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『震える牙、震える水』長谷川健一 インタビュー

『震える牙、震える水』長谷川健一 インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
2010/06/17

画面の中には、必要以上に文字が溢れ過ぎてはいないだろうか? 街で耳にする音楽は、画一的な感情を押し付けるものばかりになっていないだろうか? あなたが少しでもそんな風に感じているならば、長谷川健一の作品を手に取ることをお勧めしたい。京都出身のシンガーソングライター、ハセケンこと長谷川健一が、山本達久・石橋英子・船戸博史という素晴らしい音楽家と共に作り上げた新作『震える牙、震える水』には、歌詞とメロディーが作り出す確かな感動が存在している。彼の敬愛する尾崎豊やジェフ・バックリー、個人的には元syrup16gの五十嵐隆にも通じるように思う、天性の歌うたいとの出会いに感謝したい。

(インタビュー・テキスト:金子厚武)

尾崎豊との出会いから始まった、ハセケンの音楽遍歴

―まずは音楽遍歴を教えてください。ギターを持って歌うようになったのはいつからで、そのきっかけは?

長谷川:中学三年生のときに父親からガットギターを貰い、高校一年生のときにエレキギターを買いました。ちょうど尾崎豊が亡くなって、色んな特集で初めて耳にした彼の歌をすぐに好きになりました。「尾崎豊弾き語り全曲集」という本を買ってきて、それを見てコードを覚えました。それまでは小田和正、オフコースを聴いていたのですが、ギターでは全くコピーできない。父親のさだまさしの本とかも見てコピーしたのですが、あまり面白くない。やはり好きな曲で練習したかったので、彼の曲ではすぐにコードを覚えました。尾崎豊の曲は未だによく聴きます。コードを覚え出すと、今度は曲を作るようになりました。ただ、それまでは人前で歌ったことがなかったので、宅録で自信のない歌を録音しては、デモテープを作って配っていました。

―以前はノイズ・ミュージックもお好きだったと伺ったのですが?

『震える牙、震える水』長谷川健一 インタビュー
長谷川健一 撮影:船橋岳大

長谷川:ずっとリスナーとしてはロック、ポップス、歌謡曲を並行して聴いていました。ある時、当時かわいいなと思っていた女の子が、「阿部薫の顔はかわいい」というわけです。阿部薫って一体どんな人なんだろうと思ってCDショップに行き、購入してすごいショックを受けるわけです。なんせ即興演奏というものを初めて聴いたわけですから。阿部薫、デレク・ベイリー、灰野敬二、カン・テーファンが特に好きでした。彼等はノイズ・ミュージックという括りだけには入らない人達だと思います。その流れで船戸博史さんも知りました。

―ライブをするようになったのは?

長谷川:デモテープを作って聴いてくれる人が少しずつ増え、「ライブをしないのか?」ということを言われるようになり、消極的にライブを始めました。しかし即興演奏を聴き始めたおかげで、音を出すとはどういうことか、出すべくして鳴らされる音とは何かという禅問答のような問いが生まれました。また一方では曲を書いて歌うということを始めていました。今よりも随分ストイックでした。自分の歌は自分で歌いたかったし、自分で歌うもんだと思っていました。毎日何時間も練習しました。22〜23歳のときです。

―影響を受けたミュージシャンを何人か教えてください。

長谷川:尾崎豊、阿部薫、ジェフ・バックリー、カーティス・メイフィールド、アストル・ピアソラ、マックスウェル。あとは子供のときに聴いたFMラジオです。

―amazonの企画で昨年のベスト・ディスクにジェフ・バックリーのDVDを挙げていらっしゃいましたが、彼の魅力とは?

長谷川: 彼の歌はとても好きです。ギター一本で歌うということ、オリジナル・ソングを歌うということ、他人の書いた歌を歌うということ、声を出すということ、それら全てにおいて大事なことが、彼のCDを聴けば誰もがわかるであろうということです。

―新作で初めてハセケンさんを知る人のために、これまでの作品を簡単に紹介していただけますか? まずは2007年にcompare notesからリリースされた2作『星霜』『凍る炎』ですが、今振り返るとどんな作品だと言えますか?

長谷川:まず自主制作以外でアルバムを作るのが初めてでした。色んな場所で、また色んな編成で録音したにも関わらず、トータルではバラバラな感じが全くしないアルバムです。ずっとファンであった船戸博史さんプロデュース。ドラムはCHAINSの伊藤さんに叩いてもらってます。初めてバンドを組みました。30歳を過ぎて初めて(笑)。10年くらい活動してようやく出せたCDなので、聴いて欲しかった曲沢山沢山、録音し過ぎて二枚になった、という経緯です。

―2008年には京都のガケ書房からボックスがリリースされていますが、あの作品はどんな経緯でリリースされることになったのですか?

長谷川:ガケ書房では自主制作のCDRを販売してもらっていました。ガケ書房の店長さんともう一人、三島さんという写真家でお店を手伝っている人がいました。ライブ写真を何度か撮ってもらったり、彼のスライドの前で歌ったりと色々とコミュニケーションを取る中で、とあるバーで呑みながら、「これからcompare notesからCDを出すにあたって、今までの自主音源をまとめてボックスセットにしたいね」と軽いきっかけでした。

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リリース情報

長谷川健一<br>
『震える牙、震える水』
長谷川健一
『震える牙、震える水』

2010年6月16日発売
価格:2,500円(税込)
PCD-18631 / P-VINE RECORD

1. 何処かへ
2. 絶景
3. 空の色
4. ユリイカ
5. 極北の食卓
6. alllight
7. 青春
8. 震える牙、震える水
9. 白日
10. ふたり
11. 夜明け前

プロフィール

長谷川健一

1976年12月京都生まれ。2007年に船戸博史プロデュースによる2枚が同時リリース(map)。2008年京都ガケ書房より過去の音源4WBOXを200セット限定で発売。京都〜関西では「最後のシンガー」としてファンも多い。2010年から下北沢「440」にて毎月定例ライブを決行。

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