インタビュー

連載をもつ漫画家がなぜ音楽を? 感傷ベクトルインタビュー

連載をもつ漫画家がなぜ音楽を? 感傷ベクトルインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武

『別冊少年マガジン』で『フジキュー!!! ~Fuji Cue’s Music~』を連載する漫画家でもある田口囁一と春川三咲によるユニット、感傷ベクトルがファーストシングル『エンリルと13月の少年』を経て、2枚目のフルアルバム『君の嘘とタイトルロール』を完成させた。2012年に発表された前作『シアロア』は、ウェブで連載していた漫画の各話に連動していた楽曲をアルバムとして発表した作品だっただけに、それから2年の月日をかけて、「感傷ベクトルの表現とは?」という命題に向き合った本作は、彼らにとっての本当の意味でのデビューアルバムだという言い方もできるかもしれない。とはいえ、連載のネタ作りと並行して行われた本作の制作は、困難を極めたようだ。

そもそも彼らはライブハウスに出演しながらも、華やかな青春パンクにはなじめず、かといって鬱ロックほど感情をむき出しにすることもできず、結果として同人の方向に向かい、物語を作り上げることで、自らの世界観を築いてきた。つまり、「物語」という枠を取り払って作品を作ることは、今回がほぼ初めての経験だったのだ。しかし、現在のライブメンバーであるバンドの協力や、じんをはじめとした同時代の表現者からの刺激を受けつつ完成したアルバムは、フィクションと現実の境界線をあやふやにする独自のバランスも含めて、「感傷ベクトル」という存在そのものが明確に刻み込まれた作品であり、結果的に「感傷ベクトルという名の物語」となっていることに、彼らの作家性を感じずにはいられない。ともかく、今後に向けてとても重要な一歩となったことはまず間違いないだろう。

漫画の連載が大変な分、ギターを弾くのが楽しくてしょうがないんです。(田口)

―前回の取材が5月で、ちょうど『フジキュー!!!』の連載が始まった頃だったんですけど……。

田口(Vo,Key,Gt):そんな前でしたっけ? なんかもっと最近なような気がするんですけど、そんなに経ってるのか……引きますね(笑)。

―時間の経過もわからないぐらい忙しかったってことでしょうね(笑)。

田口:毎月の連載が始まって、しかもアルバムの作業もライブ活動もやっていた5月からいままでを、1つの大きな塊として認識していて、時間の経過の感覚がないですね。やっぱり、ずっと同じスケジューリングってわけにはいかないじゃないですか? 漫画が毎月あって、その間にライブが入ってくるだけだったら徐々に慣れるのかもしれないけど、今回みたいにCDのリリースがあって、プロモーションがあったりとか、新しいことがいまだに増えてるので、なかなか慣れないんですよね。

―Twitterを見てると、ライブの日も楽屋で漫画描いてたみたいですもんね。

田口:この間のライブの日も、この部屋(ビクターの会議室)で描いてたんですよ。リハ終わって、タクシーでここに来て、ガーッと漫画描いて、本番直前に移動して、演奏して速攻帰るみたいな感じだったんで……毎日何してたかどんどん忘れていっちゃうんですよね(笑)。

―二人で会う機会はどれくらいあったんですか?

春川(Ba):僕がたまに田口家に行くぐらいですね。

田口:たまにフラッと遊びに来てくれるんです。

―そのときは何をしてるんですか?

春川:ドーナツ食べます(笑)。ミスタードーナツに寄って、ドーナツ買って行って、ライブの反省とか、今後のこととか、打ち合わせ兼雑談をしてますね。

田口:同人時代から、家に来るときは大体ドーナツを買ってきてくれるんですよ。

春川:そろそろ義務感を感じてるくらいです。「ドーナツ買わないと入れてもらえないんじゃないか」ぐらいの(笑)。

感傷ベクトル 撮影:西槇太一
感傷ベクトル 撮影:西槇太一

―毎回ミスド? クリスピークリームじゃダメなんですか?

春川:ハードル高そうなところは、入るの怖いんで。

―クリスピークリームは、そんなにハードル高くないですよ(笑)。

春川:わかんないですよ……入ったら、きれいなお姉さんがたくさんいて、「もさいやつが来たぜ」って目で見られたら……。

田口:注文のルールもわかんなそうだし。

―相変わらずだなあ。感傷ベクトルのこの感じ、思い出してきました(笑)。じゃあ、スタバは?

田口:「ドッピオって何だよ!」って思っちゃいます。

春川:最近行けるようになりました。普通に頼んだら、意外とちゃんと対応してくれて。

―そりゃそうですよ(笑)。

春川:てっきり呪文みたいなことを言わないといけないんじゃないかって恐ろしさがあって、大学のときは行けなかったです。

田口:俺まだ行けないなあ……。「俺はいまスタバに入るのにふさわしい恰好をしてないかもしれない」って、スタバドレスコードを気にしちゃいます。

―今日の恰好で全然大丈夫ですよ(笑)。ちなみに、春川くんはライトノベルを執筆してたと思うんですけど、その進行状況はどうなんでしょう?

春川:やり続けてはいるんですが……行ったり来たりを繰り返してなかなか進まないんですよね。「考え過ぎだろ」って3日に1回思って、でもまた気づいたら考え過ぎてるっていう、その繰り返しで……。

春川三咲 撮影:西槇太一
春川三咲 撮影:西槇太一

―なおかつ、その間に感傷ベクトルの活動もあるわけですもんね。

春川:あ、でも感傷ベクトルの活動はすごく楽しいです。ライブとかが近づくと、むしろ元気になる。

田口:それは俺もそうだなあ。リハに入れると嬉しいんですよね。漫画に行き詰まったときにギターを弾くと、サボってるみたいで後ろめたくなるんですけど、スタジオに入ってリハする日は「今日は仕事として大手を振ってギターが弾ける」と思うと嬉しくて、それが癒しになってますね。

春川:うん、音楽活動はすごく楽しいです。

田口:最近ギターがちょっと上手くなったんですよ(笑)。漫画の連載が大変な分、ギターを弾くのが楽しくてしょうがないんです。

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リリース情報

感傷ベクトル<br>
『君の嘘とタイトルロール』初回限定盤(CD+DVD)
感傷ベクトル
『君の嘘とタイトルロール』初回限定盤(CD+DVD)

2014年10月8日(水)発売
価格:3,780円(税込)
SPEEDSTAR RECORDS / VIZL-663

[CD]
1. 神様のコンパス
2. エンリルと13月の少年
3. 星のぬけがら
4. 初夏の哀悼
5. 涙のプール
6. ひとりの週末
7. 光のあと
8. 生者の更新
9. 終点のダンス
10. その果て
11. 僕の嘘とエンドロール
[DVD]
・“エンリルと13月の少年”PV
・初のワンマンライブ「一人の終末」から厳選されたライブ映像6曲を収録

感傷ベクトル<br>
『君の嘘とタイトルロール』通常盤(CD)
『君の嘘とタイトルロール』通常盤(CD)

2014年10月8日(水)発売
価格:3,024円(税込)
SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64156

1. 神様のコンパス
2. エンリルと13月の少年
3. 星のぬけがら
4. 初夏の哀悼
5. 涙のプール
6. ひとりの週末
7. 光のあと
8. 生者の更新
9. 終点のダンス
10. その果て
11. 僕の嘘とエンドロール

書籍情報

『フジキュー!!! ~Fuji Cue's Music~』
『フジキュー!!! ~Fuji Cue's Music~』

2014年10月9日(木)発売
著者:田口囁一
価格:463円(税込)
発行:講談社

プロフィール

感傷ベクトル(かんしょうべくとる)

ボーカル、ギター、ピアノ、作詞、作曲、作画を担当する、漫画家・田口囁一(タグチショウイチ)と、ベースと脚本を担当する小説家・春川三咲(ハルカワミサキ)によるユニット。音楽と漫画の2面性で世界観を作り上げることから、ハイブリッドロックサークルと銘打ち、発表媒体を問わず幅広く活動する。 自在にセルフメディアミックスで表現する様は、まさにデジタルネイティブ世代の申し子と言える。その一方で、「僕は友達が少ない+」をジャンプSQ.19で連載するなど、プロの漫画家としても活動しており、現在は別冊少年マガジンにて青春バンド漫画「フジキュー!!!」を連載中。既刊1巻。

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