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孤立を恐れず世界の中へ 宮本亜門インタビュー

孤立を恐れず世界の中へ 宮本亜門インタビュー

インタビュー・テキスト
徳永京子
撮影:菱沼勇夫
2013/07/23

窪塚洋介が、20世紀を代表する芸術家「イサム・ノグチ」を演じ、共演に美波、ジュリー・ドレフュス、小島聖などの実力派俳優を迎えた舞台作品『iSAMU』。演出の宮本亜門は今作の舞台化のため、3年間に2回のリーディングを行ってその度に大きく手を入れ、ついには脚本に自ら参加したという熱の入れようだ。

彫刻家、画家、インテリアデザイナー、造園家、陶芸など複数のジャンルをまたいで活躍し、それぞれの場所で偉大な功績を残したイサム・ノグチ。宮本はなぜこれほどまでに今、彼に突き動かされているのか。稽古初日を目前に控えた宮本に、そのモチベーションの芯にあるものは何か、じっくりと話を聞いた。

CINRA.NET > 導かれてここまで来た 窪塚洋介インタビュー

イサム・ノグチに触れないまま、僕は次の創作へは向かえないと考えるようになったことが、今作品の出発点でした。

―亜門さんが実現を熱望し、何年越しかで立ち上げるプロジェクトはこれまでもあったと思いますが、『iSAMU』では演出だけでなく脚本にも参加されるなど、かなり力を入れていると聞いています。そもそも、イサム・ノグチというアーティストに惹かれたきっかけは何だったんでしょうか?

宮本:僕のおじいちゃんが、うどん県こと香川県出身というご縁もあるのですが、通い始めたのは10年以上前の夏。高松にあるイサム・ノグチ庭園美術館に初めて行ったとき、イサムに完全に魅せられてしまいました。彼の作品は前から興味を持っていたんですが、その美術館はイサムが晩年ぎりぎりまで作品を作っていたという場所で、そこで感じた感動があまりにもすごかった。作品もさることながら、さっきまで彼がそこにいたんじゃないかと思うくらい、熱い創作の魂みたいなものが残っていたのです。

宮本亜門
宮本亜門

―イサムの作品の、どのような部分が印象的でしたか。

宮本:イサムの作品は、似ているものがほとんどないんですね。芸術家の中には、自分のトレードマークみたいな作品を生み出したら、それと似たものを作り続ける人がたくさんいるけど、彼は毎回違う素材、違うジャンルで、違う作品を作っている。作品の数も多く、その時代、そのときの彼の思考に応じて創作しています、それも地球規模で。それで「この人は一体何なんだろう?」と思い始めて、彼が住んでいた家に行ってみたら、飾ってあった生前の写真と目が合ってしまい、グワッと睨まれた気がしたんです(笑)。そのあと落ち込んだんですよ。「イサムに比べて、自分のもの作りはなんて中途半端なんだろう……」と。そして帰りの車の中で、この人に触れないまま、僕は次の創作へは向かえないと考えるようになったのが、今作品の出発点でした。

―作品と、アーティストとしての迫力と、どちらにも強いインパクトを受けた?

『iSAMU〜20世紀を生きた芸術家 イサム・ノグチをめぐる3つの物語〜』ポスター
『iSAMU〜20世紀を生きた芸術家
イサム・ノグチをめぐる3つの物語〜』ポスター

宮本:まず強く惹かれたのは、彼には、アメリカと日本の血が流れているという点です。父親は野口米次郎という詩人ですが、婚外子で父親は他の家族を持っていて、アメリカ人の母親とほとんど2人暮らし。ですから彼は日本とアメリカの両方で育ちました。また、第二次世界大戦が始まると、自ら志願して日本人強制収容所に入所するけれども、そこではアメリカ側のスパイだと疑われて、出所しようとすると今度はアメリカから拒否される。終戦後、広島の平和記念公園のモニュメントを設計する仕事に選ばれたのに、原爆を落としたアメリカの血が流れているということで却下され、その後、アメリカ大統領の慰安碑を設計したときは、日系人だからと落選した。人種のことで拒まれ、安住できない人生を送っていたんです。

―時代や社会にかなり翻弄された芸術家でもありますね。

宮本:それでも彼は、たとえば破壊があった場所や荒れている土地に何か作品を置こうとするんですね。それは「記念碑」なんていう生易しいものじゃなくて、それを置くことでその土地自体を変えていく、その土地に暮らす人々の心に触れようとし、影響していく強さのあるものばかりなんです。そのために、石でも鉄でも徹底的に素材と向き合う。彼自身は「地球を彫刻する」という言い方をしていましたけど、見方によってはとても悲惨な人生を送っていながら、作るということに対して非常にどん欲で、大きな目的を持っていた人だと思います。そして次第に地球規模で人類を考えていった。そういう人ってなかなかいないじゃないですか。

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パルコ劇場40周年記念 パルコ・プロデュース公演
『iSAMU〜20世紀を生きた芸術家 イサム・ノグチをめぐる3つの物語〜』
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プロフィール

宮本亜門(みやもと あもん)

演出家。1958年、東京都生まれ。演出家デビュー作『アイ・ガット・マーマン』で文化庁芸術祭賞を受賞。2004年、ニューヨークのオンブロードウェイで、初めての東洋人演出家として手がけた『太平洋序曲』がトニー賞4部門にノミネートされる。ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎など、幅広いジャンルで活躍。KAAT神奈川芸術劇場芸術監督。

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