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社会からこぼれ落ちる悲しさよ 土井玄臣インタビュー

社会からこぼれ落ちる悲しさよ 土井玄臣インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2013/06/14
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近年は女性シンガーソングライターの活躍が目立っているように思うが、個人的に男性シンガーソングライターの作品としてひさびさに衝撃を受けたのが、大阪在住の土井玄臣が「正式なファーストアルバム」と位置付ける『The Illuminated Nightingale』だ。中性的な歌声で紡がれる歌の数々からは、底の知れない深い悲しみがうかがえるが、それをシンプルなフォークからエレクトロポップに至る幅広い音楽性でファンタジックに昇華したアルバムを聴いて、僕はすぐに彼の音楽の虜になってしまった。ほぼ初となる今回のインタビューで土井が語ってくれたように、彼の音楽の背景には彼が生まれ育った環境が大きく関係していて、もちろん自分をそこに重ねることはできない。しかし、彼の音楽に通底しているのは、コマーシャルなエンターテイメントでは決して回収することのできない、はみ出してしまった者たちの感覚であり、さまざまな抑圧や軋轢の隙間から、それがボロボロと零れ落ちている現代において、『The Illuminated Nightingale』はその映し鏡となっていると言っていいだろう。今多くの人に聴かれるべき作品だと思う。

七尾旅人を聴いて、「この人いてんのやったら、自分音楽やらなくていいなあ」と思って、1回曲作るのをやめたんです。

―自分で曲を作るようになったのはいつ頃からだったんですか?

土井:いつですかね……ずいぶん昔になんかでギターをもらって、何で作れるようになったかは覚えてないんですけど……。いや、なんか恥ずかしいですね(笑)。自分のことを聞かれるっていうのがすごく苦手で。

―インタビューってこれまで何回ぐらいやりました?

土井:前に1回だけあるんですけど、そのときは飲みながらベラベラいらんこと言ってただけなんで……。

―しらふでは初インタビューだと(笑)。

土井:そうですね、もう背中びっちょりですよ(笑)。ええと、何で曲作るようになったんやろ? それを言われると、自分でもすごく不思議です。


土井玄臣

―音楽を聴くのは昔から好きだったんですか?

土井:中学のとき父親と別居してたんですけど、父親と会う手段が週に1回一緒にビデオをレンタルしに行くことで。それで映画をよく見るようになって、それの音楽にも興味を持ちましたね。

―特に音楽が印象に残ってる作品は?

土井:サイモン&ガーファンクルですね。『卒業』とか、あのへん。あ、それでサイモン&ガーファンクルのギターのスコアを買った記憶があります。そのときは1曲も弾けなかったですけど(笑)。

―じゃあ、そのあたりから自分でも歌ってみようって思い始めたんでしょうね。

土井:20歳ぐらいのときに、1回曲作るのをやめたのは覚えてるんですよ。それまでちょこちょこ自分で作ってて、1998年にくるりとかがワーって出てきたあの時期だけ邦楽をよく聴いてて、七尾旅人がすごいなって思って。『オモヒデ オーヴァ ドライヴ』かなんかを買って聴いて、「この人いてんのやったら、自分音楽やらなくていいなあ」と思って。そこから曲を作るのやめて聴く側になってたんですけど、なかなか七尾旅人の新譜が出えへんくなって(笑)。それでまた、自分でも作ってみようかなって。

―旅人さんの何がそんなに衝撃だったんでしょう?

土井:自分の歌いたいことを、完璧に形にしてるなって思ったんですよね。自分の主張じゃなくって、誰かの物語をくみ取って、それを自分を媒介にして形にするっていう。それが衝撃でしたね。

―「自分の歌いたいこと」とおっしゃいましたが、当時土井さんが歌いたかったこととは?

土井:なんでしょうね……最初はただ歌を作るのが好きで、機材とかも好きで、そういう楽しさで作ってたから、誰かに聴かすとかも考えてなかったんです。でも、くるりが「NOISE McCARTNEY RECORDS」ってレーベルを作って、何気なしにそこに1曲だけ送ったんですよ。で、自分でも忘れた頃にベースの佐藤さんから電話がかかってきて、「コンピ作って入れるから」って言われて、「え?」みたいな(笑)。

―まつきあゆむさんとかも入っていたコンピですよね。2005年に出た。

土井:それで「レコ発ライブもします」って話で、初めてライブをやったら、ネット上でいろんな人が話題にしてくれたらしくて。聴いてくれる人もとりあえず少しはいてるんかなって思って、じゃあちょこちょこ人前でやっていこうかっていう、始まりはそんなんですね。

―そのコンピとライブが大きなきっかけになったと。

土井:それまでライブハウスの存在を知らなかったですからね。大きいとこは知ってましたけど、「近くにこういう場所があるんや」っていうのも衝撃で。音楽をどうやって人に聴かせるかっていう手段が、その頃はまったくわかってなかったんです。

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リリース情報

土井玄臣<br>
『The Illuminated Nightingale』(CD)
土井玄臣
『The Illuminated Nightingale』(CD)

2013年6月14日発売
価格:2,100円(税込)
NBL-209

1. ダークナイト
2. 夜の眼が開いた
3. オスカー
4. カファール
5. サリー
6. Auf Wiedersehen
7. 自転車狂想曲
8. 涯てな
9. ナイチンゲール
10. 夜明け前

プロフィール

土井玄臣(どい もとおみ)

大阪在住のシンガーソングライター。これまでに二枚の自主制作盤を発表している。2010年作の『んんん』は、無料配布(希望者が土井のホームページへリクエストのメールを送ると、後日郵送でアルバムが届くというもの。現在は配布終了。)という形態でリリースされ話題になる。2013年6月、自身が「正式なファースト・アルバム」と位置付ける新作『The Illuminated Nightingale』をnobleよりリリースする。

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