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変わらないものと、変わったもの salon musicインタビュー

変わらないものと、変わったもの salon musicインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:木下夕希
2011/11/25

ニューウェイブの時代にカセットで音楽を聴いてたような感覚がそこにあったんですよ(竹中)

―先ほど竹中さんが吉田さんについて「たまってるものがあったと思う」とおっしゃっていましたが、実際いかがですか? 9年の間に、「salon musicをやりたい」って思っていた時期もありました?

吉田:漠然となんだよね。そう思っても、やるかっていったら結構腰が重かったりもするし。やったらやったで大変なのはわかってるんで。

吉田仁

竹中:時間が空いたときに作った素材がよかったんですよ。「こういうことをやりたかったんだな」っていうのが、わりと直に伝わってきて。1枚目を作ってた頃の衝動みたいな、音の感じじゃなくて、ニューウェイブの時代にカセットで音楽を聴いてたような感覚がそこにあったんですよ。

吉田:イメージがすごく明確で、そのとき作ってたのは1978~79年のイギリスのポストパンク、特に意識してたのが、当時徳間ジャパンから出てた『Clear Cut』っていう、ラフトレードとかインディのアーティストのシングル盤を集めたコンピレーションがあって、それが当時2人ともすごく好きで。そのイメージで作り始めたから、だから(竹中が)そう感じたんだと思う。

竹中:うん、仁くんがプロデューサーからそこに戻ったことで、衝動を感じたんだと思う。それで私も、「いいじゃん」ってすぐに言ったんですけど、そこから「じゃあ作ろう」とはならなくて。でも、その頃ブルックリンとかあの辺から出てきた音楽が面白くて、素直に聴けてたから、ちょっとずつ作れるかなって感じにはなって。

吉田:とはいえ、空いてた1ヶ月半は意外とすぐに過ぎちゃって(笑)。

竹中:「作ります」って宣言してからほったらかしになってて(笑)。ただ、そのときにまず仁くんに言ったのが、「仁も歌いましょう」ってことで。初期は半々ぐらいで歌ってて、それがすごくよかったんですよ。当時好きだった人も仁の声が好きだったっていう確信はあって、90年代はあんまり歌わなくなってたけど、「私と同じぐらいのボリュームで歌ってみよう」って言って、「うん」って言ったから…

吉田:そこがオッケーじゃないと作れない気がして(笑)。

竹中:それが70年代後期~80年代の気分が投影される基本だったかもしれない。

最初は「2~3曲叩いてくれない?」って言ったんですけど、スタジオが迫ってくるに連れて、「この曲も、この曲も」ってなって、最終的に「ちなみに8曲1日で叩ける?」って、叩いてもらいました(笑)(吉田)

―ブルックリンもそうだし、00年代以降ニューウェイブやポストパンクのリバイバルがあったわけで、そういうものに背中を押されたような側面もあったんでしょうか?

吉田:背中を押されたっていうか、そこは芯からリスナーとして楽しんでいたので、いつの間にか影響されたっていうのはあるかもしれない。初期のポストパンクと、今のブルックリンの音と、ずっと並行して聴いてたから、そこは自然と入ってるかなって。

竹中:既視感もあったよね。かつて見た景色みたいな。聴いたことはある感じだけど、何かがあった後に出てきた今の音の感じっていうか。

吉田:みんなそういう感じだよね。DIRTY PROJECTORSとかもそうだし。

―アナログフィッシュに取材させてもらったときも、吉田さんとVAMPIRE WEEKENDの話で盛り上がったと言ってました。

吉田:一緒に仕事するまでアナログフィッシュがそんなに聴いてると思ってなかったんですけど、全く聴いてるものとか好きなものが一緒で、スタジオに行く車の中でもそういうのばっかり聴いてましたね。

―アナログフィッシュの斉藤州一郎さんがドラマーとして参加してるのは、そこでのシンパシーも大きかったわけですか?

竹中:言語が通じるのがまず大事ですからね。でも、ずっとプログラミングで録音してて、ホントに最後にドラムを入れたんですよ。

吉田:結構細かく作ってたので、最後まで打ち込みで行きたい気持ちもあったんですけど、アナログフィッシュのドラムを聴いてたらすごく合うような気がして。実は最後の"WAKE UP SISTER"を生ドラムに差し替えたいと思ったのが発端なんですね。この曲は2年前に最初に作った曲で、時間が経って新鮮味がなくなってきちゃってて。で、僕が「生ドラムにしたい」って言ったら、「前々から言ってたでしょ!」って言われて(笑)。

竹中:叩けるドラマーがいれば入れたいとは言ってて。それで、アナログフィッシュを仁くんがやったのを聴いて、「彼なら叩ける」と思ったんですよね。

吉田:最初は"WAKE UP SISTER"含めて、「2~3曲叩いてくれない?」って言ったんですけど、スタジオが迫ってくるにつれて、「この曲も、この曲も」ってなって、最終的に「ちなみに8曲1日で叩ける?」って、叩いてもらいました(笑)。ちゃんと事前に「スタジオに入って合わせてみました」ってファイルも送ってくれて。

竹中:そのファイルが曲なしのドラムだけのファイルで(笑)。でも合わせて聴いたら、ばっちりでした。

3/3ページ:塊をみんな飲み込んじゃってるっていう、そういうことだと思う(竹中)

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リリース情報

salon music『Sleepless Sheep』
salon music
『Sleepless Sheep』

2011年11月16日発売
価格:2,500円(税込)
PECF-1034 / felicity cap-130

1. SLIDER
2. IT'S A LITTLE THING
3. BEDROOM
4. MY STRUGGLE
5. TELL ME YOUR THOUGHTS
6. SIGNS OF WATER
7. RAINCOAT
8. JUST IN THE SUMMERTIME
9. IMMATURE CREATURE
10. RAINSTORM
11. WAKE UP SISTER

プロフィール

salon music

1981年、英国SOUNDS誌ジャパニーズテクノポップチャートで、セルフレコーディングのカセットテープ「hunting on Paris」がNo.1に。82年、英国フォノグラムレコードよりリリースの「Tokyo mobile music」に収録され、のちにシングルカットされる。90年頃から吉田仁は他のアーティストの作品のプロデュースやミックスを多数手がけている。現在までに13枚のオリジナルアルバムをリリース。

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