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音楽は人間より遥かに賢い ジョン・フルシアンテ インタビュー

音楽は人間より遥かに賢い ジョン・フルシアンテ インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
写真提供:Nabil

過去の偉大なバンドと今の実験的なエレクトロニックミュージックの世界を融合させたい

『PBX Funicular Intaglio Zone』の発表後は、ヒップホップのサンプリング手法を追求したEP『Outsides』を経て、WU-TANG CLANファミリーの2人組BLACK KNIGHTSのプロデュースと、自らのソロ作の制作とを並行して進行。今年1月にBLACK KNIGHTSのデビュー作『MEDIEVAL CHAMBER』がリリースされたのに続き、ソロの最新作『ENCLOSURE』がリリースされる。


ジョン:『PBX』以降のコンセプトは、伝統的なソングライティングを非伝統的な方法でプロデュースするということ。ソングライティングは1960年代や70年代のスタイルを継承しているけど、プロダクションに関してはここ30年間で発達したエレクトロニックミュージックの方法を使っている。伝統的な音楽の思考を、モダンなエレクトロニックミュージックの思考と融合させたんだ。

2000年代のジョンは世界最大のロックバンドの一員として、ファンの期待に応え、より多くの人が楽しめる音楽を提供してきた。もちろん、その中にも彼の独創性はしっかりと反映されていたわけだが、そもそも彼はジミ・ヘンドリックスやフランク・ザッパといったギタリストに憧れ、彼らのように「他の誰もやっていないこと」を追求するためにミュージシャンを志した人物。レッチリの中では満たし切れなかった個人としての欲求が、00年代中盤の連作に表れていたわけだが、エレクトロニックミュージックとの出会いによって、その衝動はもはや抑えの利かないものになっていった。

ジョン:俺の頭はギターしかやっていなかった頃に比べると全く違う。60年代や70年代の音楽を今聴くと全く違うアングルから聴けるし、今は違うボキャブラリーがあるから別の視点から理解できる。今だったら、THE BEATLESの音楽を「音の構造」として捉えられる。それぞれのメンバーのリズムへのアプローチの違いが見えてくるんだ。最近のロックバンドは、みんなで波長が合っていないといけないと思い込んでいるけど、過去の偉大なグループを見ると、それぞれのメンバーはお互いに合わせようとしているわけじゃなくて、それぞれが独自の世界感を保っている。他のメンバーの演奏とは違うのだけれども、一緒に演奏すると完璧に合うんだ。過去の偉大なバンドと今の実験的なエレクトロニックミュージックにはそういう意味で共通点があって、俺は両者の世界を融合させようとしている。

ジョン・フルシアンテ

グルーヴにおける「間」の重要性と、リズムアプローチの変化

エレクトロニックミュージックとの出会いは、ジョンの音楽観をガラリと変えたわけだが、上記の発言通り、とりわけリズムに対するアプローチはまるっきり変わったと言える。『ENCLOSURE』の楽曲の多くは、伝統的なソングライティングの手法で作られた歌とギターを軸に、そこに後からサンプリングの手法で様々な異なるリズムパターンを付け加えていくことによって、1曲の中でコロコロと場面が展開する、プログレッシブな楽曲が生まれている。

『Outsides』のリリース時には、「以前バンドで演奏していたときは、俺が頭の中で理解できる最も細かい音符は16分音符だった。今はコンピュータープログラムを画面で見れば、16分音符の中にさらに四つの分割点があることがわかる。そして、その中にさらに156の分割点があることもわかった」と語り、『ENCLOSURE』に関しても、「間」の重要性を説いている。

ジョン:グルーヴというのはつまり音符と音符の間の「間」のことなんだ。ドラムプログラミングをやるようになってから、すべての音楽は「間」の作り方に基づいていることが分かった。60年代と70年代のBLACK SABBATHは「間」の作り方が得意だった。彼らは巨大な空間を音で作り出したし、彼らほど広々としたグルーヴを演奏しているバンドはいなかった。一方で、ジャングルというジャンルはドラムが高速なんだけど、メロディーがスロウで、広々としている。なので、何年も前からBLACK SABBATHみたいなメタルを、エレクトロニックなドラムと組み合わせたらかっこいいと思っていたけど、それを形にする技術がまだ身に付いていなかった。でも今は自分でプログラミングができるようになって、今回のアルバムでそれがやっと実現したんだ。

ジョン・フルシアンテ

かつてのロックバンドにおけるギタリストとしての、もしくはシンガーソングライターとしての規範を外れ、「エレクトロニックミュージック」というジョンにとってまったく新しい規範の中で音楽を追求してきたのが、ソロ第4期の5年間だったというわけだ。ギタリストとしても、シンガーソングライターとしても、確固たる地位と名誉を手にしていた人間が、そのすべてを投げ打って新しいことにチャレンジをするというのは、これまでに培ってきたものが大きければ大きいほど、恐ろしいことであるのは言うまでもない。しかし、いつだって1つの価値観にとらわれることなく、むしろものごとの「外側」にこそ価値があると信じ、ただ自らの内なる声に従って、独創的な音楽を追い求めてきたのがジョン・フルシアンテという人であり、そんな生き方がそのまま音に反映されているからこそ、彼は世界中の音楽ファンに愛され続けているのだろう。

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リリース情報

John Frusciante<br>
『Enclosure』日本盤(CD)
John Frusciante
『Enclosure』日本盤(CD)

2014年4月8日(火)発売
価格:2,300円(税込)
RUSH! × AWDR/LR2 / DDCB-12533

1. Shining Desert
2. Sleep
3. Run
4. Stage
5. Fanfare
6. Cinch
7. Zone
8. Crowded
9. Excuses
10. Vesiou(ボーナストラック)
11. Scratch(ボーナストラック)
※Blu-spec CD2仕様、ジョン・フルシアンテのロングインタビュー、歌詞対訳封入

プロフィール

John Frusciante(じょん ふるしあんて)

シンガーソングライター、ギタリスト。1994年『Niandra Labels and Usually Just a T-shirt』、2001年『To Rrcord Only Water for Ten Days』、04年『Shadows Cillide With People』、04年から05年にかけてインディペンデントレーベルより6連作を発表。09年『The Empyrean』、12年『Letur-Lefr』、『PBX Funicular Intaglio Zone』、13年『Outsides』。14年はラップデュオBLACK KNIGHTSとコラボレーションしたヒップホップアルバム『MEDIEVAL CHAMBER』を発表した。

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