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言葉に出会ったソングライター Applicat Spectraインタビュー

言葉に出会ったソングライター Applicat Spectraインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2012/01/06

“セントエルモ”と“イロドリの種”は「僕のすべて」

実を言うと、バンドの結成時にはナカノではないボーカリストがいたそうだ。そのボーカリストの脱退により、他のボーカルを探しながら、繋ぎで歌っていたナカノが、結局そのままボーカルに落ち着いたという経緯がある。よって、ナカノはバンドで歌うことも初めてなら、歌詞を書くのも初めて。特徴的な彼の歌声は、元々ボーカリストではなかったというのが不思議なほど強い記名性を持っているが、それ以上に「歌詞を書いたのも初めて」という事実には驚かされた。

「読書感想文とか出したことすらないですから(笑)。ひねり出したっていう感じです」という彼の歌詞は、しかし、明確なテーマ性をファンタジックに描き出し、音楽としての響きのよさも併せ持った、実にクオリティの高いものだ。“セントエルモ”では虚無に満ちた世界の中で生きる意味を見出すべく、「人と人のつながりの中にこそ意味がある」という「関係性の物語」を立ち上げ、カップリングの“イロドリの種”では、現在多くのアーティストが向き合っている善悪の二元論に対する違和感を巧みに描いている。そしてこの歌詞は、かつて「自分はここにいます」ということを上手く表現できなかったナカノが、今もその思いを抱えながら、それでも何とか苦手であるはずの言葉でそれを表現しようとした結果なのである。

ナカノ:自分が劣ってるっていう感覚があって、世の中のスピードについていけてないんです。本を読むのも遅かったり、どうしてもできないことっていうのがいっぱいあって、歌詞を書くのもすごく時間がかかる。だから、半分は自分に対して歌ってるんです。「こうやって生きたら、少しは気持ちが楽になるかもよ」って。「生きる意味」とかって、はっきりとした答えは出せない問題だと思うんですよ。ただ、間違ってもいいから何か仮定をして、それを歌詞に入れるっていうのは意識してます。

“イロドリの種”で描かれているように、表現欲求と、それが上手くできないという気持ちに引き裂かれながらも、「関係性の物語」という仮定を立ち上げることで、力強い一歩を踏み出した“セントエルモ”。この2曲は、まさにApplicat Spectraの、ナカノシンイチの世界観の根底に位置するものであり、確かな所信表明だと言っていいだろう。

ナカノ:やりすぎたかなとも思ってるんです。この2曲で、僕のすべてなんですよ。最初からすべて出しちゃった(笑)。

大きな目標を目指すっていうのは、何か違う

正式なデビュー前にすべてを出してしまったというナカノに対し、「じゃあ、今は何に興味がある?」と聞くと、「宇宙ってどうなってるのかな?」という誇大妄想的な返答が返ってきたのには一瞬度肝を抜かれたが、それはつまり、人知を超えた力に憧れ、そこによりどころを求めるという、誰もが一度は通るであろう思考回路がポロッと口から出たということのようだ。

ナカノ:誰かが言ったことをそのまま飲み込むのは違うと思ってて、よりどころを自分で作ろうとしてる感じなんです。最初は「何かを作る」っていうのが自分のよりどころだったんだと思うんですけど、言葉を書くようになったことで、もっと具体的に「どう生きたらいいのか」を考える時間が増えたので。

2012年のApplicat Spectraは、4月の正式デビューを控え、10年分の密度だった2011年以上に濃密な時間を過ごすことになるに違いない。そこで、2012年の展望を聞いてみたところ、再び職人気質のソングライターとしてのナカノが顔を見せた。

ナカノ:今までは「ライブでできる」っていうのを前提に曲を書いてたんですけど、それを1回振り払いたいんです。曲の途中で楽器を変えるときって、それ以外の人間が何か音を出して間を繋がなきゃいけないので、僕らの曲ってやたらブレイクが多いんですよ(笑)。そういう制約なしに、単純にいいものが作りたいんです。

「じゃあ、もっと大きな、バンドとして成し遂げたい目標は?」という最後の質問に、ナカノは再びじっくりと考え、言葉を選びながら答えてくれた。

ナカノ:大きな目標を目指すのって、僕は何か違う気がするんです。例えば、「武道館でライブがしたい」って、武道館じゃないと入りきらないから武道館でやるわけじゃないですか? 「100万枚売りたい」っていうのも、それだけの人が欲しいと思ったから売れるわけで、それって目標を立ててやるよりも、いい曲を作って、いい演奏をするしかないんじゃないですかね? だから…じゃあ、こうします。「これ以上いい曲が書けないって思うこと」にします。

現代の誰もがどこかしらで感じている生きづらさと向き合いながら、強いクリエイター気質で最高の音楽を生み出そうとする姿勢を持ったApplicat Spectra。あなたと彼らの関係性の物語は、すでに始まっている。

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リリース情報

Applicat Spectra『セントエルモ』
Applicat Spectra
『セントエルモ』

2011年11月9日、タワーレコード、TSUTAYA RECORDS、HMV、新星堂で期間限定リリース
価格:500円(税込)
APCS-2

1. セントエルモ
2. イロドリの種

Applicat Spectra『セントエルモTakeshi Hanzawa Remix』
Applicat Spectra
『セントエルモTakeshi Hanzawa Remix』

iTunes Storeにて配信中

イベント情報

『Fly like an Eagle』

2012年2月14日(火)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 渋谷 WWW
出演:
Applicat Spectra
TAKUYA
HAPPY BIRTHDAY
赤い猫

プロフィール

Applicat Spectra

2010年8月関西にて結成。ナカノシンイチ(Bass, Vocal, SamplingPad)、ナカオソウ(Guitar)イシカワケンスケ(Guitar, Synthesizer)、ナルハシタイチ(Drums) の4人組。相反する2つの世界を歌いあげるあどけない印象的なボーカルスタイルとエレクトロとギターロックが融合した独特のサウンドがデビュー前より話題となる。PC同期などを一切使わずメンバーが2つずつの楽器を担当して再現する独自のライブスタイルなど何もかもが新しい新世代バンド。

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