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ビジネスとアートの違いを考えてみよう 遠山正道&東市篤憲対談

ビジネスとアートの違いを考えてみよう 遠山正道&東市篤憲対談

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:豊島望

僕自身作る人であると同時にプロデューサー。予算を管理したりマネジメントもできることで可能性が広がりました。それは今の時代だからこそ進化したスタイルなのかもしれません。(東市)

―東市さん率いるA4Aの名の由来は「Artist for Artist」。自身がクリエイターでありつつ、アーティストたちをそれぞれの従来領域を超えた場に結びつけ、活動を応援してもいます。初音ミク主演のオペラ『THE END』のようなものから、ミュージックビデオ、企業広告やルイヴィトンやドンペリニヨンのイベント、富士急ハイランド内でのプロジェクションマッピングまで幅広いですね。

東市:たとえば広告はもともと受注産業で、商品を人気タレントが美味しそうに味わうような表現で、その魅力を届けてきました。でも最近それとは別に、届ける側が主体的に「面白いこと」に挑戦し、それを見た人々も参加、体験したいと思える形の表現が増えている。そこで僕は、それをアーティストたちの表現の場として一緒に作る、究極の裏方的な仕事もしています。僕自身作る人であると同時に、予算を管理したりマネジメントもできることで可能性が広がりました。それは今の時代だからこそ生まれた、進化したスタイルなのかな? と思うこともあります。

左から:遠山正道、東市篤憲

遠山:東市君とは、ずっと仲良くお付き合いさせてもらっているけど、A4Aの名前の由来ってそういうことだったんだね(笑)。BtoBじゃなくてA4A、みたいな感じ?

東市:お、それは意識してなかったですね(笑)。ただ最近では、お話したような流れの中で「Artist for Artist」のコンセプトも広がり、より広い目的のために動いているような感覚もあります。それが遠山さんの言うような、ストレートに人を楽しませたり、幸せにしたりできるきっかけになれば嬉しいです。

渋谷慶一郎や様々なアーティストと作った『THE END』は、山口情報芸術センター[YCAM]での初演が決まった時点から、海外で観てもらうためのビジネスストーリーを進行させていました。(東市)

―そう考えると、ビジネスやアートはそれ自体が生み出す価値に加え、それをどんな場でどう共有できるかにも価値があるわけですね。

遠山:人々に愛されるかどうかは、そうしたことを通じた「肌感覚」で決まる。そこはアートだけでなく、食べ物や洋服もそうで、本来はビジネスや経済の都合と関係ないでしょう。今回、僕らが作品を展示している『Green Apple Museum』のスポンサーのKIRIN Hard Cidreだって、僕は「甘過ぎないからゴクゴクいけそう」と感じましたが、そこで提供する側が「前年比が~、ターゲット層が~」という話ばかりしていては何も届きません。飲む人たちにとってはどのように美味しいか、どんな時間に、誰と楽しむかこそが一番大切で、そこは見誤りたくないですね。

東市:一方でそういった共有感覚は、アーティストを一部のパトロンだけが支援していたような時代を経て、今ではクラウドファンディングのようなかたちにまで変形・拡充したとも言えそうです。僕らは今、自分たちのやりたいことをクライアントさんの仕事として発表していくことも多いんですが、不景気で依頼がこないなら、アイデアを構築してそれを試しに作ってみて、買い取ってもらい、実現すればいい。そういった状況を考えてみても、ビジネスとアートの垣根は低くなってきたとも言えそうです。

遠山:クリエイターとプロデューサー、両方の感覚を持てたのは、仕事に活きてる?

東市:それなしにはできなかった仕事もあります。『THE END』もそう。山口情報芸術センター[YCAM]での初演が決まり、渋谷慶一郎くんらと作品作りを始めた時点から、すでにこの新しいオペラ作品を海外でも観てもらうためのビジネスストーリーを進行させていました。パリのシャトレ座で公演ができたのは、それがあったからこそだとも思います。

左から:遠山正道、東市篤憲

―価値観を人から人へ届けるための、新しい仕組みを作ること。これがお二人の表現であり、ビジネスでもあるようにも感じます。

遠山:ただ、さっきのミカンの話に通じますが、アーティストが「今どういうアートを作れば売れるだろう?」から創作に入るとしたら、僕は魅力を感じない。たとえば、コンセプチュアルな表現が横溢した結果、揺り戻しで古典的な絵画が復興するといった大きな流れは常にあると思います。でも、マーケティング先行で魅力あるものが生まれるとは思えないし、それはビジネスにしても同じですよ。

「こんな赤字を出してまで、俺たちはなんで続けているんだ?」というとき、「いや、最初に話したあの景色を一緒に見ようって決めたじゃん!」という強い気持ちがないと続けられない。(遠山)

―ビジネスでも個人の想いが重要、ということについてもう少し聞かせてください。

遠山:それはね……ビジネスって、とにかく大変なんですよ(笑)。

東市:ふふふ(同意の苦笑)。

遠山:スープストックも始めてから長い間、苦境続きでした。「こんな赤字を出してまで、俺たちはなんで続けているんだ?」というとき、「いや、最初に話したあの景色を一緒に見ようって決めたじゃん!」という強い気持ちがないと続けられない。それがあるから踏ん張って、頑張ってこれたんです。

―スープストックトーキョーの誕生は「女性が1人、スープを飲んでホッとしている場面」が遠山さんの頭に浮かんだのがきっかけだそうですね。そこから、ファーストフード本来の魅力「早くて安くて、しかも美味しい」を大切にしたお店が広がっていったと聞きました。

遠山:仮に「儲かりそう」が起業の前面に出ていたら、業績が厳しかった頃、続ける意義を株主たちにも説明できなかったと思う。「格好良さそう」とかで始めても、それは何かの真似という時点で格好悪い。そういうプライドは大事にしてきたし、それは今年入ったばかりの新入社員にも伝わっていると感じています。

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イベント情報

『Green Apple Museum』作品展示会

2014年8月8日(金)~8月10日(日)br> 会場:東京都 渋谷 Sunday Issue
時間:13:00~20:00(受付終了は19:45)< 参加作家:
たかくらかずき
篠崎恵美
関根正悟
西島大介
ステレオテニス
東市篤憲
幕野まえり
大野そら
遠山正道
秋山具義
片山高志
川村真司+magma
exonemo
小鳥遊しほ
松下唯
福井利佐
大野友資
ヤドカリガール
きゅんくん
麒麟麦酒株式会社
料金:無料(入場は20歳以上のみ)

商品情報

KIRIN Hard Cidre
KIRIN Hard Cidre

リンゴでできたお酒シードルを、ビールのように爽快で、キレのある飲み心地に仕上げました。サーバーから注がれるフレッシュな味覚。甘すぎないので、料理との相性もバツグンです。

樽詰ハードシードル |チューハイ・カクテル|商品情報|キリン

プロフィール

遠山正道(とおやま まさみち)

1962年東京生まれ。85年三菱商事(株)入社後、99年スープ専門店「Soup Stock Tokyo」第1号店をオープン。2000年三菱商事初の社内ベンチャー企業(株)スマイルズを設立、2008年MBOによりスマイルズの株式100%を取得。現在「Soup Stock Tokyo」、ネクタイブランド「giraffe」、新しいリサイクルショップ「PASS THE BATON」の企画・運営を行う。近著に『成功することを決めた』(新潮文庫)、『やりたいことをやるビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』(弘文堂)がある。

東市篤憲(とうし あつのり)

「Artist for Artist」を旗印に、主にデジタル分野のアーティストたちを支援することを目指して設立されたクリエイティブプロダクション・A4Aの代表。映像、インスタレーションなど革新的作品を発表。ルイヴィトン『Timeless Muses』展、BUMP OF CHICKEN『ray』MV、富士急ハイランド『リサとガスパール』プロジェクションマッピングなどを手掛け、9月より青山劇場にて上演される、蘭寿とむ主演『ifi』の映像・空間演出も控えている。

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