竹内電気インタビュー

ショートフィルムを対象とした、米国アカデミー賞公認アジア最大級の国際短編映画祭『SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA』(以下、SSFF & ASIA)。世界中から様々なショートフィルムが集まるこのSSFF & ASIAに、来年度(2010年6月開催予定)から「ミュージックShortクリエイティブ部門」として、一般公募のコンペティションが行われることが発表され、作品の募集がスタートしている。クリエーターは、土屋アンナや大黒摩季、泉谷しげるやLOVE PSYCHEDELICOなど、著名アーティストを数多く含むエントリー楽曲の中から好きな曲を選び、自由に映像をつけて、そのクリエイティビティを競うことになる。今回はエントリー楽曲に“ミラクル”を提供した話題沸騰中のポップマジシャンズ・竹内電気へ、エントリー楽曲について、さらにクリエイターとしてのエネルギーの源についてインタビューした。

(インタビュー・テキスト:タナカヒロシ 撮影:柏井万作)

音楽から生まれる 新感覚ショートフィルムを募集中!

ショートフィルムって? 竹内電気が考える面白い映像とは。

─SSFF & ASIAのことはご存知でしたか?

竹内電気インタビュー
斉藤伸也

斉藤:もともとは知らなかったんですけど、レコード会社の人から聞いて、おもしろそうだなと。最近夜中にテレビで短い映像が流れてたりして、そういうのを見ることも多かったんですよ。そんなときに、こういう大々的なお祭りがあることを教えてもらったんですけど、タイミングよくぜひエントリーしたい曲ができて。

─ニュー・シングル『YOU & I』(8月19日発売)のカップリングになった“ミラクル”ですよね。

斉藤:はい。いままでは、わりと部屋にこもってる感が強い楽曲が多かったんですよ。それがパーッと開けた曲ができて。曲自体にも物語性があるので、これに映像がつくとどうなるんだろうなって。

─疾走感があって、すごくキラキラした、ポップな楽曲ですよね。僕は“ミラクル”を聴くと、無駄にチャリンコを全力でこぎたくなるんですよ(笑)。どういう過程でできあがった曲なんですか?

斉藤:いままでは恋愛がモチーフになる曲が多かったんですけど、それだけじゃないよなぁと思って。もともと「奇跡」をモチーフにした曲は書きたかったんですけど、前向きなこと書くのに踏ん切りがつかなかったっていうか(笑)。それでメンバーやスタッフとも話をして、一回ほんとに思ったことを素直に書いてみようかなって。

─作りながら浮かんでいた映像ってありました?

斉藤:やっぱり疾走感とか、たまに立ち止まってまわりを見渡してみるとか、そういう視点はありました。ただ、前を向いて走っている感じは見えるんですけど、そのまわりに何があるのか、具体的な映像は見えなかったんです。だから逆に、どんな映像を作ってもらえるのか、楽しみなんですよね。

─自分がショートフィルムを作るとしたら、どんな作品を作りたいですか?

竹内:ホラー映画ですね。B級な、うさんくさい感じの(笑)。『チャイルド・プレイ』みたいなのとか好きなんです。

斉藤:僕は段ボールでトランスフォーマーになりきるみたいな。ひたすらチープを通りこしてるようなものを作ってみたいですね。真顔で「トランスフォーム!」って言って、段ボールをグワーって装着して、変身して。それを野原とかでやってみたいです。

苅谷:僕はスポーツをやったことない人たちと、スポーツをやったことある人たちを、全然関係ないスポーツで対決させて…。

─スポーツをやったことない人が最終的に勝っちゃう?

竹内電気インタビュー
苅谷達也

苅谷:いや、そこがわからないまま終わる(笑)。最後の部分は想像してほしいなって。

斉藤:賛否両論ある感じだね(笑)。

山下:僕はストーリーを作るのは得意じゃないので、ドキュメントとかにしたいですね。自分の家がすごく古いので、ドアノブを直すとか、ウォシュレットをつけるとか、リアルビフォーアフター的な(笑)。お金が使えるなら、自分の家を改築したいです。

─全然クリエイティブな感じがしないですね(笑)。加藤さんは?

加藤:あの、手漕ぎボートやりたいです。手漕ぎボートって、ものすごくドラマチックなんですよ。オールの使い方とか、すごいうまくできてるんですよ。

─手漕ぎボートで海を渡るとかじゃなくて?

加藤:あの、普通の湖畔を。すごいドラマチックなんですって。

─なるほど…。竹内電気は視点が独特ですね(笑)。

2/3ページ:PVはやっぱりマイケル・ジャクソンの一人勝ち

PVはやっぱりマイケル・ジャクソンの一人勝ち
身近にあるショートフィルム

─いままで見たPVとかで、印象に残ってるPVとかってあります?

斉藤:PVはマイケルの一人勝ちでしょう。“スリラー”とか“BAD”とか。見てるだけで楽しいですよね。

加藤:ドラマチックなのもありますよね。GOING(UNDER GROUND)さんとか、演者さんが出て、一本の映画みたいでいいなぁって。

─ミスチルの“くるみ”とかは、賞を獲ったり、かなり話題になりましたよね。

斉藤:あー、おじさんがバンド結成するやつ。

山下:あれ、おもしろかったよね。

─ああいうのはまさにショートフィルムという感じですよね。

苅谷:そう考えるとすごく身近ですね。ショートフィルムって。

─では、映像クリエイターの方々にメッセージをお願いします。

竹内電気インタビュー
加藤広基

加藤:いままでプロモーションビデオを作るのって、少なからず自分たちが介入していたんですけど、それがまったくない状態で、曲を聴いてくれた人が、どういう作品を作ってくれるのか、すっごい楽しみですね。それはライブ見てくれて作ってくれるのもいいと思うし、まったく見ない状態で作るのもおもしろいと思うし。

竹内:今回のエントリーしてる“ミラクル”という曲は、ほんとにいろんな展開があって、すごいドラマチックな曲なので、クリエイターさんも作りやすいと思うし、作りがいがあると思うんです。自分で想像してる世界と全然違うものができたらおもしろいなと思うし、それが自分が想像してるものと一緒だったらうれしいし。完成したものが早くみたいですね。楽しみです。

斉藤:偉そうなことは全然言えないんですけど、ほんと好きにやってほしいですね。ぶち壊すもよし、準ずるもよし。思うがままに使ってやってください。

苅谷:作るものは違えど、込めた想いは作品に反映されると思うんです。それは音楽だろうが映像だろうが、必ず伝わるものだと思うので、楽しみにしてます。

山下:僕らも好きでバンドをやってるんですけど、たぶんクリエイターさんたちも本当に好きでやってる方々だと思うんです。そういう意味では同じ目線でモノを作る人だと思っているし、その二者でひとつの作品を作るっていうことは、すごいことだなと思うんですよね。早くできあがったものが見たいですね。

竹内電気にとって「ミラクル」とは

─みなさんの中で「ミラクル」ってどういうものですか?

竹内電気インタビュー
竹内サティフォ

加藤:つい最近までツアーをまわってたんですけど、最初にまわり始めたときは全然最後のことを想像できなかったんですよね。それで実際にツアーの終わりが見えてきたときに、「こんなにたくさんあったのに、終わっちゃうんだ」って。ミラクルだと思いました。

竹内:あー、俺もそうだった。

斉藤:きっとミラクルって些細なことなんでしょうね。

─確かにそうですよね。歩いてるときにちょっとかわいい子を見つけただけでミラクルを感じたりするし。

斉藤:たまごを割ったら双子だったとか。養鶏場から消費者のところに届いて、割ったら(ドラムが)ダダン!ってなるショートフィルムとかいいですね(笑)。

─ミラクルの規模が小っちゃいですね(笑)。ミラクルって考えようによってはいっぱいあるから、アイディアは浮かびやすいかもしれないですね。自分たちのバンドのイメージは崩してほしい?逆に崩さないでほしい?

斉藤:なんなら、まったく知らない人が作ってほしいですね。曲を気に入ってくれた人が、検索もせずに、曲のイメージだけで作ってくれれば。それで、実物見て「え〜」って思ってくれればいいかな(笑)。

─ちなみに自分たちのPVに関しては、どういうふうに作られてるんですか?

斉藤:竹内電気のPVは、バンドとしての魅力を音楽とともに伝えるという部分が大きかったので、そこに物語性が加味されたことはなかったんですよね。だから今回ショートフィルムとして使ってもらえるのがすごい楽しみなんです。どういうふうになるんだろうなって、想像を超えてる部分がありますね。

─歌詞もうまく拾ってほしいですよね。竹内電気の歌詞って、男のロマンチックな部分がすごくよく出てると思うんです。そこに共感できるんですよね。

斉藤:むしろ女々しいですよね(笑)。うじうじしてるというか。なんか、夢見ちゃってる感じはあると思います。現実はなるべく見ないようにして、きれいなところだけ切り取るみたいな(笑)。

3/3ページ:クリエイターにとって、「モテたい」は不純じゃない!

クリエイターにとって、「モテたい」は不純じゃない!

─音楽でも映像でも、何かに触発されて「俺もやってやるぞ」と思ったりするじゃないですか。みなさんが音楽を作るエネルギーの源ってどんなものですか?

斉藤:お年玉でギターを買ったのが最初なんですけど、なんか、周りでギターを始めるやつが現れだしたんですよ。だけど、まだ始めてるやつが一人か二人だったから、いま始めればオリジネーターになれるなと。いままでがんばってやり遂げたこととか全然ないんですけど、ギターだけは続いたんですよね。

─なんででしょうね。

斉藤:特に大きな理由があるわけじゃないと思うんですよね。普通に暮らしてるなかで、メロディーを思いついたり、適当にギターを弾いてて「この響きがきれいだな」と思ったり。その延長線上で、バンドでやったときに、ビートが乗って、ベースが低音出して、キーボードとギターで華を添えて、っていうのが楽しくてしょうがなくて。止められないな、と思います。

加藤:おれはモテたいとか、そういうのありましたけどね。

─それは一番純粋な気持ちだったりしますよね。

加藤:いまさら口に出すのは恥ずかしいですけど、絶対あったと思いますよ。

斉藤:一番不純じゃないかもしれない。

竹内電気インタビュー
山下桂史

苅谷:僕は親の影響だったんです。父親が運転する車に乗ると、いつもハンドルを叩いてたりしてて、そういうのに憧れて「やりたい!」ってなって。でも、中学校に入って部活もやりだすと、ドラムをやりたくないときもやらされてる感があったんですよ。それでしばらく止めてた時期があったんですけど、高校生になってコピーバンドとかが流行って、「やれるよね?」みたいな。それで改めてやってみたらおもしろくて。ずっと続けてきたものっていう意識がありますね。

─刺激を受けるものとかってあります?

苅谷:ライブとかツアーをやってて大変なときとかは、スポーツを見たりしますね。最近だと世界陸上があったじゃないですか。ああいうのを見たりすると、めちゃくちゃパワーをもらえますね。俺もがんばんなきゃな、みたいな。(野球の)イチローとか見てると、ものすごいパワーをもらえますよね。ああいう人たちのハートというか、そのパワーはすごいなって。

─山下さんは?

山下:僕も始めたのはモテたいとかだと思いますね。いまはテレビとかで歌がうまい人とかを見て、反骨精神みたいな感じでやってる部分はあるかもしれない。「なんだろう?この差は」みたいな。それはテレビで見る人に限らず、一緒にやる人だったり、立場が近い人とかでも、そう思う人はいっぱいいるんで、それでがんばんなきゃなと思うことは多いですね。

─刺激を受ける?

山下:いい言い方をすればそうですね(笑)。嫉妬って言ってもいいかもしれないですけど。そういう部分に関しては、けっこう嫉妬深いかもしれないです。

─あー、嫉妬っていいモチベーションなのかもしれないですね。竹内さんは?

竹内:クリエイティブな何かを作りたいと思うきっかけは、女の子のことがデカイと思って。ドラマとかで、かわいい子の恋愛シーンとかあるじゃないですか。そういうのを見ると、なんか、いいなぁと思って。それで胸がキュンとして、そうするとギターとか持って、曲を作ろうと思ったりとか。世界のこととか、地球の温暖化とかも大事だと思うんですけど、そういうことじゃなくて、女の子かわいいとか、そこが一番原動力になってるところはあります。

─あー、すげーわかります。好きな子ができたら、無性に歌が歌いたくなるみたいな。

竹内:たぶん、すごい作りたくなると思います。

斉藤:完全なる同意ですね。世界のこととかよくわかんないもん。それは真理だと思います。

─その気持ちは超わかる。ちょっと僕、感動しました。

加藤:ここに来てモテたいが不純な動機になってきましたね(笑)。

音楽から生まれる 新感覚ショートフィルムを募集中!

リリース情報
竹内電気
『YOU & I』

2009年8月19日発売
価格:1,000円(税込)
VICB-35018

1. YOU & I
2. ミラクル
3. YOU & I(original karaoke)
4. ミラクル(original karaoke)

プロフィール
竹内電気

愛知県在住の5人組ポップバンド。2005年より本格的にライブ活動開始する。バンド名はリーダー竹内サティフォの実家が経営する「株式会社竹内電気工業」に由来。広い振れ幅を持つサウンドと卓越したアレンジ力に山下桂史(Vocal / Synthesizer)と斉藤伸也(Guitar / Vocal)2人のヴォーカルが交じり合う。エンターテイメント性高いライブパフォーマンスといわゆる草食系なキャラクターで現在のバンドシーンにおいて異彩を放ちながらも、着実にその名を浸透させる。2007年より「HITS!!」、「OK!!」、「SHY!!」と3部作のアルバムをリリースし、2009年、初の全国ツアーとなる『「SHY!!」 release tour -KONJOH-(全45ヶ所)』を敢行し、東名阪CLUB QUATTROワンマンライブも大盛況に終える。



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