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小山登美夫&塩見有子対談 現代アートの仕事の魅力

小山登美夫&塩見有子対談 現代アートの仕事の魅力

インタビュー・テキスト
坂口千秋
撮影:菱沼勇夫

現代アートの学校MADの10年

―小山さんに続くように、塩見さんたちがAITでMADを立ち上げた00年代初めは、社会とアートのつなぎ手としての仕事が注目され始めた時期でした。AIT設立のきっかけは横浜トリエンナーレだったんですよね。

塩見有子
塩見有子

塩見:2001年の横浜トリエンナーレのボランティアに1,000人近い人々が参加しました。そのとき、現代アートへの関心の高まりを感じて、現代アートの鑑賞者を育てる必要があると思いました。また、展覧会をつくることを専門的に学べる場所がほとんどなかったので、それをつくりたいというのがAITを立ち上げ、学校であるMADを始める一番の動機だったんです。はじめはキュレーションコースとオーディエンスコースの2つを用意して、受講生はたった30人でした。

小山:カリキュラムの内容は少しずつ変わっていってるの?

塩見:実は、毎年、変わっています。最近は社会人のアートへの関心が高くなっていて、今年からアートと産業や社会貢献との繋がりを考えるインダストリーコースを新しく設けました。また、AITの看板プログラムでもあるキュレーションは、展覧会の実現をめざすコースとしてパワーアップしました。アートを勉強して将来自分の仕事に活かしたいという人や、アートの仕事を始めたいという人まで、アートとビジネスの関係をもっと知りたいという声は年々多くなっていますね。

―確かにアートとビジネスの関係をちゃんと教えるところも、まだあまりないですよね。

塩見:そうですね。社会人はどうしても忙しいので、クーポン制で興味のある授業を少しだけを選んで受講できるようにしたり、オンライン授業を無料化して「FREE MAD」として配信したりして、今のニーズに対応出来るように工夫しています。

―MADに来られる人ってどんな人が多いんですか? みんなやっぱりアートの仕事がしたいのでしょうか? 

塩見:アートの仕事を目指す人や留学準備に来られる人もいますけど、大半はまず好奇心と興味からですね。クリエイティブ業界の人や、雑誌の編集者、一方では銀行、金融、保険関係まで、業種はさまざま。参加者の約90%が社会人で、20〜30代の女性が多いです。さっき調べたら、すでに過去の受講生が1,500人くらいいて、そこからアート業界で働いているケースが非常に多いんですね。

小山:1,500人ってすごい数だね。今度うちにもMADの卒業生がスタッフで入るんですよ。MAD出身って人、ほんとにアート業界に増えてきたよね。

―卒業生で今アートの現場で働いている方は、どんな仕事に関わっているのですか?

塩見:ギャラリー、美術館の学芸員や広報、新聞や雑誌などプレスの仕事に就く人もいますし、自分のスペースや組織を立ち上げる人もいます。TOKYO ART BEATを始めた人や、勤めているコンサルティング会社で、アートの考え方を応用した新人社員研修を企画する人など、新しいニーズを起こしたり、自分の仕事にアートを活かす人もいますね。

小山:僕は大学でもMADでも教えてるんだけど、MADの受講生はモチベーションが全く違うよね。ここは社会経験のある人がお金を払って来るから、目つきが全然違うんだよね。質問もバンバン出るし。

塩見:みんな自主的に勉強会を開いたり美術館へ行ったりしています。アートを通じて仕事を超えた横の関係がつくれることも魅力でしょうね。

―横のつながりって大事ですよね。実際アート業界の求人って、誰かの紹介というパターンが多いイメージです。

塩見:そうですね。私たちも「MADをやってそのあとどうするの?」ってところをずっと意識しながらコースをつくってきたので、業界の方からお声掛けがあればMADの受講生にも情報を流して応募できるようにしています。アート業界で働きたい人はいっぱいいるけど圧倒的に口が少ないし、探す方も現場を知っている人が欲しいから、業界の人づてというケースはやはり多いでしょうね。

3/3ページ:小山登美夫に聞く、今アート業界が求める人材とは?

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イベント情報

5コマから学べる現代アートの学校「MAD」

MAD無料体験レクチャーシリーズ
『ARTIST BIRTHDAYS』

2012年3月21日(水)
会場:東京都 代官山 AITルーム
時間:19:00〜20:30(要予約、詳細はウェブサイトを確認)
料金:参加無料


MAD受講ガイダンス

2012年3月26日(月)
会場:東京都 代官山 AITルーム
時間:19:15〜20:30(要予約、詳細はウェブサイトを確認)
料金:参加無料


菅木志雄展
『潜態の場化』

2012年3月10日(土)〜4月14日(土)
会場:東京都 清澄白河 小山登美夫ギャラリー東京 7F
時間:12:00〜19:00
閉廊日:日、月曜、祝日


オープニングレセプション

2012年3月10日(土)18:00〜20:00


ジェレミー・ディッキンソン展
『Autopark』

2012年3月10日(土)〜4月14日(土)
会場:東京都 清澄白河 小山登美夫ギャラリー東京 6F
時間:12:00〜19:000
閉廊日:日、月曜、祝日


オープニングレセプション

2012年3月10日(土)18:00〜20:00


インカ・エッセンハイ / Inka Essenhigh展
『The Natural and the Man-Made』

2012年3月2日(金)〜4月7日(土)
会場:京都府 下京区 小山登美夫ギャラリー京都
時間:11:00〜19:00
閉廊日:日、月曜、祝日


柏原由佳展
『トランジション』

2012年3月2日(金)〜4月7日(土)
会場:京都府 下京区 TKG エディションズ京都
時間:11:00〜19:00
閉廊日:日、月曜、祝日

プロフィール

小山登美夫

1963年東京都生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアートという、日本を代表する現代美術画廊の勤務を経て、1996年に小山登美夫ギャラリーを開廊。村上隆、奈良美智といった同世代の日本人アーティストの展覧会を多数開催するだけでなく、海外のアートフェアにも積極的に参加して国外のアーティストも取り扱うなど、ワールドワイドな展開を行う日本のギャラリーの先駆けとなる。

プロフィール

塩見有子

アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]ディレクター。学習院大学法学部政治学科卒業後、イギリスのサザビーズインスティテュートオブアーツにて現代美術ディプロマコースを修了。帰国後、ナンジョウアンドアソシエイツにて国内外の展覧会やアート・プロジェクトのコーディネート、コーポレートアートのコンサルタント、マネジメントを担当。2002年、仲間と共にNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]を立ち上げ、代表に就任。AITでは、レジデンスやMADをはじめとするAITの活動全体の企画やマネジメント、組織運営を行う。

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