
言葉に出会ったソングライター Applicat Spectraインタビュー
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:柏井万作
職人気質のソングライター=ナカノシンイチ
たまたま始めた音楽ではあるものの、「とりあえず、好きなものは真似して作ってみたい」というナカノだけあって、高校でバンドを始めると、大学生になる頃には自然と作曲へ興味が向けられていった。「自分の方がいいのが作れるっていう、漠然とした自信だけはありました」というように、元々ナカノは何かを吸収し、自分のものにするセンスに長けているのだろう。まずナカノによるデモ作りからスタートするというApplicat Spectraの楽曲における緻密な構成や音の配置からも、彼がかなりの職人気質なソングライターであることが十分伝わってくる。
ナカノ:僕ら、スタジオで曲ができたことがないんですよ。スタジオで「せーの」でやってしまうと、細かな部分の詰めが甘くなってしまって、ホントは音がぶつかってるんだけど大丈夫に聴こえちゃったりとか、ジャッジがすごく甘くなってしまう気がするんです。バンドでやることによって思い通りにならない悔しさもあるにはあるんですけど、煮詰まったときに相談できる人がいるっていうのはすごく大きいんです。僕は曲を作るのが遅いので、バンドじゃなかったらもっと時間がかかってたと思います。
自分がシンガーであり、プレイヤーであること以上に、あくまでソングライターなのだということをナカノははっきりと自覚している。彼らの持ち味のひとつである「1人が複数の楽器を演奏する」ことに関しても、実はこういった彼の気質が発端となっている。
ナカノ:ギターでこれまで聴いたことがないような音色を出してる人もいますけど、すごい研究して面白い音を出す時間があったら、いい曲を作る方に時間を使いたいんです。ギターじゃなくても、キーボードとかサンプリング・パッドで面白い音は出ると思うので、だったらそっちを使いたい。だから、僕はプレイヤーって意識はホントなくて、ライブももちろん大事なんですけど、必要だからやってるっていう感覚はあります。汗かきたくないんですよ、僕(笑)。
そんなナカノにとって、11月に期間限定でリリースされたプレ・デビュー盤『セントエルモ』において、Q;indiviの活動で知られる田中ユウスケがアレンジで参加し、レンタル限定盤には元FreeTEMPOの半沢武志がリミックスで参加していることが、大きな刺激になったことは言うまでもない。
ナカノ:ホントに光栄で、今は技を盗んでる最中です。「やっぱりすごいな」っていう部分と、「自分でもできる」って確信できた部分もあって、変なワクワク感がありますね。特にFreeTEMPOは以前からホントに大好きなんですよ。「こんなにすぐ夢が叶っちゃっていいのかな?」っていうぐらい。
2011年の1月にFreeTEMPOとしてのラストライブを行い、その後は本名で活動をしている半沢は「Applicat Spectraの音楽の中にある、童話的な世界観にこれほどまでに共感した事は、僕の10年間の音楽活動の中で、一番の衝撃でした。新しいスタートを切るこのタイミングで、このバンドに出逢えてよかった」というコメントを寄せるなど、バンドとは相思相愛の関係にある。エレクトロニクスを取り入れているとはいえ、いわゆる「歌もののロック」の範疇にありながら、クラブミュージックのクリエイターからも熱い支持を集めるアーティストというのは、決して多くはないかもしれない。
ナカノ:FreeTEMPOはダンス・ミュージックに「泣き」を持ってきたのがすごくて、「こんなにメロディよかったら踊れないじゃん!」って思っちゃうような、「体が動く」っていうか、ホントに「心が躍る」みたいな、そのバランス感覚。それは自分のバンドにも完全に取り入れてますね。
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大きな目標を目指すっていうのは、何か違う
リリース情報

- Applicat Spectra
『セントエルモ』 -
2011年11月9日、タワーレコード、TSUTAYA RECORDS、HMV、新星堂で期間限定リリース
価格:500円(税込)
APCS-21. セントエルモ
2. イロドリの種

- Applicat Spectra
『セントエルモTakeshi Hanzawa Remix』 -
iTunes Storeにて配信中
イベント情報
- 『Fly like an Eagle』
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2012年2月14日(火)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 渋谷 WWW
出演:
Applicat Spectra
TAKUYA
HAPPY BIRTHDAY
赤い猫
プロフィール
- Applicat Spectra
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2010年8月関西にて結成。ナカノシンイチ(Bass, Vocal, SamplingPad)、ナカオソウ(Guitar)イシカワケンスケ(Guitar, Synthesizer)、ナルハシタイチ(Drums) の4人組。相反する2つの世界を歌いあげるあどけない印象的なボーカルスタイルとエレクトロとギターロックが融合した独特のサウンドがデビュー前より話題となる。PC同期などを一切使わずメンバーが2つずつの楽器を担当して再現する独自のライブスタイルなど何もかもが新しい新世代バンド。