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大人になるって何だろう? 藤村龍至×柴幸男(ままごと)対談

大人になるって何だろう? 藤村龍至×柴幸男(ままごと)対談

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:菱沼勇夫
2013/08/09
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8月10日からスタートする『あいちトリエンナーレ2013』は、「揺れる大地―われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」をテーマに掲げ、東日本大震災以降の日本や都市のあり方を示そうとしている。それゆえ、ここに登場するのはいわゆる現代美術のアーティストに限らない。都市設計やインフラを考えるうえで重要な役割を果たす建築家、そしてその反映を身体によって表現する演劇やダンスなどのパフォーミングアーティストたちが数多く名を連ねている。

トリエンナーレ開催直前に行われた今回の取材では、思想家・東浩紀が提唱する「福島第一原発観光地化計画」にも参加し注目を集める建築家・藤村龍至と、今まさに愛知で作品制作中の劇団「ままごと」主宰・演出家の柴幸男をSkypeでつなぎ、対談を行なった。モニター越しの初対面となる二人の対話からは、建築家と劇作家の意外な共通点、そして震災以降の状況に真摯に向かい合おうとする二人の営為が見えてくる。濃厚で貴重な対談に、じっくりと向き合って読んでいただければと思う。

『日本の大人』を大人が見れば子ども時代を回想するかもしれないし、子どもが見れば20年後の物語を未来として見るかもしれない。その両方の視線が生まれるような作品にしたいと思っています。(柴)

―まもなく『あいちトリエンナーレ2013』がスタートしますが、規模が本当に大きく、個々のプロジェクトやパフォーマンスがどのようなものになるのか、というのは詳しく紹介されていません。そこで最初に、お二方が今回どんな作品を発表なさるのか、というところからお話を伺っていきたいと思います。

藤村龍至
藤村龍至

藤村:私はですね、中央広小路ビルという栄エリアのオフィスビルの一角に場所を設けて、そこを中心にした『あいちプロジェクト』を実施します。すごく簡単に言うと、オフィスビルの一室を設計事務所のような、投票所のような場所にして、「愛知県と名古屋市が解体され、東海州と中京都に再構成された」という架空の想定で、東海州と中京都、それぞれの庁舎の模型をひたすら作り続けるんです。


―ワークインプログレス型(進行型)のプロジェクトですね。

藤村:ええ。公募で集まったメンバーで設計チームを2チーム作って、毎日案を更新し続けるんですけれども、来場者に気に入った案へ投票してもらって、その結果を随時反映させながらプロジェクトをディベロップしていくというものです。さらに2週間ごとに設計チームを入れ替えていって、その最終案を10月上旬の2週間で発表・展示します。

―異なるチームで、1つのプロジェクトを成長させていく。

藤村:これは何をやっているかというと、アートの枠組みを借りて、将来の公共建築の設計者の決め方を実験しているんです。公共建築って、昔は県知事による特命だったんです。民主主義によって選ばれたトップの見識によって、建築家、例えば黒川紀章さんや安藤忠雄さんを直接指名していた。でも、現在はより公平な手続きを取らなければいけないということになって、公開コンペ形式で行われるようになっている。でも審査は公開だけれども、最後は密室で決めてしまう例が多いんです。そのなかで、より住民や県民が直接的に議論に加わることのできる「集合知的な建築設計」のあり方はないだろうか。私はそういう実験をいろんな所でやってきたのですが、その集大成として「あいち」バージョンを今回はやってみよう、と思っています。

―では、次は柴さんに。今回の作品『日本の大人』は世界初演になるわけですが、どんな内容に?

:僕は「ままごと」という、演劇作品を作るカンパニーを主宰しています。今回は、『あいちトリエンナーレ』さんから「子どもと大人が一緒に鑑賞できるような作品を」という依頼をいただいたのですが、僕らは今まで、子ども向け、大人向けというようなフレームで作品を作ったことがなかったので、これは面白い挑戦になるかもしれないと思いました。愛知県芸術劇場小ホールというオーソドックスな劇場のなかで行われる、古典的な演劇の鑑賞形態になりますが、「ままごと」初の、小学校高学年と大人が一緒に鑑賞できる60分ほどの演劇作品になります。

写真奥:柴幸男
写真奥:柴幸男

―新作を楽しみにしているファンも多いと思うので、ネタバレにならない程度に内容を教えていただいてもいいですか?

:あらすじは、すごくバカバカしくって単純なんです。ある小学校に32歳の「小学26年生」のおじさんが転校してくる、というところから物語は始まります。同時に、主人公が成長して20年が経ち、つまり32歳の大人に成長した小学生たちが同窓会をやろうとする。そこで20年前に小学26年生だったおじさんを現代で探そうとするんです。20年前と20年後という2つの時間が同時に描かれて並走するような物語になります。

―「ままごと」らしい、かわいらしくって構造的に面白いストーリーですね。

:演劇作品というのは、時間の彫刻というか、時間をブロックのように並べ替え、積み重ねていく作業がすごく大事だと思っています。『日本の大人』を大人が見たのであれば自分の子ども時代を回想するように見るかもしれないし、子どもから見れば20年後の物語を未来として見るかもしれない。その両方の視線が生まれるような作品にしたいと思っています。

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イベント情報

『あいちトリエンナーレ2013』

2013年8月10日(土)〜10月27日(日)
会場:
愛知県 名古屋 愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場、納屋橋会場、中央広小路ビル
愛知県 岡崎 東岡崎駅会場、康生会場、松本町会場

出展作家(アルファベット順):
青木淳
青木野枝
青野文昭
荒井理行
ブラスト・セオリー
ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー
ステファン・クチュリエ
ミッチ・エプスタイン
ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ
藤森照信
藤村龍至
マーロン・グリフィス
ゲッラ・デ・ラ・パス
ハン・フェン
彦坂尚嘉
平川祐樹
平田五郎
トーマス・ヒルシュホルン
池田剛介
インヴィジブル・プレイグラウンド
伊坂義夫、大坪美穂、岡本信治郎、小堀令子、清水洋子、白井美穂、松本旻、山口啓介、王舒野、PYTHAGORAS³(覆面作家)
石上純也
アルフレッド・ジャー
ミハイル・カリキス&ウリエル・オルロー
片山真理
國府理
レッド・ペンシル・スタジオ
イ・ブル
ニッキ・ルナ
バシーア・マクール
アンジェリカ・メシティ
アーノウト・ミック
宮本佳明
Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)
名和晃平
新美泰史
西岳拡貴
丹羽良徳
クリスティナ・ノルマン
岡本信治郎
オノ・ヨーコ
打開連合設計事務所
コーネリア・パーカー
ニラ・ペレグ
ダン・ペルジョヴスキ
ウィット・ピムカンチャナポン
ニコラス・プロヴォスト
ワリッド・ラード
フィリップ・ラメット
リアス・アーク美術館
アリエル・シュレジンガー
リゴ23
キャスパー・アストラップ・シュレーダー+BIG
ソ・ミンジョン
志賀理江子
下道基行
シュカルト
フロリアン・スロタワ
ソン・ドン
studio velocity/栗原健太郎+岩月美穂
菅沼朋香
杉戸洋
ミカ・ターニラ
高橋匡太
竹田尚史
ブーンスィ・タントロンシン
THE WE-LOWS/ザ・ウィロウズ(奈良美智+森北伸+青木一将+小柴一浩+藤田庸子+石田詩織+酒井由芽子)
渡辺豪
和田礼治郎
リチャード・ウィルソン
ケーシー・ウォン
山下拓也
やなぎみわ
ヤノベケンジ
横山裕一
米田知子

パフォーミングアーツ:
ARICA+金氏徹平
サミュエル・ベケット
藤本隆行+白井剛
ほうほう堂
イリ・キリアン
ままごと
マチルド・モニエ
向井山朋子+ジャン・カルマン
アルチュール・ノジシエル
プロジェクトFUKUSHIMA!(総合ディレクション:大友良英)
清水靖晃+カール・ストーン
ジェコ・シオンポ
梅田宏明
ペーター・ヴェルツ+ウィリアム・フォーサイス
やなぎみわ

プロデュース・オペラ:
カルロ・モンタナーロ
田尾下哲
安藤赴美子
カルロ・バッリチェッリ
ガブリエーレ・ヴィヴィアーニ
田村由貴絵
晴雅彦
豊島雄一
清水良一
塩入功司
大須賀園枝

映像プログラム:
ポール・コス
ミケランジェロ・フランマルティーノ
福井琢也
濱口竜介+酒井耕
姫田真武
ひらのりょう
細江英公
加藤秀則
川口恵里
久保田成子
三宅唱
ビル・モリソン
室谷心太郎
ぬQ
パールフィ・ジョルジ
アリソン・シュルニック
SjQ++
エマ・ドゥ・スワーフ+マーク・ジェイムス・ロエルズ
土本典昭
チャオ・イエ
※チケットの詳細はオフィシャルサイト参照

プロフィール

藤村龍至(ふじむら りゅうじ)

1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所を主宰。2010年より東洋大学理工学部建築学科専任講師。独自のデザイン手法である超線形設計プロセス論を用いた作品、『BUILDING K』(2008)で注目を集める一方で、青森県立美術館『超群島 -ライト・オブ・サイレンス』展(2012年)などのキュレーションも行う。東日本大震災後は『思想地図β』において、福島県双葉町の住民の集団移転を想定したリトルフクシマの都市計画のほか、国土インフラの脆弱性を改善すべくリスクヘッジを考慮した第2の国土軸、また、ステーションシティを核とした都市の再編成を行う『列島改造論2.0』を発表。思想家・東浩紀が提唱する『福島第一原発観光地化計画』にも関わり、国土スケールから新しい日本の姿をデザインしようとする建築家である。

柴幸男(しば ゆきお)

1982年生まれ愛知県出身。「青年団」演出部所属。「急な坂スタジオ」レジデント・アーティスト。日本大学芸術学部在学中に『ドドミノ』で第2回仙台劇のまち戯曲賞を受賞。2010年『わが星』にて第54回岸田國士戯曲賞を受賞。何気ない日常の機微を丁寧にすくいとる戯曲と、ループやサンプリングなど演劇外の発想を持ち込んだ演出が特徴。全編歩き続ける芝居『あゆみ』、ラップによるミュージカル『わが星』、一人芝居をループさせて大家族を演じる『反復かつ連続』など、新たな視点から普遍的な世界を描く。『あいちトリエンナーレ』や『瀬戸内国際芸術祭』への参加、岐阜県可児市での市民劇の演出、福島県いわき総合高校での演出など、全国各地にて精力的に活動している。

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