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大いなる期待を背負ったバンド「cinema staff」

大いなる期待を背負ったバンド「cinema staff」

インタビュー・テキスト
金子厚武
2012/06/20

残響recordとの運命的な出会い

オルタナティブなサウンドと、ポップなメロディという軸を持ったシネマが、残響recordの存在を知るのは時間の問題だった。インストバンドte'のギタリストである河野章宏によって2004年に設立された残響recordは、日本の良質なエモ〜ポストロックのバンドを次々と世に送り出し、中でも2006年にインディーズデビュー、2007年にメジャーデビューを果たしたレーベルの看板バンド9mm Parabellum Bulletは、狂騒的でプログレッシヴな音楽性でありながら、大きな会場を埋めるビッグバンドへと瞬く間に成長していった。当然シネマのメンバーもte'や9mmを聴いて興奮し、酸素十倍といったややマニアックな残響のバンドも聴き込むほど、熱心なリスナーだった。

cinema staff

そんな彼らが残響recordとの運命的な出会いを果たしたのは2007年の8月。シネマが東京でライブを行った際、たまたま対バンを見に来ていたレーベルのスタッフが、シネマを発見する。しかも、そのスタッフが見に来ていたのはシネマのひとつ前に出演していたバンドで、そのバンドを見終えて帰ろうとしていたところ、9mmのTシャツを着たギターの辻がセッティングに現れ、彼らのライブを見る気になったのだ。なんという偶然! いや、今にして思えば、それは必然であったようにすら思う。

しかし、ちょうどその頃に同郷のmudy on the 昨晩にも残響recordから声がかかっていたため、「まさかこんな近くの2バンドに、あの残響recordから話が来るわけがない」と、最初はかなり怪しんでいたらしい。それでもようやく、河野がエンジニアを連れて岐阜を訪れ、スタジオでプリプロを行う中で、デビューを実感することとなったのだが。

試練のファースト&セカンド

1st mini album『document』
1st mini album『document』

こうして2008年11月に、残響recordから記念すべきインディーズデビューとなった1st mini album『document』を発表すると、その半年後の2009年6月には2nd mini album『Symmetoronica』を発表と、順風満帆のスタートを切ったかのように見えたシネマだが、メンバーに言わせれば、この時期は「試練」でしかなかった。『document』は彼らにとって初の本格的なレコーディングだったため、勝手のわからない作業に戸惑い、特に飯田は何度となくボーカルを録り直すことで、心身ともに極限状態だったという。アルバムタイトルは別の候補もあったが、「これは当時のバンドの姿をそのまま収めたドキュメンタリーである」として、『document』と名付けられている。


1st mini album『document』収録曲

飯田:歌のブースの中で寝てたりしましたからね。今考えると、そんな状況なんて絶対ないじゃないですか? もう、疲れすぎてて。

三島:「30分休憩」っていうときに、「飯田が出てこない」って見に行ったら、すごい体勢で寝てて。歌詞カードにはグチャグチャ色々書いてあって、鉛筆がボロボロ折れてるっていう…地獄絵図でしたね(笑)。

2nd mini album『Symmetoronica』
2nd mini album『Symmetoronica』

一方の『Symmetoronica』では、レコーディング自体は前作よりスムーズに進んだものの、収録曲を巡ってプロデューサーを務めた河野と何度も話し合いを重ねることとなり、今度は三島が疲労により激痩せを経験するなど、思い出すのも辛い時期だった。しかし、その作業が決して無駄ではなかったことは今となれば明白で、もちろん演奏も歌もまだまだ荒削りではあるものの、センスのいいアレンジやメロディから、この2作が間違いなく今現在のシネマの原型となっていることがわかる。


2nd mini album『Symmetoronica』収録曲

実際、『Symmetoronica』のリリースに伴うツアーを経て、2010年の3月に渋谷のO-nestと名古屋のROCK'N'ROLLで行われた初のワンマンは両日ともにソールドアウトを記録。バンドを取り巻く状況は、確実に広がりを見せ始めていた。

自由の海へ

インディーズ時代のシネマが辿ってきたのは、「海」へ出るまでの道のりだったと言うことができる。

三島:海は常に憧れでした。内陸の岐阜県出身なので、身近に海がないんです。小さいときから海水浴に行く機会もそんなになかったし、泳ぐといったらプールの決められた範囲の中。でも、頭の中では海の果てしないイメージがあって、自由の象徴だったんです。外に向けて放たれているものの象徴で、すごく憧れてました。

3rd mini album『Blue,under the imagination』
3rd mini album
『Blue,under the imagination』

そんな「海」への想いは、様々な制約から解放され、自由な創作の喜びを手にしたいというバンドの想いとはっきりリンクしていた。そのイメージが初めて明確に表れたのが、3rd mini album『Blue,under the imagination』。バンドにとっての初のセルフプロデュース作品で、すべてを自分たちでコントロールした結果、初めて楽しいレコーディングを経験することができた、大事な作品だ。「ブルー」という言葉に、明確な「海」のイメージはまだなかったというが、自由を少しずつ掴み始めたという感覚が、そのままタイトルへとつながっていたのだと思う。


3rd mini album『Blue,under the imagination』収録曲

2010年の年末には、いよいよ4人で上京。共同生活を送りながら、迎えた勝負の2011年は、初のシングル『水平線は夜動く』と共に幕を開けた。この「水平線」という言葉には、明確に「海」がイメージされ、いよいよ彼らの最初のゴールが目前に迫る。

1st full album『cinema staff』
1st full album『cinema staff』

そして、2011年6月に発表された1st full album『cinema staff』で、遂に彼らは解放され、自由の海へとたどり着いた。ここには、もはやエモ〜ポストロックといった文脈を必要としない、ただただ自分たちが思う「かっこいい音楽」を鳴らしているシネマがいる。アルバムを締めくくる大曲“海について”は、まさにインディーズ時代の集大成と呼ぶべき1曲であり、その壮大なスケール感は、まさに彼らの眼前に広がる海そのものなのである。


1st full album『cinema staff』収録曲

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イベント情報

『cinemastaff 1st E.P.「into the green」release oneman live「望郷」』

2012年7月1日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:岐阜県 岐阜 BRAVO
出演:cinema staff
料金:前売2,800円 当日3,300円

2012年7月15日(日)OPEN 17:15 / START 18:00
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
出演:cinema staff
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

リリース情報

cinema staff<br>
『into the green』
cinema staff
『into the green』

2012年6月20日発売
価格:1,400円(税込)
PCCA-03613

1. into the green
2. 棺とカーテン
3. チェンジアップ(Re-Recording)
4. 優しくしないで(Re-Recording)
5. KARAKURI in the skywalkers(Re-Recording)
6. AMK HOLLIC(Re-Recording)
※初回特典として『cinema book』が付属

プロフィール

cinema staff

2003年、辻 友貴、飯田瑞規、三島想平が前身バンドを結成。2006年7月に久野洋平が加入し、現在の編成となる。愛知・岐阜県のライブハウスを中心に活動を開始し、2008年に残響recordより1st mini album『document』をリリース。現在までに3枚のミニアルバムと1枚のフルアルバムをリリースし、2012年6月に満を持して1st E.P.『into the green』でメジャーデビューを果たす。

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