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大いなる期待を背負ったバンド「cinema staff」

大いなる期待を背負ったバンド「cinema staff」

インタビュー・テキスト
金子厚武
2012/06/20

愛すべき音楽へのリスペクト

アルバム『cinema staff』の発表に伴うツアーのファイナルが行われたのは、渋谷のクラブクアトロ。そう、三島が「人生で一番聴いたアルバム」と語る、あの『シブヤROCK TRANSFORMED状態』と同じ舞台である。この日のライブで三島は、やや照れくさそうにしながらも、言わずにはいられなかったといった感じで、「あのアルバムと同じ舞台に立てた」という喜びを率直にMCで語っている。

久野:NUMBER GIRLのライブ盤っていうのは、僕たちのライブでは重要なタイミングでかかってることが多かったんです。気合いを入れたいときに、『シブヤROCK TRANSFORMED状態』を聴くか、『サッポロOMOIDE IN MY HEAD状態』(解散ライブを収めたライブ盤)を聴くか、みたいな。

三島:「何回解散させたかな?」っていうぐらい解散させてるよな(笑)。

そんな風に話す様子を見て思うのは、シネマを渋谷クアトロまで、『cinema staff』まで、「海」までたどり着かせた原動力は、間違いなく彼らの音楽に対する愛情だということだ。特に、自分たちが聴いて育ってきた愛すべき音楽へのリスペクトを、彼らは片時も忘れたことがない。

このクアトロ公演はもちろん、彼らのライブのオープニングSEは常に地元の先輩バンドであるClimb The Mindであり続けているし、そもそも2007年に辻が9mmのTシャツを着ていなかったら、今のシネマはなかったかもしれない。デビュー当初こそレコーディングで苦しんだものの、それでもデビュー以降に解散を考えたことは一度もないという彼ら。それは、音楽へのピュアな愛情を持ち続けていることの何よりの証だと言えよう。

飯田:(上の世代とのつながりは)辻のおかげですね。何となく人と話せるようになる天才なんで(笑)。

辻(Gt):ずっとライブを見に行ってたし、憧れていた人たちと一緒にライブができるようになるっていうことはめちゃくちゃ感慨深いですね。

そして2012年、念願のbloodthirsty butchersとの対バンを果たすと、同じく結成当初からの憧れだったLOST IN TIMEをゲストに迎え行われたツアーファイナルの4月14日の渋谷クアトロのステージで、メジャーへの移籍を発表。クアトロでLOST IN TIMEと共にだなんて、彼らにとってこれ以上のシチュエーションはなかったはずだ。

『into the green』に込めた想い

st E.P.『into the green』
1st E.P.『into the green』

メジャーデビュー作1st E.P.『into the green』の制作は、インディーズからのデビュー時とは違った意味で、彼らにとってひさびさの試練となった。自由の海を象徴する「ブルー」の後に彼らが選んだ「グリーン」が意味していたのは、「救い」だった。

三島:僕は緑色に「救いの色」っていうイメージがすごくあったんですよ。去年は震災もあったし、プライベートのゴタゴタもあって、結構心がやられていて、当時作っていた曲は全部自分を助けるために作った曲なんですけど、(“into the green”は)その最も象徴的な曲なんです。

アルバムの制作ですべてを出し切り、一時的に抜け殻の状態にあったバンドを襲った未曾有の震災。実際にメジャーが決まるかどうかというナイーブな時期だったことも重なって、メンバーそれぞれが自身と向き合わざるを得ない、そんなギリギリの状況で制作が進められていたのである。

久野:「辞めようと思った」とか、そういう話ではないですけど、異様な空気ではありましたね。曲を作ってるときも、「わけわかんないけど、とりあえず形にしよう」みたいなガムシャラ感はすごくあって、「メジャーだからこういう曲を作らないといけないんじゃないか」とか、そういうことを考えている暇もなかったです。

このような状況の中で作り上げたからこそ、“into the green”は彼らにとって非常に大きな意味を持つ曲となった。飯田の涼しげな歌声から始まるこの曲は、シネマのサニーサイドが押し出された、メロディの美しさが際立つストレートな1曲。しかし、この曲が何より素晴らしいのは、何とか大切なものだけを掴み取ろうとするバンドの姿がはっきりと見えるところだ。

「名前を呼んでくれ。それ以外何ひとついらない。」というサビの歌詞が示しているように、疲弊した状況の中でも、彼らは決して前に進むことをあきらめていたわけではない。すべてをさらけ出し、自らの核だけを信じ、何とかこの曲を作り上げたのだ。

楽曲のハイライトとも言うべき、轟音パートからスッとアコースティックギターだけが残る中盤の展開は、まさに混沌の末に大切なものを手にしたことが、音で表されているかのよう。こういう曲をメジャーの最初に出せたというのは、非常に意味があることだと思う。

飯田:今までの曲から比べると素直な曲というか、無駄に何も汚していない感じがあります。三島のそのときの状況から歌詞が出てきて、こういうメロディが生まれたんだと思うんですけど、それが結構切ないものだったりして、それは壊さないように歌いました。

三島:この頃の曲を書きあげて、「すごくスッキリした」というか、「吐き出せた」みたいな思いはあって、すごく楽になりました。今まではそういう風に思って曲を書いたことがなかったんですけど、あれがなかったら、今の落ち着いた精神状態にもなれてないと思います。

誰もがどこかで「救い」を求める現代において、同じように「救い」を求め、迷い悩みながらも、音楽への真っ直ぐな愛情を持ち続けるバンドの存在は、きっと音楽を愛する人々にとっての「救い」と成り得るはず。そんな意味においても、“into the green”のテーマが「救い」であったことは、今後の彼らにとって、きっと大きな意味を持ってくるのではないだろうか。そう、シネマの新たな物語は、ここから始まるのだ。

三島:一時期すごく「表現しなきゃ」っていうか、「表現者じゃないといけない」みたいな謎のプレッシャーがあったんですけど、今はもうなくなりました。「そのときに言いたいことがあれば、言えばいいや」って。いろんなバンドと関わりながら、アングラでもオーバーグラウンドでも関係なくやって、「こんなに楽しそうに音楽でメシ食ってるぞ」っていう見本になりたいと思ったりもしますけど、まずは音源を聴いてみてほしいし、この後出るのもどんどん良くなるんで、楽しみにしていてほしいです。

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イベント情報

『cinemastaff 1st E.P.「into the green」release oneman live「望郷」』

2012年7月1日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:岐阜県 岐阜 BRAVO
出演:cinema staff
料金:前売2,800円 当日3,300円

2012年7月15日(日)OPEN 17:15 / START 18:00
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
出演:cinema staff
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

リリース情報

cinema staff<br>
『into the green』
cinema staff
『into the green』

2012年6月20日発売
価格:1,400円(税込)
PCCA-03613

1. into the green
2. 棺とカーテン
3. チェンジアップ(Re-Recording)
4. 優しくしないで(Re-Recording)
5. KARAKURI in the skywalkers(Re-Recording)
6. AMK HOLLIC(Re-Recording)
※初回特典として『cinema book』が付属

プロフィール

cinema staff

2003年、辻 友貴、飯田瑞規、三島想平が前身バンドを結成。2006年7月に久野洋平が加入し、現在の編成となる。愛知・岐阜県のライブハウスを中心に活動を開始し、2008年に残響recordより1st mini album『document』をリリース。現在までに3枚のミニアルバムと1枚のフルアルバムをリリースし、2012年6月に満を持して1st E.P.『into the green』でメジャーデビューを果たす。

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