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決して安住しないダンスの求道者 北村明子インタビュー

決して安住しないダンスの求道者 北村明子インタビュー

インタビュー・テキスト
乗越たかお
撮影:西田香織
2012/09/10

どうしたら確固たるものがある、と思えるのかが分からないんです(笑)。

―あらためて北村さん自身のこれまでのことをお伺いしたいのですが、そもそもダンスを始められたきっかけはなんだったのでしょうか?

北村:子どもの頃にバレエは習っていたものの、何故だか好きになれなかったんですよ。今は大好きなんですが、多分クラシック音楽のリズムの刻み方が嫌いで、なぜあんな音楽で動かないと行けないんだ! と当時は思っていたような気がします(笑)。あと小学校の頃から、ミュージカル映画をよく見ていて、フレッド・アステアとジーン・ケリーが大好きでした。アステアのちょっと妖怪っぽい身体、きっちりと足先の角度まで計算し尽くされているところなど、惚れ惚れして見ていました。一番正当派のダンスを感じましたね。そして中学生の頃にマイケル・ジャクソンにハマるというベタな展開があり(笑)、身体を動かす方法を色々探っていくなかで当時のストリートダンスを始めたという感じです。

北村明子

―今でこそヒップホップをベースにしたコンテンポラリーダンスは多いですが、20年前、プロフィールに「ストリートダンス」と書いていたコンテンポラリーダンサーは北村さんくらいでしたね。

北村:そうでしたか(笑)。といっても当時は、今のヒップホップのようにちゃんとしたものではなかったですよ。「一世風靡セピア」とかの曲で、和服を取りこんだ衣装を着て扇子を持って、ただ本当に道路で踊っている……。みたいなものでした。パワームーブとかもありませんでしたね。

―そして94年に自分のカンパニー「レニ・バッソ」を立ち上げ、刃物のような鋭さと激しいダンスの作品を次々と発表しました。そして日本のコンテンポラリーダンスカンパニーとしては異例なほど、多くの海外ツアーをやっていましたね。これだけのキャリアを積んで、世界的な評価を持ちながら、まだご自身のダンスを「雑種で確固たるものはない」とおっしゃっていましたが。

北村:逆にどうしたら確固たるものがある、と思えるのかが分からないんです(笑)。ダンスは不確かなものですから、「なにをもってダンサーと言えるのか」は、ずっと考えています。そして「これが私だ」と決まりそうになると、異物を採り入れたくなる。プンチャック・シラットを習い始めたのもその流れです。

―プンチャック・シラットの動きはレニ・バッソの作品『ゴーストリー・ラウンド』(2005年)にも出てきましたね。武術は「敵を倒す」という目的のもと、最も効率的な動きになるはずなのに、突き詰めると舞踊という「余分な動き」と近接してくるのが面白いですね。

北村:私が習っているプンチャック・シラットは近代シラットで、攻撃よりも相手の力を利用して避ける動きが多い、護身術的なシラットなのですが、いまだに60代の先生にスピードが追いつかないんですよ。だからこれは何か秘密があるな? と思って、ずっと取り組んでいます。

北村明子

「ダンサーのために」と思っていたツアーが、結果としてダンサーを苦しめていたことに気づかされました。

―2009年に15年間も続いたレニ・バッソが活動休止となりましたが、そのいきさつを伺えますか。

北村:一番大きいのは、古くから一緒にやっていたメンバーが、年齢や経済的な問題でダンスを継続するのが難しくなったからです。元々レニ・バッソは、ダンサーが胸をはって仕事だ、と言えるように、世界中のフェスティバルを回る「インディペンデント・ツアーリング・カンパニー」を目指していました。それを日本で成立させたくて、世界中を公演して回りました。しかしそれはダンサーにとっては長く日本を留守にすることになり、日本国内での仕事やアルバイトを失うことにもなりかねなかった。「ダンサーのために」と思っていたツアーが、結果としてダンサーを苦しめていたことに気づかされました。みんながハッピーでないとやっている意義がないし、続かないだろうと思い、09年に活動を停止しました。その後私はインドネシアへのリサーチを始め、これまでの興味の枠を広げながら今に至る、という感じです。

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イベント情報

インドネシア×日本 国際共同制作公演
『To Belong ―dialogue―』

2012年9月21日(金)〜9月23日(日)
会場:東京都 三軒茶屋 シアタートラム
料金:一般3,500円 当日3,800円

2012年9月25日(火)OPEN 19:40 / START 20:00(受付開始19:15)
会場:兵庫県 新長田 Art Theater dB Kobe
料金:一般 2,500円 当日 2,800円 学生 2,000円

構成・振付・演出:北村明子
ドラマトゥルク:石川慶
音楽・音楽監修:森永泰弘
音楽提供:スラマット・グンドノ
出演:
北村明子
マルチナス・ミロト
今津雅晴
三東瑠璃
リアント
西山友貴

プロフィール

{アーティスト名など}

振付家・ダンサー、信州大学人文学部准教授。早稲田大学入学後、ダンスカンパニー「レニ・バッソ」を結成。95年文化庁派遣在外研修員としてベルリンに留学。2003年『Enact Oneself』が、『The Independent Weekly』紙、ダンス・オブ・ザ・イヤーに選ばれたほか、代表作『finks』が、モントリオール『HOUR』紙、05年ベストダンス作品賞を受賞。海外のダンスカンパニーへの振付も意欲的に行うほか、演劇、映画、オペラなど他ジャンルへの振付も行っている。2010年からソロ活動を開始。11月Artzoyd企画、マルチメディアコンサート『The Black Particles』(CENTRE D'ENGHEIN LES BAINSにて世界初演)への振付・出演し、ダンサー、振付家として高い評価を得ている。

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