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夢を見ることで得られたもの ART-SCHOOLインタビュー

夢を見ることで得られたもの ART-SCHOOLインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:三野新
2013/03/13

日々ミュージシャンを相手に取材をさせてもらう中で、もちろん多くの人が音楽に対する愛情を真剣に語ってくれるのだが、その中には「この人は音楽なしには生きられないだろうな」と、大げさではなく感じる人がいる。ART-SCHOOLの木下理樹は、まさにそんな人物だ。2000年に結成されたART-SCHOOLは、海外のオルタナティブロックからの影響を独自に昇華し、日本では数少ない危うげな魅力を持ったロックバンドとして、孤高のポジションを築いてきた。その道のりは決して平坦ではなく、これまでに幾度となくメンバーチェンジを繰り返してきたが、木下と戸高賢史という2人の正式メンバーに、サポートで中尾憲太郎(元NUMBER GIRL)と藤田勇(MO'SOME TONEBENDER)が参加した現在のラインナップは、自他ともに認める最強のラインナップである。昨年、USハードコア界の重鎮スティーブ・アルビニが所有するシカゴのエレクトリカルオーディオでレコーディングを敢行し、傑作『BABY ACID BABY』を発表したのも記憶に新しいところだ。

今まさに乗りに乗っているART-SCHOOLが約半年というスパンで完成させたのが、ミニアルバム『The Alchemist』。今回の取材では、この作品と現在のART-SCHOOLの状態についての話を足掛かりに、ツールの発展に伴う録音環境の変化や、洋楽を取り巻く状況など、移り変わりの激しい音楽業界について、木下に広く話を訊いた。現状を冷静に見つめながらも、彼が唯一危惧していたのは、音楽なしには生きられなかった自らの経験に基づいた、とても重要な問題だった。

益子さんとやるんだったら、音の余韻を感じさせるような、立体的な音像の美しさを作りたいと思ってました。

―『The Alchemist』は、新体制になってアルバムを1枚作り、さらにツアーを経験したことによって、バンドとしてのケミストリーが飛躍的に高まったことを証明する作品だと感じました。

木下:そうですね。今の四人で過去曲とかの練習もしてツアーに臨んだんですけど、バンドがまとまってきたから、ステージ内にすごい磁場みたいなものができてきて。それをずっと感じてたので、「この勢いのままミニアルバムを作りたいな」ってツアー中から思ってましたね。なんていうか……すごく楽しかったんですよ。みんなプレイヤーとして一流で、僕は彼らのことが大好きだし、自分の追い求めてきた音を再現してくれる人たちだから、このまま春まで何もやらないのはもったいないと思っちゃって。

木下理樹
木下理樹

―そのバンドとしての変化は、例えば、オーディエンスの変化にも表れていましたか?

木下:ダイブしてくる人が増えましたね。あとは音に圧倒されてたり……。相当太い音ですから。

―『The Alchemist』の1曲目の“Helpless”から、まさに音に圧倒されました。

木下:まともな人は聴かないですよね(笑)。

―(笑)。『BABY ACID BABY』はシカゴのエレクトリカルオーディオで録音を行ったわけで、理樹さんの中で音に対するハードルっていうのはますます上がってると思うんですけど、今回はどうやって録音したんですか?

木下:以前も一緒にやってる益子(樹)さんのスタジオでマスタリングまでやったんですけど、大概エンジニアとスタジオの選定でその作品の色が決まるんです。だから、益子さんとやることになったときに、「じゃあ、こういう音像にしよう」っていうのを決めましたね。逆に言ったら、アルビニのスタジオに行って、超爽やかなネオアコみたいのをやってもしょうがないわけじゃないですか?

―今回の作品に収録された“フローズン ガール”はネオアコ寄りな曲ですよね。

木下:だから、これはアルビニのスタジオではやらないです(笑)。益子さんとやるんだったら、音の隙間を作るというか、余韻みたいなものを感じさせるような、立体的な音像の美しさを作りたいと思ってましたね。あとは、楽曲の持つそもそものポテンシャルを演奏とか録音で広げていけたらいいなと。だから今回は、「これ以上弾く必要がない」って思ったらそこで止めるようにしてます。

―より自由度が上がってると言えそうですね。

木下:でも、そこで気をつけなくちゃいけないのが、「どんなことをリスナーに感じてほしいのか」ってところで。僕はもともと平面的な音楽が趣味ではなくて、そこは益子さんとずっと共通してるところなんです。益子さんって何かを説明するときに、そんなに技術的なことは言わないんですよ。あの人自身アーティストだから、「ダリの絵が浮かぶんだよね」とか、そういうことしか言わなくて。

―ダリの絵というと?

木下:例えば、白いキャンパスに奥行きを出すために、「こことここに色を配置して」っていうことを言いたいんだと思います。要は、音も見えるものですからね。スピーカーに真っ白な砂を置いたら波動が視覚的にも見えるわけで。その音の配置のセンスが益子さんはすごく優れてると思うんです。なおかつ、こっちが考えてる「こう処理したいんですよね」ってことも、その意図をちゃんとわかってくれるから、すごくやりやすかったですね。

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リリース情報

ART-SCHOOL『The Alchemist』
ART-SCHOOL
『The Alchemist』

2013年3月13日発売
価格:1,800円(税込み)
KSCL-2199

1. Helpless
2. フローズン ガール
3. The Night is Young
4. Dead 1970
5. 光の無い部屋
6. Heart Beat

プロフィール

ART-SCHOOL

2000年に結成。木下理樹(Vo/Gt)のあどけなく危うげなボーカルで表現する独特の世界観が話題に。度重なるメンバー変遷を経て、2012年からは木下、戸高賢史(Gt)の2人に、元NUMBER GIRLの中尾憲太郎(B)、MO'SOME TONEBENDERの藤田勇夫(Dr)がサポートで加わる。同年『BABY ACID BABY』をリリースした後、わずか7か月後というハイペースでミニアルバム『The Alchemist』をリリース。ART-SCHOOL史上最高のグルーヴを封じ込めた。

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