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ポストヒップホップと呼ばれたい? KENTARO!!×武藤大祐対談

ポストヒップホップと呼ばれたい? KENTARO!!×武藤大祐対談

インタビュー・テキスト
浦野芳子
撮影:豊島望

スリムで飄々とした風貌、現代的センスに溢れた軽快な作品……からは想像し得ない、超マジメで情熱的なダンサー・振付家、それがKENTARO!!だ。ダンスだけでなく独学で演劇や音楽も習得、そして自らの持てるそれらすべてのスキルを投じた作品は、デビュー以来高い評価を得続けている。ソロ活動でも注目される彼であるが、2008年には自身のカンパニー「東京ELECTROCK STAIRS」を旗揚げ、その新作公演『つまるところ よいん』を、10月に控えた今の心境を、ダンス批評家の武藤大祐との対談で語ってくれた。気持ちいいくらいの直球メッセージの応酬が、心地良い。日本のダンスの未来は、きっと明るい。

東京ELECTROCK STAIRSから次世代を担うダンサーや振付家を輩出したいんです。それができてこそ、集団でやる意味があると思っています。(KENTARO!!)

武藤:僕は、東京ELECTROCK STAIRS旗揚げ公演『Wピースに雪が降る』(2008年)から観ているんだけど、回を重ねるごとに面白くなってきているよね。僕の見方としては、重要な作品が2つあって、まず『長い夜のS.N.F』(2010年)、それと今年6月に上演した『東京るるる』(2013年)です。特に『東京るるる』は、初日に観て凄く良くて、楽日にも観に行ってしまった。サントラCDも初めて買いました(笑)。

KENTARO!!:ありがとうございます。でも、『長い夜のS.N.F』は、そこまで評価されませんでした。

武藤:僕は、コンテンポラリーダンス作品で、「いいな」と思うときには2つの基準があると思っていて、1つはダンス作品として斬新だと感じたとき。もう1つは、改めて「ダンスって良いな」と再発見させられるとき。『長い夜のS.N.F』は、「こんな表現があるのか」と思わされた意味で前者。『東京るるる』はダンサーが個々人のマックスまで踊りきっている。振付をこなしてるんじゃなくて踊りきっている。それが凄く良くて後者。同時にKENTARO!!が、ダンスとダンサーに求めていることが少しわかったような気がしました。

左から:KENTARO!!、武藤大祐
左から:KENTARO!!、武藤大祐

KENTARO!!:東京ELECTROCK STAIRSは、今はその括りではありませんが、ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合させた、新しい表現を追求したくて立ち上げたカンパニーです。ストリート系とコンテンポラリー系、両方のスキルを持つダンサーは日本には、ほとんどいないのが現状。ストリート系のダンサーに、他のダンサーとの接触を組み込んだ動きを求めるとどこか不自然になり、コンテンポラリー系のダンサーはヒップホップのリズムやテクニックに不慣れです。互いに歩み寄りながらスキルを習得するには時間がかかる。だから、スキルを育てる場という意味でもカンパニーという、メンバーを固定した集団活動が必要だと思ったんです。

『東京るるる』撮影:大洞博靖
『東京るるる』撮影:大洞博靖

武藤:今のメンバーを見ていても、横山彰乃や高橋萌登など、皆とても伸びてきているなって思います。

KENTARO!!:皆、感覚も飲み込みも良いダンサーばかりです。2、3年様子を見ながら、メンバーとして継続の可否を判断していますが、いったんカンパニーを離れても、また戻ってくる人もいるし、腐らずに続けている人もいます。今は僕の作品作りに参加してもらっているわけですが、最終的には彼ら自身が創作の担い手になってくれたら嬉しい。東京ELECTROCK STAIRSから次世代を担うダンサーや振付家を輩出したいんです。それができてこそ、集団でやる意味があると思っています。

KENTARO!!

武藤:ストリートダンスは、動きもテクニカルでわかりやすく、一般的な認知度は高い一方、コンテンポラリーダンスは、たとえばあまり動きがなく難解で何をやっているのかわからないと言われる作品があったり、ある意味対照的な2つだと思います。「コンテンポラリーダンスは、何でもありのダンス」なんて言われ方もしますよね。

KENTARO!!:辛口な言い方ですが、うっかりするとコンテンポラリーダンスは、他のジャンルで芽が出なかった人たちの受け皿になってしまっているんじゃないかと思います。それを観て「つまんない」「やりたくない」って思う人が増えてしまったのが問題なんです。だからこそ、きちんとテクニックを身に付けてもらって、ダンサーの質を底上げすることが、今求められているんじゃないかと思っています。特に、コンテンポラリーダンスをやってきた人は演技的表現には長けているけれども、音楽性やリズム感の面で弱いダンサーが多い。その点では、ストリートダンサーは研ぎ澄まされている。だから互いのテクニックを吸収し合うことで、それぞれが新しいスキルを身に付けられたらいいなと思うんです。

武藤:それぞれのジャンルのダンサーたちの違いは?

KENTARO!!:テクニックはストリート系のダンサーの方が高いと思います。でもコンテンポラリー系のダンサーたちにも、集中力があって貪欲な人が多い。僕のところに教えてほしいと集まってくる人たちの中には、コンテンポラリーダンスやバレエをやっていた人も多くいます。彼らが真剣にストリートダンスのテクニックを身に付けようとしてくれるのは、凄く嬉しいですね。まさに僕が目指している方向なので、報われる感じがします。

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イベント情報

東京ELECTROCK STAIRS
『つまるところ よいん』

2013年10月22日(火)〜10月27日(日)全6公演
会場:神奈川県 横浜 KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオ
振付・音楽:KENTARO!!
出演
KENTARO!!
横山彰乃
高橋萌登
服部未来
吉田拓
泊麻衣子
木引優子(青年団)
工藤響子(TABATHA)
料金:
前売 一般3,000円 学生2,000円
当日 一般・学生3,500円
リピーター割引1,000円(要予約、半券が必要)

プロフィール

KENTARO!!(けんたろー)

1980年生まれ。「東京ELECTROCK STAIRS」主宰。13歳からHIP HOP、LOCKDANCE、HOUSEなどのダンステクニックを学び、クラブシーンにおいてチームやユニットで様々なイベントに出演する。現在はオリジナル音源を交えた自由な発想による独自のダンスを創作中。また若手発掘イベントのキュレーションや様々な自主企画を発信している。2008年『横浜ダンスコレクションR』にて若手振付家のための在日フランス大使館賞、『トヨタコレオグラフィーアワード2008』にてオーディエンス賞、ネクステージ特別賞、2010年には『第4回日本ダンスフォーラム賞』を受賞。海外からの招聘も多数あり、今年1月にはカンパニーによるNYでのショーケースが『NY Times』紙にて取り上げられ、称賛された。

武藤大祐(むとう だいすけ)

1975年生まれ。ダンス批評家。群馬県立女子大学文学部准教授(美学・ダンス史・理論)。最近は20世紀のアジアのダンスを研究。共著『バレエとダンスの歴史――欧米劇場舞踊史』(平凡社、2012)。韓国のダンス月刊誌『몸』に時々寄稿。

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