
明るい後ろ向きより、暗い前向き LOST IN TIME インタビュー
- インタビュー・テキスト
- タナカヒロシ
- 撮影:柏井万作
LOST IN TIMEが11月10日にリリースしたアルバム『ロスト アンド ファウンド』が絶賛されている。これまでも人間味溢れる歌心を全面に感じさせる作品で、多くの人を虜にしてきた彼らだが、30歳という節目の年齢を迎える形で制作された今作は、人間味はもちろん、彼らがこれまで歩んできた人生までをも感じさせる作品だ。しかしそれは決してひとりよがりなものでなく、アルバム中の至るところで歌われる葛藤、そして失われることのない希望は、自分の心の奥底にあったもやもやした感情を代弁してくれているかのようで、まるで自分の人生がフラッシュバックするかのごとく強烈に心に響いてくる。バンドとともに多くの紆余曲折を経験してきた海北大輔、大岡源一郎の2人に、熱い想いを語ってもらった。
(インタビュー・テキスト:タナカヒロシ 撮影:柏井万作)
目を背けがちな部分にもちゃんと目を向けてる、ダークサイドなものもLOST IN TIMEの魅力のひとつだから
―最新作『ロスト アンド ファウンド』は本当にいいアルバムでした。これまで歩んできた人生の重みがあるというか。
海北:前作の『明日が聞こえる』(2009年3月発表)を作り終えたときに、みんなで「次はどうしようか」みたいな話をしたんですけど、『明日が聞こえる』は手触りのやわらかい作品というか、やさしくて、あたたかくて、ひらけた部分っていうのは表せたけれど、それはLOST IN TIMEの一面でしかないよねって話になったんですね。もっと内面的なところに向き合って、目を背けがちな部分にもちゃんと目を向けてる、ダークサイドなものもLOST IN TIMEの魅力のひとつだから、次はもっといびつな、極端にそこに集中した作品にできたらいいなって。
―じゃあ、かなり前から今作に向けて動き出していたんですね。
海北:曲すらない状態のときから、そういうイメージは描いていましたね。それで、選ぶ言葉やメロディーを、もう一回自分自身で見つめ直しながら曲作りをして。LOST IN TIMEってバンドは、そこで曲を作ってる、歌詞を書いている海北大輔って人間は、一体何者なんだっていうことを、すごく自問自答し続けた気はします。
―自問自答っていうのは?
海北:例えば、歌詞になる前の文節が出てきたときに、その言い回しだったり、語尾の結び方だったり、描写の捉え方、そういうひとつひとつを今まではどう歌ってたかなとか。それを振り返るだけの時間が少しずつできてきたんですよね。
―今までこうだったけど、もっとこうあるべきだったよな、みたいな?
海北:「こうすれば良かったな」っていう後ろ向きなことではなくて、その瞬間瞬間、全て全力でやってきたんだなってことを確認できたんです。それでその確認ができてからは、自分の言葉に力を持てるようになったんですよね。
LOST IN TIME(左:海北大輔、右:大岡源一郎)
―確かに、言葉にすごい説得力がありました。
海北:前作って今のメンバーで作った初めての作品だったから、決して悪い意味じゃなくお互いの意見を尊重したし、だから手触りのやわらかい作品になったと思うんですよ。だけど今回はすごくわがままに作ったアルバムな気がするんです。歌詞の細かい描写には、源ちゃん(大岡源一郎/ドラム)や三井君(三井律郎/サポートギター)からアドバイスみたいなものはもらったけど、それをもらったからといって直すかどうかは僕が決めるっていう。
リリース情報

- LOST IN TIME
『ロスト アンド ファウンド』 -
2010年11月10日発売
価格:2,520円(税込)
UKDZ-01031. ひとりごと
2. 青よりも蒼く
3. ニジノシズク
4. 勲章と傷
5. なくしたうた
6. 夢
7. その名前を
8. スピンオフ
9. 所在なき歌
10. 進む時間 止まってた自分
11. 陽だまり
プロフィール
- LOST IN TIME
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2001年結成以来、ひたむきさと真摯な姿勢、感情の深いところに突き刺さる詞とメロディーが評価されてきたロックバンドLOST IN TIME。3ピース・バンドならではの緊張感とストレートに鳴り響くギター・サウンドに加え、年を重ねるごとにシンプルながらも味わい深いバンドサウンドへと成長している。2010年11月、通算6枚目となる傑作アルバム『ロスト アンド ファウンド』をリリース。12月より、『LOST IN TIME TOUR 2010〜2011 "LOST & FOUND"』を開催。2011年3月までワンマン7公演を含む全28公演を行なう。ツアー最終日は2011年3月19日恵比寿LIQUIDROOM(ワンマン)。