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櫛野展正(鞆の津ミュージアム)×堀内奈穂子(AIT)対談

櫛野展正(鞆の津ミュージアム)×堀内奈穂子(AIT)対談

インタビュー・テキスト
ヤマザキムツミ
撮影:高見知香

「アートの仕事」に憧れたり興味を抱く人は多いと思う。とはいっても、実際にどういう世界で、どういう仕事があるのか、よく見えてこない部分があるのも確かだ。その入り口や足掛かりとして、学校に通うという選択肢を考える人も少なくないだろう。NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ(以下AIT)が運営する、現代アートの学校「MAD(Making Art Different―アートを変えよう、違った角度で見てみよう)」もその選択肢の一つだ。

そこで、AITのキュレーターでもあり、MADの講師としても活躍する堀内奈穂子と、広島県福山市にある話題のアールブリュット美術館「鞆の津(とものつ)ミュージアム」のキュレーションを手がける櫛野展正に「アートの仕事」というテーマで話を聞くため、AITのオフィスを訪ねてみることに。じつはMADの卒業生でもあり、まったくの他分野からアートの仕事へ進んだという共通点もある二人。アートの仕事に携わる現在やこれからのお話を聞いた。

絵画から先の現代アートを知ったときに「なんだこれは!?」と。(堀内)

―まずは、それぞれの現在されているお仕事内容から教えてください。

堀内:AITでは、アーティストやキュレーターを海外から招聘したり、日本から派遣する「アーティスト・イン・レジデンス」プログラム全体の企画や運営のほか、展覧会やイベントを企画したり、トークなどのプログラムを組んでいます。あと、AITが運営する現代アートの学校「MAD」でも、いくつかレクチャーを担当しています。

堀内奈穂子
堀内奈穂子

―基本的にはキュレーターに近いお仕事を?

堀内:そうですね。展覧会という形式も面白いのですが、それだけではなくて、作品として完成する前に、アーティストがどうやって知識を積んだり、研究を重ねていくのか? というプロセスの部分に特に興味があります。まさにレジデンスって、アーティストがどのような興味や視点を持ち、そうした要素が最終的にどのような形になって「作品」として完成していくのか、という思考を真近で見られるので、そこを一緒に考えていく作業に関心が高いと言えます。

櫛野:僕は、「鞆の津ミュージアム」という、広島県福山市の小さい港町にあるギャラリーで展覧会のキュレーションなどをやっています。うちは職員が経理担当と僕の2人しかいないので、僕が展覧会企画とか、作家とのやり取りとか、展示作業とか、広報とか、ウェブサイトの更新とか、全てやるという、何でも屋さんみたいな感じでやっています(笑)。あとは社会福祉法人のいわゆる知的障がい者施設の職員でもありまして、そこで14年ほど働いています。

櫛野展正
櫛野展正

―お二人とも、いわゆる「キュレーター」というお仕事を軸に活躍されているわけですが、そもそもアートのお仕事に携わろうと思ったきっかけは何だったんでしょうか?

堀内:大学は外国語学部の英語学科で、主に広告やマーケティングの世界を勉強していたので、まったく美術系の大学ではなかったんですよ。でも、学部のときから長い休みの度に、バックパッカーのような感じでニューヨークに滞在して美術館やギャラリー、夜はクラブに行ったり、現地のカルチャー全般を楽しんでいました。ニューヨークは現代アーティストの宝庫だったので、いろいろな作品を観ながら、アートへの興味も増していったし、作品や表現の裏側にある歴史や文脈って何なんだろう? というクエスチョンマークは常に持ってはいました。

―大学卒業後はどうされたのですか?

堀内:IT系の企業に就職してコンテンツ企画や制作などをしていたのですが、「現代アートって何なんだろう?」っていう疑問は常にあって、いつか美術を勉強してみたいとは思っていました。かといって、美術大学に入り直すほどの金銭的、時間的余裕もなくて。そんなときに出会ったのが「MAD」だったんです。

―現代アートへの知的好奇心から、アートの世界に入り込んでいかれたんですね。

堀内:子どもの頃から絵画には触れていましたが、近代絵画から先の現代アートの存在を知ったときに、「なんだこれは!?」と驚きました(笑)。こうした表現が存在しているのかという驚きから、その理由が知りたくなったんです。そして知れば知るほど、作品に社会批判や哲学的視点が含まれていたり、時代の先を読むような想像力があったり、1つの解答に集約されないものを探っていくような行為が楽しくて……(笑)。

―実際、MADではどのようなアートの勉強をされたんですか?

堀内:当時、「マガジンコース」というのがありました。それは、講師のロジャー・マクドナルドが選んだ海外のアート雑誌の記事を読みながら、アート界の動向やアーティストの表現などを学び、コース内で意見交換するものでした。海外の現代アートシーンについて知る手がかりが少なかったので、留学する上でも非常に役に立ちました。また、その後にキュレーティングコースも受講しました。このコースでは、数人のグループで展覧会の企画案を立てて、最後に架空のプレス発表をするということも行いました。考えの違う人たちとディスカッションしながら企画をまとめていく作業はとても大変ですが、その後のイギリスの大学院でも同じようなグループキュレーションの機会があり、企画の進め方や意見交換などのときに、その経験がすごく役に立ちました。

―MADは、いろんな方が受講されているんですね。

堀内:世代、経験の異なる他の受講生との横の繋がりもできて、修了後もアート業界に携わっている人が多いので、今でも続いているコネクションが増えたのは大きな収穫だったと思います。アートといってもいろいろな世界がありますし、自分がアートのどの部分に関わりたいのかも、レクチャーを受けることで、具体的に見えてくると思います。今は、アートの仕事もさらに多様化しているので、組織に所属するという選択だけではなく、自分たちで立ち上げることも可能になってきていると思いますね。

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イベント情報

『MAD2014相談会』

2014年4月3日(木)、5月16日(金)、6月20日(金)
会場:東京都 代官山 AITルーム
時間:19:00~20:30(要予約、定員30名、詳細はウェブサイトを確認)
料金:参加無料

AIT | MAD » 無料体験レクチャー/相談会

イベント情報

『ヤンキー人類学』展

2014年4月26日(土)~7月21日(月・祝)
会場:広島県 福山 鞆の津ミュージアム
時間:10:00~17:00
出展作家:
伊藤輝政
梶正顕
丸尾龍一
相田みつを
前田島純
夢想漣えさし
ちっご共道組合
みやび小倉本店
休館日:月、火曜(祝祭日は開館、翌日休館)(4月28日、4月29日、5月5日、5月6日、7月21日は開館、4月30日、5月1日、5月7日、5月8日は振替休館)
料金:一般1,000円
※小学生以下・障がい者の方は無料

『相田一人トークイベント』
2014年5月11日(日)17:00~19:00
会場:広島県 福山 鞆こども園
出演:相田一人
定員:100名
料金:1,500円

『都築響一×上野友行トークイベント』
2014年5月25日(日)17:00~19:00
会場:広島県 福山 鞆こども園
出演:
都築響一
上野友行
定員:100名
料金:2,000

『茂木健一郎トークイベント』
会場:広島県 福山 鞆こども園
出演:茂木健一郎
定員:100名
料金:1,500円
※日程未定

『斎藤環トークイベント』
2014年6月15日(日)15:00~17:00
会場:広島県 福山 鞆こども園
出演:斎藤環
定員:100名
料金:1,500円

プロフィール

櫛野展正(くしの のぶまさ)

2012年5月、広島県福山市鞆の浦で築150年の蔵を改修しオープンした「鞆の津ミュージアム」でキュレーター他を担当。死刑囚の描いた絵画や社会の周縁で表現を続けている人たちに焦点を当て、挑戦的な企画を打ち出し続けている。企画した展覧会に『ようこそ鞆へ! 遊ぼうよパラダイス』(2013)、『極限芸術~死刑囚の表現~』(2013)、『リサイクルリサイタル-幸せ時間の共有-』(2012)、『LOVE LOVE SHOW』(2012)などがある。

堀内奈穂子(ほりうち なおこ)

エジンバラ・カレッジ・オブ・アート現代美術論修士課程修了。スコットランド国会議事堂やジャズバーなど、エジンバラにて展覧会を企画。『ドクメンタ12』のマガジンズプロジェクト『メトロノーム11号ー何をなすべきか? 東京』(2006)では、アシスタントキュレーターを務めた。AITでは、展覧会やワークショップ、トークの企画のほか、教育プログラムにてレクチャーを行う。『Home Again」展(2012 / 原美術館)アソシエイトキュレーター、『アーカスプロジェクト』(2013)ゲストキュレーター。

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