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変わらないものと、変わったもの salon musicインタビュー

変わらないものと、変わったもの salon musicインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:木下夕希
2011/11/25

塊をみんな飲み込んじゃってるっていう、そういうことだと思う(竹中)

―今のファイルの話もそうですけど、この9年というと、制作の環境も大きく変わったと思うんですね。その変化についてはどう感じていますか?

竹中:中間の流通が全くなくなってるわけじゃないですか? ファイルが送られてきてドラムを合わせられる代わりに、今までそこにはスタジオを使ったり、配達する人がいたり、ショップで買ったりとか、そういう中間が削除されてるわけですよね。だから、全体の相対的な量は縮小していて、それが単純にものすごく不安に感じますね。

吉田:音楽だけじゃないってことだよね?

竹中仁見

竹中:そうそう。音楽だけじゃなくて、こんなに人がいるのに、いらないものがいっぱいできちゃった。YouTubeとかもそうだけど、色々なものがすぐ近くに並列で部屋の中にある状態っていう。いい悪いじゃなくて、そうなってきてる。で、これから更にそうした状態が形作られていくから、みんなそれに備えなきゃいけないってすごく思います。大変だと思いますよ、若い人たち。


―今の話って、『Sleepless Sheep』というタイトルにも関わってたりしますか?

竹中:そこはやっぱり震災のことがあるんですよね。体の調子が悪かったときも不安感はずっとあったんですけど、震災以降はその不安感がより大きな形になって、日本を覆いましたよね。東京も、一日一日死ぬまで生きるみたいな共通項が心の中に芽生えませんでした? それなんですよね。

―Sleeplessな、漠然とした不安感はありますもんね。吉田さんは震災以前と以後でどんなことを感じられました?

吉田:音自体は全然影響を受けていなくて、最終的な仕上がりもタッチも変えてないし、詞の世界観は3月以降に書かれたような内容になってるけど、実は震災以前に書いたものなんですよ。

―アナログフィッシュもそうでしたもんね。『Sleepless Sheep』のアートワークを見て、アナログフィッシュの『荒野 / on the wild side』っていうアルバムタイトルを思い出したりもしました。

竹中:感じてる人は、震災以前からずっと不安を感じて生きてきたんだと思うんですよ。

吉田:プロデュース作業をしていても、震災が一人一人の中にいろんな意味で影を落としてるっていうのは感じて。それをてらいなく押し出そうっていうことを、特に詞を書く人、歌ってる人からは感じて、一緒に仕事してるとそういう人たちの気分が乗り移ってくるっていうか。だから、気分とか取り組む姿勢は変わってるんだろうけど、このアルバムの音がそれによってどう変わったっていうのはないんですよね。

竹中:多分みんなそうだと思う。普通にテレビに出てるような人たちも、お笑いの人とか、仕事にそれが出てるわけではなくて、でも何か塊(かたまり)みたいなものがみんなどっかに一個あるっていう感じの共通項なんだと思う。

―表出はしていなくても、共通のムードは抱えてると。

竹中:塊をみんな飲み込んじゃってるっていう、そういうことだと思う。

結局変わんないんだよね。でも、意識としては、3月以降の気分がどこかにあるっていう(吉田)

―竹中さんは一時期音楽を楽しめない時期があったとのことですが、salon musicとしてひさびさに作品を作り終えた今はどうですか? 今後も音楽を楽しめそうですか?

竹中:どうなんだろう…わかんないな。これからは世の中の空気とわりと連動してくる気がしますね。自分と世の中の。

吉田:その周期は前からあるんだよね。80年代からあるの。それがどれだけ重いか長いかは色々あるけど、でも最終的に音楽を嫌いになってはないもんね。

―音楽への愛情はもちろん根底にありつつ、世の中の空気とも連動していく。『Sleepless Sheep』に関しては、震災後の空気が反映されたと。

竹中:最後の詰めがおのずと丁寧になったというか、一日一時間、いい加減にはしたくないっていう感じですね。最後の方は、微に細に詰めていく感じがあったと思います。

吉田:でも『MASH』(1995)の帯にも「念には念を入れて」ってあったよね。

竹中:そうなんだよね!

吉田:それもディレクターの櫻木くんが僕らの制作姿勢を見て書いてたわけだから、結局変わんないんだよね。でも意識としては、3月以降の気分がどこかにあるっていう。

竹中:今日やりたいと思ったことはやっておこうっていう感じかな。その感じは今何となくみんな持ってますよね。

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リリース情報

salon music『Sleepless Sheep』
salon music
『Sleepless Sheep』

2011年11月16日発売
価格:2,500円(税込)
PECF-1034 / felicity cap-130

1. SLIDER
2. IT'S A LITTLE THING
3. BEDROOM
4. MY STRUGGLE
5. TELL ME YOUR THOUGHTS
6. SIGNS OF WATER
7. RAINCOAT
8. JUST IN THE SUMMERTIME
9. IMMATURE CREATURE
10. RAINSTORM
11. WAKE UP SISTER

プロフィール

salon music

1981年、英国SOUNDS誌ジャパニーズテクノポップチャートで、セルフレコーディングのカセットテープ「hunting on Paris」がNo.1に。82年、英国フォノグラムレコードよりリリースの「Tokyo mobile music」に収録され、のちにシングルカットされる。90年頃から吉田仁は他のアーティストの作品のプロデュースやミックスを多数手がけている。現在までに13枚のオリジナルアルバムをリリース。

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