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「VOCA展2010」三宅砂織インタビュー

「VOCA展2010」三宅砂織インタビュー

インタビュー・テキスト
田中みずき
撮影:小林宏彰
2010/02/08

フォトグラムの作品は「一枚きり」

─よく観ると、この作品は絵画ではありませんよね。モチーフが光りを放つような感じであったり、影のようなものが映りこんでいたりして不思議な生々しさがあります。これはどのような技法で制作した作品なのですか?

三宅:この作品は「フォトグラム」という技法で作っています。技法自体は昔からあって、例えばモホリ=ナジやマン・レイの作品が有名ですね。写真と同じ原理ですが、カメラを使わずに印画紙の上に直接物を置いて光を当て、影を落として像を得ます。

私の場合は、フィルムに絵を描いたものと、オハジキやビーズなどの立体物を混ぜて置き、感光させているんです。フィルムは2〜7枚ぐらい重ねて奥行きを出します。同じ組み合わせのフィルムと立体物でも、配置と感光時間が即興的なので、写真なのに作品は1枚しか存在しないんです。これぞという1枚ができるまで何度もトライアルをするので、没にするプリントのほうが多いんですよ(笑)。

「VOCA展2010」三宅砂織インタビュー

─手描きの部分と物質の部分が組み合わさることで、不思議な奥行き感が生まれていて、見ているうち画面の中の世界にどんどん引きこまれていきます。この「フォトグラム」という技法を使ったきっかけは?

三宅:私は2001年頃から、点線と色面を使ってイメージの境界を組み替えるような絵を描いていたのですが、その時「点」の要素にもう少し向き合いたいと思ったんです。そのため、細かい点を描くことが必要になってきたのですが、当時使っていた版画だと「インク」が広がるため小さな点が潰れてしまい、私の欲しい細かさが出ませんでした。そこで、一番シャープな点々を描くために印画紙、つまり「光」を使うことを思いつきました。写真を始めてみて、影が落ちて白黒が生まれる単純さがとても気に入りました。やがて、印画紙はシャープな形がでるだけでなく、濃淡の調子が美しいことに気がつき、2007年ぐらいから作品に活かすようになりました。

─濃淡の調子というと?

三宅:例えば黒ひとつとっても、光の当て方や露光時間で全く違った色に仕上がるんです。影って、物を印画紙に密着させるとシャープに出るものなんですが、浮かせると輪郭がぼやけてしまうんですね。

「VOCA展2010」三宅砂織インタビュー

─なるほど。フォトグラムという技法の魅力が分かってきました。

三宅:制作に取組むうちに、作品が1枚きりであることや、手を動かす要素が増えたことから、版画や写真を経て結果的に絵画に戻ってきた感じがしますね。絵画も写真も、リンクしながら発展してきたことが実感できました。

思いもよらないことが起こる瞬間が好き

─ちなみに、作品制作をされる上で面白いこととはなんでしょうか?

三宅:思いもよらないことが起こった時が好きですね!

─「思いもよらないこと」?

「VOCA展2010」三宅砂織インタビュー

三宅:作品を作る際は、あらかじめしっかりと完成作品を想像しておくのですが、実際にできたものが私の予想よりさらにキレイにできあがることがあるんです。制作をしていて、一番嬉しい瞬間ですね。計画通りに進むのが一番ダメで、自分の力だけで完結しないようにどこかに隙を作っておくことが大事だと思っています。

─それでは逆に、苦労する部分は?

三宅:大きい作品を作っていると肉体的に大変だとか、時間がかかったりとか、現実的な部分ですね。コンセプトを考えることが一番時間が必要、かつ大変ですが、半分以上楽しみなことでもあります。とはいえ、すごく苦しいんですけどね(笑)。

─苦労してもやはり、作品ができていく楽しさがあるんですね。

三宅:そうですね。私は何故か、少しやりにくい技法だったり制限が多かったりすると、逆にアイデアが出やすいんです。制限があるものを工夫していくのが好きなんですね。

─では、考え込んでしまった時にする気分転換方法などはありますか?

三宅:手を止めて散歩に出たりとか、友人とご飯を食べにいったりとか。あとは、その真逆なんですけど、「できるまでやる」という風にスパッと決める。やるかやらないかで迷わないようしています。

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イベント情報

現代美術の展望
『VOCA展2010−新しい平面の作家たち−』

2010年3月14日(日)〜3月30日(火)10:00〜17:00
※金曜日のみ19:00閉館、入場は閉館30分前まで
会場:上野の森美術館
料金:一般・大学生:500円 高校生以下無料
主催:「VOCA展」実行委員会/財団法人日本美術協会・上野の森美術館
協賛:第一生命保険相互会社

三宅砂織個展
『image castings』

2010年3月13日(土)〜4月20日(火)
会場:GALLERY at lammfromm(東京・代々木八幡/代々木公園)
料金:無料

プロフィール

三宅砂織

1975年、岐阜県生まれ。Royal College of Art(ロンドン)交換留学の後、2000年に京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。絵画や版画を学び、在学中から画廊での個展や美術館でのグループ展で作品を発表。修了制作は大学院市長賞・買上賞となっている。町田市立国際版画美術館にパブリックコレクションがあるほか、2000年「神戸アートアニュアル」・2008年「Exhibition as media 2008 『LOCUS』」(神戸、神戸アートビレッジセンター)や「JAPAN NOW」展(ソウル、Inter Alia Art Company)への出品など積極的に作品制作と発表を行い、このほど2010年度のVOCA賞を受賞した。

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