特集 PR

本物の歌は、人を魅了する 長谷川健一インタビュー

本物の歌は、人を魅了する 長谷川健一インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:野村由芽
2013/02/28

豊潤な音楽シーンが存在する京都の中で、決して派手ではないが、ひっそりと愛され続けてきたシンガーソングライター、長谷川健一(彼を知る人は、親しみを込めて「ハセケン」と呼ぶ)。2010年、満を持してのファーストフルアルバム『震える牙、震える水』を発表すると、かねてより親交のあった山本精一はもちろん、アジカンのゴッチも「昨年のツアー中にもっとも聴いたCD」として紹介するなど、異例の注目を集めた。では、なぜハセケンの歌はこんなにも愛されるのか? それは、彼の音楽から感じられる「人間らしさ」ゆえではないだろうか。尾崎豊やジェフ・バックリィの影響で若くして歌い始めるも、一時期はフリージャズや即興といったエクスぺリメンタルな音楽にも熱中して、自らの進む道を大いに模索。30歳を過ぎてから遂に本腰を入れた活動を開始するも、今も大人と子供の間で揺れ続ける心情を歌う、そんなハセケンの人間らしいねじれ具合が、彼の音楽を特別なものにしているように思うのだ。ジム・オルークをプロデューサーに迎えた新作『423』(このタイトルはスフィンクスのなぞなぞから採られ、つまりは「人間」を表している)は、そんなハセケンの魅力に、ジムの多彩な音楽的引き出しが組み合わさった傑作。「商品を作ってるわけではない」という言葉が、こんなにも似合うミュージシャンは他にいない。

音楽なんてどっかで踏ん切らないとできないことですし、「いっそのこと(会社を)辞めてみるか」と。まあ、転職みたいな感じです。

―『震える牙、震える水』を出す前年の2009年にお仕事を辞められて、それから東京でも定期的にライブをするようになったとお伺いしたのですが、それは音楽に本腰を入れるための決断だったのですか?

長谷川:いろんなことが重なったんですけど、元々は山本精一さんにP-VINEの方を紹介していただいて、「CDを出しましょう」っていう話をしていたんですね。でも、実際に会うタイミングもないまま、1年ぐらい経ってしまって。「これは会社を辞めて、こっちから言いに行かないと話が進まないぞ」って思ったんです。あとは、「会社を辞めよう」と思ったタイミングで、東京でライブを企画してくれた子がいたんですけど、それが僕と石橋英子さんと(山本)達久くんが出るライブで、「ハセケンさんの曲を3人で演奏してください」っていう依頼だったんです。

長谷川健一
長谷川健一

―後に『震える牙、震える水』と『423』の両方に参加することになるメンバーですね。

長谷川:会社を辞めた翌月にそのライブがあって。僕は二人と会うのはその日が初めてだったんですけど、「CDを作るんだったら、一緒に録音しましょう」って話になって、そこからポンポンポンとリリースに向けて進んで行ったんです。そういう風に、上手いこと会社を辞めるタイミングとメンバーに出会うタイミングが重なって。

―でも、年齢的にも30歳を過ぎて、会社を辞めるっていうのは勇気の要る決断ではありますよね。

長谷川:そうですね……。でも、音楽なんてどっかで踏ん切らないとできないことですし、地方の人からしたら、やっぱり東京なんですよ。仕事はサービス業だったので、平日しか休みが取れなくて、京都でライブをするときも、リハーサルなしでやってるような状況に不満があったので、「いっそのこと辞めてみるか」と。まあ、転職みたいな感じです。「違う仕事をメインにしよう」みたいなノリではありましたね。

Page 1
次へ

リリース情報

長谷川健一『423』(CD)
長谷川健一
『423』(CD)

2013年3月6日発売
価格:2,625円(税込)
bud music, inc. / P-VINE, Inc / PCD-25155

1. あなたの街
2. 白い旗
3. ふるさと
4. 星の光
5. 新しい一日
6. 体温
7. 子どものくに
8. 砂の花
9. 海のうた
10. 423

プロフィール

長谷川健一

1976年京都生まれ。2007年、ミニアルバム『凍る炎』『星霜』をmap/comparenotesより2枚同時リリース。2010年、1stフルアルバム『震える牙、震える水』をP-VINERECORDSよりリリース。2011年、「ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION2011」に参加。「FUJI ROCK FESTIVAL2011」、「SWEET LOVE SHOWER 2011」にも出演。歌が純粋に歌として響くことの力強い説得力、繊細な光が震えながら降り注ぐような、誰にも真似できない表現。優しくも切ない叫びは、聞くもの を深遠な世界へと誘い続け、京都が産んだ孤高の天才シンガーソングライターとして、多くのファンやアーティストから高い評価を得ている。2013年3月6日、ジム・オルークプロデュースによる待望の2ndフルアルバム『423』をリリースする。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. 東京スカイツリー天望デッキから配信されるライブ『天空の黎明』全演目発表 1

    東京スカイツリー天望デッキから配信されるライブ『天空の黎明』全演目発表

  2. 常田大希提供曲に隠れたジャニーズらしさ SixTONES“マスカラ” 2

    常田大希提供曲に隠れたジャニーズらしさ SixTONES“マスカラ”

  3. 異才スティールパン奏者、電子音楽家の2つの顔 小林うてなの半生 3

    異才スティールパン奏者、電子音楽家の2つの顔 小林うてなの半生

  4. 在宅ワークを快適に。コロナ禍でさらに注目の音声メディアを紹介 4

    在宅ワークを快適に。コロナ禍でさらに注目の音声メディアを紹介

  5. お父さんはユーチューバー / 美術のトラちゃん 5

    お父さんはユーチューバー / 美術のトラちゃん

  6. シンセと女性たちの奮闘物語『ショック・ドゥ・フューチャー』 6

    シンセと女性たちの奮闘物語『ショック・ドゥ・フューチャー』

  7. カンヌ4冠『ドライブ・マイ・カー』の誠実さ 濱口竜介に訊く 7

    カンヌ4冠『ドライブ・マイ・カー』の誠実さ 濱口竜介に訊く

  8. 「ドラえもんサプライズ誕生日会」の「招待状」広告が朝日新聞朝刊に掲載 8

    「ドラえもんサプライズ誕生日会」の「招待状」広告が朝日新聞朝刊に掲載

  9. 「千葉=無個性」への反抗。写真展『CHIBA FOTO』を語る 9

    「千葉=無個性」への反抗。写真展『CHIBA FOTO』を語る

  10. ROGUEが語る、半身不随になってから再びステージに上がるまで 10

    ROGUEが語る、半身不随になってから再びステージに上がるまで