こういったかたちでの活動のきっかけはなんだったのですか?

金氏:横浜美術館での展覧会のお話があったときに、僕個人のアトリエを持っていなかったんです。それで、美術館内のアトリエスペースを借りて数ヶ月創作することになりました。最終的な展示スペースを意識しながら制作できますし、だからこそアイデアが生まれやすいのでいいですね。今は、美術館が持っている近くのアパートに住んでいるので、横浜という独特の場所が持つ空気感からも影響を受けています。ランドマークタワーなどの大きいビルが立ち並んでいるのに対し、そのすぐ隣には、なにもない空間が広がっているのが気持ちよくて。海もありますしね。

―毎日、何時くらいから制作を始めますか?

金氏:まず、12時くらいに美術館のアトリエに来て、途中トイザらスなどに出かけて買い物をしたりしながら、20時くらいまで制作をします。その後、アパートに戻って、24時を過ぎたぐらいからまた制作を始めます。4~5時くらいまでやって、11時くらいに起きるという生活です。基本的にはとても楽しいのですが、プレッシャーや使命感から、たまに逃げ出したくなることもありますよ(笑)。今後、横浜美術館で滞在して制作する若いアーティストを増やすためにも、僕が失敗するわけにはいかないな、と。

金氏徹平インタビュー

―作品を創るプロセスを教えてください。

金氏:物からインスピレーションを得ることが多いので、街をブラブラして、いろんな物を買って身の回りに置いておくんです。それがあるとき勝手につながっていって、何かに見えてきたり。また、ちょっとした実体験、あのときに感じたこの感覚を表現したい、というモヤモヤした思いが、ふと目に留まったものとつながって作品になることもあります。

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イベント情報

『金氏徹平:溶け出す都市、空白の森』展

2009年3月20日(金・祝)~5月27日(水)
会場:横浜美術館

プロフィール

金氏徹平(かねうじ てっぺい)

1978年大阪出身。京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。2005年に横浜トリエンナーレでCOUMAとして参加。最近では、広島市現代美術館にて『金氏徹平展 splash & flake』(07年)、森美術館にてグループ展『笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情』(07年)、東京都現代美術館で『MOTアニュアル2008』(08年)など。

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