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俺たちはキャラクター化している 三木聡×宇野常寛『俺俺』対談

俺たちはキャラクター化している 三木聡×宇野常寛『俺俺』対談

構成
木俣冬
撮影:三野新

『俺俺』はある意味、ゾンビ映画のようなものですよね。(三木)

宇野:結局、日本の消費社会化がどんどん進む中で、僕たちが大衆の欲望というか本音として選んできたことは、三木さんの作品のようにキャラクターとして生きることだと思うんですよ。『俺俺』って、『熱海』から3年のブランクがあったからこそ、その気分をすごくストレートに取り込んだという気がしました。

三木:宇野さんのおっしゃるように『熱海』によって、それまでにやってきたことがキャラクターで、死んでいるのと一緒だと暴露したとすると、『俺俺』は死体を使って構成してアニメーション的なことをやっていく作業であったと言えますね。『俺俺』は基本的に、亀梨和也君演じる3人の「俺」の物語ですが、撮影のときには、当然、「俺」が3人同時に存在できないわけです。『俺俺』を作るに当たって、キャラクターを同じ画面上に焼き付けていく作業という物理的なファクターが必要になった。それってはからずもゾンビ映画のようなものですよね(笑)。

宇野:僕もゾンビ映画っぽいと思いました(笑)。

左から:宇野常寛、三木聡

三木:なぜそこに僕自身がたどりついたのかわからないですけどねえ……。ただ、今、話していて思い出したのは、『俺俺』を撮る前に、ロベール・ブレッソン(出演者にプロの俳優を一切使わず、素人ばかりを採用した)の映画を見たことです。たまたま見たのですが、ブレッソンの役者の扱い方が死体に対している感じがしたんですよ。何もできない女子大生に、こうしろああしろって細かく指示するような演出方法で。自分のやっていることがブレッソンに近いとは思わないけれど、『俺俺』の創作にあたって必要だった要素の1つに、ブレッソンの映画もあるのではないかという気がしますね。今回は、映画の中で役者の表現力をどう排除していくかを意識して、「表現してない感」を大事にしたんです。

©2012 JStorm Inc.
©2012 JStorm Inc.

宇野:俳優の扱い方に関してですが、日本のシットコムは全部、キャラクターものに回収される問題がありますよね。

三木:ああ、はい。

宇野:三谷幸喜さんにせよ、西田征史さんにせよ、本当はシットコムがやりたい人だと思うんです。しかし、どちらも結局『古畑任三郎』『新選組!』と、『妖怪人間ベム』『TIGER & BUNNY』が評価されている。要するに、シットコム自体は日本の文化空間に根付かないけれど、その手法だけがキャラクターものの中で、キャラと戯れるテクニックとして生き残っている、という現実がある。三木さんはその一方で、キャラクター、つまり死体と戯れることしかできなくなった世界とは何か? ということを描くほうに舵を切ったように見える。

三木:そう言われると、イギリス人で日本のオタク文化や映画に詳しい知人が、『時効』の頃までは僕の作品をすごく好きでいてくれたのに、『熱海』以降の僕の作品に関してはまったく響かないことが腑に落ちます。やっぱり破壊されていくことが嫌いなんでしょうね。でも、そのことは覚悟の上だし、そのことがやりたいことの1つでもあるわけです。

©2012 JStorm Inc.
©2012 JStorm Inc.

宇野:もともと、輸入が始まった時点で政治性が剥奪されてしまったジャパニーズシットコムは、放っておくとサブジャンルのサブジャンルにしかならないと思うんです。そこに批評性を最大限に見出していくためには、どんどんキャラクター化していく我々の身体やコミュニケーションの形というものを、批評的に扱うための道具として使うしかない。そのことを三木さんの作品遍歴が表している気がするんですよね。

三木:僕自身はよくわからないですけれど、キャラクター性というのは、例えば、宇野さんが詳しいAKB48に例えることはできますか?

宇野:僕が思うに、AKB48は女優的な身体と対極にあると思うんですよ。だからこそ、あの中でたぶん女優的な身体能力の高い大島優子はいくら能力が高くても選抜総選挙でなかなか1位になれない。やはり、不器用で周りからいじられてその反応が面白い前田敦子や指原莉乃のほうが強いわけです。

三木:なるほどね。AKB48をプロデュースした秋元康さんとは、1980年代に『夕やけニャンニャン』というバラエティー番組でご一緒しているんです。向こうのほうが年齢的に上ですし、同じ土俵に立っているとは思わないけれど、スタートは同じようなところにいたのに、今、向こうはAKB48で、僕は『熱海の捜査官』や『俺俺』という、なぜこんなにも変わってしまったのだろうかと(笑)。あるいは、自分では変わっていると思っているだけで、実は近い部分があるのか……。

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イベント情報

宇野常寛 10°CAFE×PLANETSイベント
連続講義『プレ・母性のディストピア』

「テーマ:高橋留美子」
2013年7月11日(木)20:30〜22:00
「テーマ:宮崎駿」
2013年8月1日(木)20:30〜22:00
「テーマ:富野由悠季」
2013年9月5日(木)20:30〜22:00
会場:東京都 10°CAFE
料金:3,000円(1回券・1ドリンク付)

作品情報

『俺俺』

全国公開中
監督・脚本:三木聡
原作:星野智幸『俺俺』(新潮文庫刊)
出演:
亀梨和也
内田有紀
加瀬亮
キムラ緑子
高橋惠子
ふせえり
岩松了
配給:ジェイ・ストーム
配給協力:ギャガ

書籍情報

『原子爆弾とジョーカーなき世界』
『原子爆弾とジョーカーなき世界』

2013年6月21日発売
著者:宇野常寛
価格:1,260円(税込)
発行:メディアファクトリー

プロフィール

三木聡(みき さとし)

1961年神奈川県生まれ。80年代から『タモリ倶楽部』『ダウンタウンのごっつええ感じ』『トリビアの泉』などのテレビ番組に放送作家として関わり、2000年までシティボーイズのライブの作・演出を手がける。05年『イン・ザ・プール』で長編映画デビューを果たす。監督策に『亀は意外と速く泳ぐ』『図鑑に載ってない虫』『インスタント沼』、テレビドラマ作品に『時効警察』『熱海の捜査官』など。

宇野常寛(うの つねひろ)

{評論家。1978年生。批評誌『PLANETS』編集長。著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)。『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)。共著に濱野智史との対談『希望論』(NHK出版)、石破茂との対談『こんな日本をつくりたい』(太田出版)。企画・編集参加に「思想地図 vol.4」(NHK出版)、「朝日ジャーナル 日本破壊計画」(朝日新聞出版)など。

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