武田俊×長井短がポッドキャストを開始 掘り下げる「文化と社会」

いつでもどこでも聴きたいときに聴ける音声コンテンツとして、ポッドキャストの人気が世界的に高まっている。この潮流はコロナ禍のステイホームによって加速しており、Apple、Google、Amazon、Spotifyといった大企業がこぞってポッドキャスト事業を強化。日本も例外ではなく、ニッポン放送は2019年秋から、プラットフォームの垣根を越えた大規模アワード『JAPAN PODCAST AWARDS』を開催。TOKYO FMとジャパンエフエムネットワークも、共同運営する『JFN PARK』を2020年7月に『AuDee』にリニューアルするなど、各社がポッドキャスト普及に力を入れている。

こうした流れがあるなかで、企業が直接ポッドキャストを配信する例も増えている。芸術や文化に関するクラウドファンディングを手掛けるMotion Galleryは、2020年4月より編集者の武田俊、演劇モデルの長井短をパーソナリティに起用した『MOTION GALLERY CROSSING』を毎週水曜に配信。東京・九段下の登録有形文化財「九段ハウス」に毎回ゲストを迎えて、「これからの文化と社会のはなし」を掘り下げている(現在は緊急事態宣言に伴いリモート収録中)。

『MOTION GALLERY CROSSING』
編集者の武田俊と演劇モデルの長井短が「これからの文化と社会のはなし」をゲストとともに掘り下げていく、クラウドファンディングサイト「Motion Gallery」によるポッドキャスト番組。毎月テーマに沿ったゲストトークが行なわれるほか、「Motion Gallery」で進行中の注目プロジェクトも紹介。東京・九段下の登録有形文化財「九段ハウス」で収録され、毎週水曜に最新回が公開されている。

「煽らなくていい、キャッチーでなくてもいい、速報性もいらない、何かじんわり伝わるものとして、『音声メディアって、いいよね』という話になった」(大高)

なぜクラウドファンディングサイトであるMotion Galleryが、ポッドキャストを始めたのか。番組に込めた想いについて、数あるメディアのなかから音声メディアであるポッドキャストを選んだ理由について、Motion Gallery代表の大高健志に説明してもらった。

大高:もともとMotion Galleryは、ソーシャルグッドであったりクリエイティブであったりという、経済的なモノサシだけでは測れない価値を生み出そうと取り組んでいる活動にこそ必要なシード資金が、経済的なモノサシで評価できないがゆえに、お金が届きづらくなっている現状を変えたいという想いから立ち上がりました。芸術や文化をはじめとした社会を豊かにし、よりよい未来を築いていくプロジェクトが、資金不足を理由にスタートを切れない事例を1つでも解決したい想いがあってやっているんです。

でも、どうしても社会は経済中心で突っ走っているので、例えば、常にオルタナティブな視点からの社会へのメッセージがあり、現象を生みだしていた『STUDIO VOICE』(1976年創刊のカルチャー雑誌)みたいな、カルチャーを大切にした価値観を発信していけるといいよねという話をしていたんです。

そのなかで、テキストメディアも悪いわけではないですが、煽らなくていい、キャッチーでなくてもいい、速報性もいらない、何かじんわり伝わるものとして、「音声メディアって、いいよね」という話になったんです。

九段ハウスでの収録風景(収録日:2020年12月16日 / ゲスト:レ・ロマネスクTOBI、GOMESS / 特集:激動の時代でのメンタルヘルスの保ち方)

パーソナリティを務める武田も、企業が音声メディアを手掛けることに肯定的だ。

武田:2015年あたりからオウンドメディアが乱立して、僕も編集長としていくつか立ち上げ・運用に参加したんですけど、2018年あたりからWEBメディアとして運営することに中長期的な価値があるのかとか、そんな疑問を感じていたんです。その頃にJFNの『ON THE PLANET』という生放送のラジオ番組のパーソナリティの依頼をもらって。まもなく担当して3年目になりますが、音声メディアだからこその強みとして、親密さとか、検索不可能性とか、ながら体験ができるとか、あるいは「for fan, to community」みたいな感覚を作りやすいという特徴を感じていたので、大高さんから「番組を通して自分たちのミッションを伝えたい」という話を聞いたときに、ばっちりハマるだろうなと思ったんです。

武田俊(たけだ しゅん)
1986年、名古屋市生まれ。編集者、メディアリサーチャー。株式会社まちづクリエイティブ・チーフエディター。BONUS TRACK・チーフエディター。法政大学文学部兼任講師。大学在学中にインディペンデントマガジン『界遊』を創刊。編集者・ライターとして活動を始める。2011年、代表としてメディアプロダクション・KAI-YOU,LLC.を設立。『KAI-YOU.net』の立ち上げ・運営のほか、カルチャーや広告の領域を中心にプロジェクトを手がける。2014年、同社退社以降『TOweb』『ROOMIE』『lute』などカルチャー・ライフスタイル領域のWebマガジンにて編集長を歴任。2019年より、JFN『ON THE PLANET』月曜パーソナリティを担当。メディア研究とその実践を主とし、様々な企業のメディアを活用したプロジェクトにも関わる。

しかし、番組ではMotion Galleryで進行中のプロジェクトを紹介する「Hot Project」の短いコーナーがある以外は、Motion Galleryに関する話題はほとんど出てこない。そのことを尋ねると、大高が理由を答えてくれた。

大高:このプロジェクトをいますぐ応援してくださいとかではなく、我々なりに「public」を考えてきたMotion Galleryの視点やオピニオンをお届けしたいんです。それは番組をスポンサードしてくださっている九段ハウスさんも同じで、運営会社のNI-WAさんは造園業をやられていて、サステナブルなあり方や、アートに取り組まれていらっしゃいますが、その価値観を伝えてもらえれば、まわりまわって自分たちの事業に返ってくるからというお考えで、近視眼な露骨な宣伝とは距離を置かれていて、僕も感銘を受けています。

「私にわかる言葉だったら、たぶんリスナーの人にもわかる言葉だと思うんです(笑)」(長井)

番組では「いまの時代において必要なもの、あるいはぼくたち自身が聞いて深めたい話」(武田)がテーマとして選ばれ、テーマに基づいてゲストをブッキング。これまでに津田大介などを迎えた「デジタル化する社会で起きているソーシャル・ジレンマ」、いとうせいこうなどを迎えた「見えない差別」などが配信されている。文字で見ると少し堅く感じるかもしれないが、こうしたテーマを音声メディアで扱うメリットについて、長井が話してくれた。

長井:この番組で扱われる議題は、どこかで聞いたけど詳しく知らないこととか、ネットで見たけど生の言葉で聞いてなかったこととかが多いんです。文章で読むのもわかりやすいけど、番組では私のための言葉として話してくださるじゃないですか。私にわかる言葉だったら、たぶんリスナーの人にもわかる言葉だと思うんです(笑)。そうやってゲストの方々が噛み砕いて話してくださることに、毎回うれしさを感じるし、楽しく勉強できています。

長井短(ながい みじか)
1993年生まれ、東京都出身。「演劇モデル」と称し、雑誌、舞台、バラエティ番組、テレビドラマ、映画など幅広く活躍する。読者と同じ目線で感情を丁寧に綴りながらもパンチが効いた文章も人気があり、様々な媒体に寄稿。近年の主な出演作品として『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』『真夏の少年~19452020』『家売る女の逆襲』、舞台KERA×CROSS第二弾『グッドバイ』、今泉力哉と玉田企画『街の下で』、映画『あの日々の話』『耳を腐らせるほどの愛』などがある。執筆業では恋愛メディアAMにて『内緒にしといて』、yom yomにて『友達なんて100人もいらない』、幻冬舎プラスにて『キリ番踏んだら私のターン』を連載。2020年に初の著書『内緒にしといて』(晶文社)上梓。

2月のテーマに選ばれたのは「クリエイティブとSDGs」。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、その文字面を見かけたことがある人も多いのではないだろうか。近年は様々な企業にSDGsの理念が導入されているが、今年のゴールデンウィークには福岡県でSDGsをテーマとした『北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs』の開催が予定されているなど、アート業界でも注目を集めている。

今回の収録では、SDGsについて積極的に発信している博報堂クリエイティブプロデューサーの近藤ヒデノリ、モデルの長谷川ミラをゲストに迎えて、約2時間にも及ぶトークセッションが繰り広げられた。全4回に分けて配信されるエピソードのなかから、2月3日配信分の書き起こしに編集・補足を加えてお届けし、最後に収録を終えた武田と長井のコメントを紹介する。

入社1年目にブラッド・ピットのCMと阪神・淡路大震災を体験。「プロモーショナルなことに疑問を感じちゃった」(近藤)

長井:私はSDGsを全然知らなかったんですけど、お二人が興味を持ったきっかけは何だったんですか?

近藤:僕はSDGsの専門家っていうわけじゃないんですけど、最初に触れたのは2年くらい前ですかね。当時やっていたLocal.Bizというプロジェクトの関係でちらほら聞くようになって、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)のSDGsをテーマにした蟹江研究室や、環境省による地域とSDGsをテーマにした説明会に行ったんです。

それで聞いてみると、「世界のいろんな問題って、実はつながりあってるよね。でも一個だけ解決すると、他に悪影響を及ぼしちゃうので、全体を見渡して問題解決していこうよ」って。そういうことを国連で決めて共通のゴールを整理することで、みんなで取り組みやすくしたマークみたいなものと思ってはいますね。

近藤ヒデノリ(こんどう ひでのり)
1994年に博報堂入社後、CMプランナーを経て、NYU/ICP修士課程で写真と現代美術を学び、9.11を機に復職。近年は「サステナブルクリエイティビティー」を軸に様々な企業・自治体・地域に携わり、2020年に創造性の研究実験機関「UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)」サステナビリティ領域のフィールドディレクターに就任。編共著に『INNOVATION DESIGN-博報堂流、未来の事業のつくりかた』など。「Art of Living」をテーマとした地域共生の家「KYODO HOUSE」主宰。2019年よりグッドデザイン賞審査員。湯道家元で元バックパッカー。

武田:近藤さんは広告代理店でお仕事をされてきて、ビジネスとクリエイティブの結びつきに、いろいろお考えがあったと思うのですが、SDGsを知られたことをきっかけに、かなり能動的にコミットされてきたじゃないですか。どういう部分に自分が携わっていこうと思ったんでしょう?

近藤:もともとは、広告会社に勤めて入社1年目に「俺はCMプランナーとして、CM作るんだ!」ってワクワクしていたんです。でも、上司に元バックパッカーだと言ったら、関西に飛ばされて(笑)、西宮に住んでいたら、阪神・淡路大震災が起きたんですよ。家の真ん前の電柱とかも全部倒れちゃって、まさに緊急事態。そんな最中に仕事ではブラッド・ピットなど外タレが出るCMをつくっていて…。入社1年目で、そうした商業的なものと、人が生きたり死んだりすることを同時に経験して、商業的なことに疑問を感じちゃったんです。

そんなことがスタートにあったので、それから休職してNYに留学したりしながら、「自分は一人のクリエイターとして社会に何ができるんだろう?」って、ずっと考え続けてきたんですよね。だから(自分のなかで)SDGsに関わり始めたのは2年前くらいですけど、単にモノを売る広告を作ることにはあまり意味がないことには、入社してすぐ気づいてたので。そこからは広告業界のなかで何ができるのか、あるいは辞めようかなとか、常に考えながら、二足のわらじを履いたり、三足のわらじを履いたりしながら、いまだに会社にいるとは思いもしませんでした。

10年前くらいにも、コカ・コーラさんで「い・ろ・は・す」という水があって、当時はペットボトルを軽くするということで、「1・2・3で世界は変えられる」というキャンペーンをやって、ペットボトルの軽量化による環境を争点にして、売上の一部を水源を守るNPOに還元するなどやってきて、ソーシャルとかサステナブルを軸にしたブランドをサポートしてきたんですね。

あとは芸術祭やアートアワードなど、アートや文化にまつわるブランディングやプロモーションをずっとしてきたので、そういう意味ではSDGsっていうマークができて、これは便利なツールだなと思って。新しいものというよりも、ようやくこういう世界共通の目標ができたのなら、使えばいいなと思ったんです。いま、企業も、政府も、地域もそれを使って動き始めているので、SDGsのいい部分と足りない部分を見極めながら、僕は自分のできること、クリエイティブなことを中心に、そうしたテーマを楽しい、ワクワクするものにできればと思っています。

持続可能性は「『きれいごとだよな』みたいな感じで、自分がそれをモロにやるっていうふうには思えなかった」(近藤)

武田:入社直後に華やかな広告代理店の業務を横に見ながら、目の前では生活空間が震災で大変なことに。そのジレンマや違和感、その後の留学、あるいは大企業でのプロモーションに携わっていかれたときの問題意識が、もともとお持ちだった価値観と重なって、SDGsというバッジにピタッとハマったということなんですか?

近藤:そうですね。こういう持続可能性とか環境問題って、なかなかしっくりと自分ごとにはならなくて。やっぱり僕はアートやカルチャーとか、クリエイティブなことが大好きだったので、「きれいごとだよな」みたいな感じで、自分がそれをモロにやるっていうふうには、なかなか思えなかったんです。

そんな中できっかけの一つは、パタゴニアさんの「ツール会議」という場に講師として呼んでもらったときに、全国のNPO団体と気候変動の問題やその解決策を考える機会があって、様々な専門家から気候変動や環境問題が本当にいま、大変なことになってることを聞いて、スイッチが入った感じはありましたね。

そのあと「UNIVERSITY of CREATIVITY」(博報堂が運営する創造性の研究実験機関)の開校に向けて、プログラムを考えるなかで調べていくうちに、気候変動や生態系の問題の深刻さにますます気づいて。そうこうしているうちに台風19号が来たり、うちは東京で「エアコンのいらない家」を建てたんですけど、去年などはさすがに暑すぎて、これはちょっとエアコンなしではヤバいなと。それで僕らに、UoCで何ができるんだろうって、頭ぐるぐるしながら、みんなで考えるみたいな。そんな感じです、いまは。

留学先で「自分の国のことについて知らない恥ずかしさで、いろいろ調べていったらSDGsが出てきた」(長谷川)

武田:お二人の取組みの中からの具体的な部分も、ぜひ教えていただきたいと思います。長谷川さんがSDGsに興味を持ったきっかけは?

長谷川ミラ(はせがわ みら)
1997年7月7日生まれ。南アフリカ人の父と日本人の母を持つ。13歳より芸能活動を開始し、主にモデルとして活躍。2017年より自身のブランド『JAMESIE』を立ち上げ、2018年にはロンドンの芸術大学「セントラル・セント・マーチンズ」に入学。現地でファッションに関連する環境問題やフェミニズムへの興味を深め、各種メディアや自身のSNSを通じて積極的に発信。2020年4月からはネスレ「キットカット」公式YouTubeチャンネルで、環境問題をテーマに全国各地を取材。2020年10月からはJ-WAVE『START LINE』ナビゲーターも務めている。

長谷川:私も2~3年ほど前なんですけど、ロンドンにあるセントラル・セント・マーチンズ美術大学に通っていたときに、イギリスでは当時からレジ袋税があって、学生の私からしたら毎回そこに10円を払うのはもったいないなと思っていんですけど、それでも袋がないっていうときはあるじゃないですか。でも、横を見たら、おばちゃんがルイ・ヴィトンの大きいバッグにバーッて野菜を入れてたり、おじさんが手にいっぱい野菜やお肉を持って出ていったりする様子を見て、袋って必要であればもらえばいいし、必要ないときにはもらうものじゃないよなって、そういう実体験があったんです。

学校でもプロジェクトにどんどん取り組むみたいなことを繰り返していたんですけど、基本的にファッションっていうのが、そのときの社会問題を照らし合わせることが、すごく多くて。たとえば最近だと、ディオールが男女平等を謳いたいと思ったときに、フェンシングの衣装は男女一緒だから、フェンシングの衣装をもとにコレクションを作ろうとか。そういうリサーチの仕方を学ぶ学校だったんです。

それでクラスメイトとディスカッションをするなかで、45%が海外勢だったので、イギリス人だけじゃなくて、アジアのいろんなところ、ヨーロッパのいろんなところ、アフリカの子もいたし、中東の子もいたし、情報がすごかったんです。あと、たとえば「ディオールはこういうのやってるけど、ミラは何やる? 日本ではどうなの?」って言われたときに、(日本では)まわりと比べたら知ってるほうだと思っていたんですけど、たとえばジェンダーギャップのランキングが日本は低いといったところで、私にはその解決方法とか、なんで低いのかとか、どういう作用でそういう事実が起きてしまっているのかみたいなところまで答えられなくて。

それに対してクラスメイトたちは、どんどん答えているわけですよ。そこでレベルの差というか、自分の国のことについて知らない恥ずかしさで、いろいろ調べていったらSDGsっていう言葉が出てきて。たとえば、男女平等だったり、教育の話だったり、海洋ゴミ問題とか、そういうのもSDGsの目標に当てはまるじゃん! っていう感じで知ったんですよね。

私もSDGs(で定められた)17ゴール全然覚えてないくらいで。日本ではこうして取り扱っていただけてますけど、私のいまの知識レベルって、ヨーロッパに戻ったら一般人と同じなので。日本の同世代の子とかが、そのくらいの知識量は最低限持っておいたほうがよくない? っていうのを伝えていきたくて、メッセージを発信させてもらっているんです。

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武田:なるほど。長井さん、ここまでどうです?

長井:字面だと小難しい話としか伝わってこなかったんですけど、こうやってきっかけから教えてもらえると、私もここを入口にしたら考えられそうって想像できるようになってくるので、とってもありがたい時間です。

「報道番組にCMがついていることで、その企業の悪いことは報道できない」(長谷川)

武田:お二人のお話を聞いていると、共通しているのが、そもそもSDGsにフルコミットというよりは、これまで自分が携わっていた仕事や学んできたことが、どうやらSDGsの17個のゴールのどれかにマッチする部分があるよね、という感じがします。であれば、それをタグのように扱い、自身の活動とひもづけて、いろんな人と会話ができる。そういうタグのようなものとして、このSDGsは活用できるかもしれません。

もう一つお二人に共通するのが、海外への留学経験。日本国外の大学に行かれたことで受けた影響というのもあるかもしれません。このSDGs、国内では「なんか環境とかの大事なやつでしょ?」くらいの認知はされていると思うのですが、お二人が海外で活発な議論をしたようなレベルの会話は、目に見える形では、まだあまりないのかなと。少なくともぼくの生活実感からは、そう想像できます。だとしたら、この諸外国とのギャップは、どういうところから生まれていると思われます?

長谷川:こういうメディアとかじゃないですかね。ちょっと踏み込んだことを言うと、報道番組にCMがついていることで、その企業の悪いことは報道できないから、そういう部分が日本はあるなって。あとは芸能人さんだったり、表に出る方の発言の少なさが、広告とかにも影響してきているっていうのは間違いなく思っていて。

やっぱりクライアントが強すぎるから、芸能人さんが言わない。海外だとアメリカ大統領選とかは、たとえばハリウッドセレブが投票期間中に「私の今日のメイクはこれです」とかインスタに載せると、それが炎上するんですよ。「何やってんの? いま大統領選中でしょ。あなたは影響力があるんだから、もっとそういうポストをしなさいよ」みたいな。

近藤:まったく逆ですよね、日本と。

長谷川:日本は「なんでそういうことに介入するんだ、言うな」みたいな、それが要因なんじゃないかなって。いままでは消費者のせい、企業のせい、国のせいだとかって思っていたんですけど、それぞれ取材していって最近思うのは、メディアや表に出る人なんじゃないかなって。

[VLOG]サステナブル社会科見学いってきた

「企業は明確にノーとか言わないんですけど、自主規制しちゃう」(近藤)

武田:確かに真逆ですよね。近藤さんは広告やメディアに携わるお仕事ですけど、いまの話はどう聞こえます?

近藤:まったく同感ですね。

長谷川:よかった(笑)。

近藤:メディアの責任が相当大きいと思いますね。別に、企業が明確にノーと言うわけじゃないんですけど、メディアが自主規制しちゃうんですよね。あと、いまSNSだと、すぐに叩かれちゃうじゃないですか。この間もモデルの方が環境問題についてしゃべったら、「じゃあ、お前は自給自足生活するのか」とか、極端なバッシングに合う。そうするとやっぱり嫌ですよね。あと、選挙中に日本のメディアは選挙のこと自体、満足に放送しなかったりしますよね。

長谷川:選挙後とかに放送されますよね。

近藤:そうそう、本当にひどい。よしもと芸人もSDGsの取り組みなどやってますけど、ゴールデンの時間帯に選挙期間中でさえ、全然関係ないことをやってたり。一方で飢餓やフードロスが問題となるなかで、いまだに大食い番組などもバンバンやってて、海外だったら、すぐに叩かれると思うんですけど、そういうのが平気でやってる。ほんと、しょうもないテレビ番組がいっぱいありすぎて。

そうした遠因にあるのは、日本が豊かだからと思うんですよね。安くておいしいものがたくさん食べられるし、家賃もサンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドンとかに比べると全然安い。だから、あまり難しいことを考えなくても、そこそこ暮らせる。だから、権力を持つ側も国民に政治や本質的なことを考えさせないように、適当に娯楽を与えておく方がコントロールしやすくて都合よいというところもあるのかなって。

長谷川:考えさせないってことですよね。

近藤:なんか、エンタメだけ楽しむバカにしておいたほうがいいんじゃないかっていう。

「この番組がなかったら、よく知らないまま過ごしていたと思う」(長井)

長谷川の踏み込んだ発言をきっかけに、一気に動き出したトークは、この後さらにヒートアップ。続きはぜひポッドキャストで聞いてほしい。

MOTION GALLERY CROSSING #039 特集『持続可能な社会における創造力』section1を聴く

オープニングやエンディングの収録も含め、約4時間に渡って喋り続けた武田と長井に、収録を終えての感想を聞いた。

長井:けっこうな回数をやってきたんですけど、そのなかでも特に知らない分野の話だったので、この番組がなかったら、よく知らないまま過ごしていたと思うんです。だから、すごくありがたい時間でしたし、リスナーの方々にとっても、そういう時間になったらいいなと思います。

武田:近年、まちづくりの仕事などに関わっていることもあって、SDGsについては以前から関心を持っていたんですけど、そもそも論から話す機会は少なかったので、とても貴重な機会になりました。編集者という仕事柄、バズっぽい情報は短期的には流通して多くの人の目に入るけど、それにどういう価値があるんだっけとか、それはぼくが大事にしている文化的な価値をむしろ毀損するものなんじゃないかとか、そういうジレンマをずっと抱えているので、今日は実際にSDGsに取り組まれているお二人の話を聞けて勇気をもらえました。

あとは長井さんと一緒に聞くっていうのが、ぼくはこの番組のよさだと思っていて。ご本人が「私にわかる言葉だったらリスナーにもわかるかな」とおっしゃっていたこともそうですけど、今回もクリティカルな質問をぶち込んでくれて、その質問力に助けられてるなあと思っているんです。

その「クリティカルな質問」は2月17日に公開されたエピソード3に出てくるので、ぜひチェックしてほしい。理想論のなかに現実を突きつける、一石を投じるという言葉がふさわしい問いかけだった。

「長井さんが『わかったフリをしない勇気』を持っているところは、番組をやっているなかで本当にありがたいなと思う」(武田)

最後に2人に、今後に向けての意気込みを語ってもらった。

長井:この番組は自分から拾いに行かないと見つからない情報を扱うことが多いと思うんです。でも、自分から能動的に探しに行くことって、すごく興味あることとか、仕事に直結していることになりがちじゃないですか。この番組を聞くと、自分とは直の関係性じゃないと思っていたことも、実はつながっているんだと感じられると思うんです。私自身がそうなので。

あと、これは自分への戒めですけど、だんだん慣れてきて、わかったように話したり、わからないことが恥ずかしくなったりしてはいけないなって。自分で言うのもアレですけど、わからないやつがいることって、たぶん大事なはずで。これからも「それ、わかんないよ」って言い続けたいです(笑)。

武田:長井さんが「わかったフリをしない勇気」を持っているところは、番組をやっているなかで本当にありがたいなと思うところで。僕は役割上、どうしても会話の流れ重視してしまうときがあるんですけど、そういうときは長井さんがちゃんと止めて、一発ぶち込んでくれる(笑)。それが番組の有機的な部分になっているので、そこは変わらないでいてほしいです。

僕自身は「編集者」と名乗ってますが、特殊なタイプだとは思うんです。触れる媒体が紙のときでも、WEBのときでも、そのメディアの特徴を自身の身体で感じながら編集することを自分の仕事哲学のように思っていて。いまはラジオやポッドキャストについてのパーソナリティだけでなく、企画や他メディア展開などの経験もさせてもらったことで、音声メディアの本質的な強みとか、いまの時代にアジャストさせる感覚が、やっとつかめてきた感じがするんです。それをより最適化させ、洗練させてお届けしたいですね。

この『MOTION GALLERY CROSSING』、今日はリモート収録でしたけど、九段ハウスさんというリアルな場所もあるので、今後はWEBを通じてリレーションしながら、リスナーさんとリアルでもコミュニケーションを取れたらなと思っています。なかなか時世的には厳しい状況が続きますけど、WEBを通じた「『文化と社会のはなし』を心地よくできる場所」みたいなものを作りたいと思っていて、具体的に計画もしているので、期待していてください!

番組情報
『MOTION GALLERY CROSSING』

編集者の武田俊と演劇モデルの長井短が「これからの文化と社会のはなし」をゲストとともに掘り下げていく、クラウドファンディングサイト「Motion Gallery」によるポッドキャスト番組。毎月テーマに沿ったゲストトークが行なわれるほか、「Motion Gallery」で進行中の注目プロジェクトも紹介。東京・九段下の登録有形文化財「九段ハウス」で収録され、毎週水曜に最新回が公開されている。

プロフィール
武田俊 (たけだ しゅん)

1986年、名古屋市生まれ。編集者、メディアリサーチャー。株式会社まちづクリエイティブ・チーフエディター。BONUS TRACK・チーフエディター。法政大学文学部兼任講師。大学在学中にインディペンデントマガジン『界遊』を創刊。編集者・ライターとして活動を始める。2011年、代表としてメディアプロダクション・KAI-YOU,LLC.を設立。2014年、同社退社以降『TOweb』『ROOMIE』『lute』などカルチャー・ライフスタイル領域のWebマガジンにて編集長を歴任。2019年より、JFN「ON THE PLANET」月曜パーソナリティを担当。メディア研究とその実践を主とし、様々な企業のメディアを活用したプロジェクトに関わる。

長井短 (ながい みじか)

1993年生まれ、東京都出身。「演劇モデル」と称し、雑誌、舞台、バラエティ番組、テレビドラマ、映画など幅広く活躍する。読者と同じ目線で感情を丁寧に綴りながらもパンチが効いた文章も人気があり、様々な媒体に寄稿。近年の主な出演作品として『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』『真夏の少年~19452020』『家売る女の逆襲』、舞台KERA×CROSS第二弾『グッドバイ』、今泉力哉と玉田企画『街の下で』、映画『あの日々の話』『耳を腐らせるほどの愛』などがある。執筆業では恋愛メディアAMにて『内緒にしといて』、yom yomにて『友達なんて100人もいらない』、幻冬舎プラスにて『キリ番踏んだら私のターン』を連載。2020年に初の著書『内緒にしといて』(晶文社)上梓。

近藤ヒデノリ (こんどう ひでのり)

1994年に博報堂入社後、CMプランナーを経て、NYU/ICP修士課程で写真と現代美術を学び、9.11を機に復職。近年は「サステナブルクリエイティビティー」を軸に様々な企業・自治体・地域に携わり、2020年に創造性の研究実験機関「UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)」サステナビリティ領域のフィールドディレクターに就任。編共著に『INNOVATION DESIGN-博報堂流、未来の事業のつくりかた』など。「Art of Living」をテーマとした地域共生の家「KYODO HOUSE」主宰。2019年よりグッドデザイン賞審査員。湯道家元で元バックパッカー。

長谷川ミラ (はせがわ みら)

1997年7月7日生まれ。南アフリカ人の父と日本人の母を持つ。13歳より芸能活動を開始し、主にモデルとして活躍。2017年より自身のブランド『JAMESIE』を立ち上げ、2018年にはロンドンの芸術大学「セントラル・セント・マーチンズ」に入学。現地でファッションに関連する環境問題やフェミニズムへの興味を深め、各種メディアや自身のSNSを通じて積極的に発信。2020年4月からはネスレ「キットカット」公式YouTubeチャンネルで、環境問題をテーマに全国各地を取材。2020年10月からはJ-WAVE『START LINE』ナビゲーターも務めている。



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