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100%サンプリング製法を謳うcanooooopyの問題作

100%サンプリング製法を謳うcanooooopyの問題作

インタビュー・テキスト
金子厚武
2014/11/28

今インターネット上にアップされている音源をすべて聴こうと思ったら、はたしてどれくらいの時間が必要なのだろう? SoundCloudやBandcampを使って、誰もが簡単に曲をアップし、それがネットワークで拡散されていく時代、おそらくは一生かかっても、すべてを聴くことはできないのだろう。そして、そうやって日々アップされる音楽を追いかけることはとてもエキサイティングである一方、実際大半の曲はほとんど聴かれることなく、もしくは、聴かれたとしても記憶に残ることなく、ネット上を幽霊のように漂い続けているわけだ。

そんな現代の音楽シーンに一石を投じるのが、何やら意味ありげな、フードに包まれた家電のチラシをアイコンとする音楽家canooooopyである。すべての楽曲が「100%サンプリング製法」で作られ、なおかつ使用するのはアップデートされていないGarageBand‎のみながら、その作品のクオリティーの高さがネットを中心に話題を呼んできた彼が、初のCDアルバム『百夜を繋ぐ言の千切れ葉』を、World's End Girlfriend主宰のVirgin Babylon Recordsからリリースする。何より注目すべきはその音フェチっぷりがいかんなく発揮された楽曲の完成度だが、この作品が結果として、前述したようなネット音楽をめぐる状況を象徴する作品となったこともまた間違いない。そう、これは2014年も押し迫ったこの時期に発表される、今年随一の問題作。インタビュー自体も、抜群に面白いものとなった。

自分が好きなものを全部詰め込んだら、自分が好きなものになるんじゃないかっていう、すごいシンプルな動機ですね。「簡単だし、誰もやってなさそうだし」ぐらいの。

―100%サンプリング製法で、使用機材は初期型のGarageBand‎のみというのは非常に珍しいと思うのですが、そもそも曲はいつ頃どうやって作り始めたのですか?

canooooopy:音楽を聴くのは昔からずっと好きだったんですけど、大学生のときに何か自分でも作ってみたいと思って、お金もないからMacに最初から入ってるGarageBandを使いはじめました。最初は打ち込みで、ピコピコ系のニンテンドーコアみたいな音楽を作ってたんですけど、どうしてもMIDIの安い音になっちゃうからサンプリングを使うようになって、そのうちいつのまにか全部サンプリングになってたっていう(笑)。

GarageBandの画面

―バンド経験はないんですか?

canooooopy:一応大学生のときにやったんですけど、基本的に楽器は弾けないので、ハードオフで買ったおもちゃのボンゴみたいなのをボコボコ叩いて、それをカセットテープで録って演奏と同時に鳴らしたりとか、よくわかんないバンドで、1回ライブして解散しました(笑)。

―いかにも大学生らしい、「前衛的なことをやろう」みたいな感じだったんでしょうね(笑)。

canooooopy:私は美大出身なんですけど、いわゆる美大っぽいというか、クソみたいなバンドでしたね(笑)。その後にラップグループみたいなのもやったんですけど、それもすぐダメになっちゃって。やっぱりね、人とやるのは難しいですよ。

―だとすると、曲を作ることがcanooooopyさんにとってのコミュニケーション手段だったのでしょうか? それとも、何かアウトプットしてないと気が済まないタイプなのか、曲作りのモチベーションってどこから来てたと思いますか?

canooooopy:自分が好きなものを全部詰め込んだら、自分が好きなものになるんじゃないかっていう、すごいシンプルな動機ですね。「簡単だし、誰もやってなさそうだし」ぐらいの。

―自分が聴きたいものを、自分で作ってると。

canooooopy:そうですね。なので、今でも自分のトラックが一番好きです。あとは、「ざまあみろ」というか、舐められてる奴らに復讐してやる、みたいな気持ち……なのかな? わかんない(笑)。まあ、何かで認められたい、ぐらいのことですね。実際曲を作ってるときは、そういうことは考えないですけど。

―ラップグループをやっていたとのことですが、もともとヒップホップとか、サンプリング主体の音楽がお好きだったのでしょうか?

canooooopy:いや、世代的には最初は日本のバンド、くるりとかスーパーカーとかNUMBER GIRLとかが好きで、その辺から海外のインディーに入り、ヒップホップももちろん聴いてましたけど、最終的には民族音楽とかミュージックコンクレートとか、そういうところまで行った感じです。なので、特別サンプリング主体のものが好きってことではないんですけど、ビートミュージックみたいなものは好きですね。

―もともとバンドがお好きだったのであれば、いわゆる「作曲」をすることは考えなかったのですか?

canooooopy:そっちに行こうとしても、なぜか気持ちが頓挫してしまうんですよ。自分にとって、楽器を弾くのはすごくハードルが高いんだと思います。父親がイラストレーターだったので、家にペンが転がってて、絵を描くのはそんなにハードル高くなかったんですけど、楽器は転がってなかったので(笑)。

―じゃあ、徐々にGarageBand‎でやることがこだわりになっていった?

canooooopy:いや、こだわりっていうのはそんなにないかなあ。他の音楽やってる人と知り合うと、「何使ってるの?」って話になるじゃないですか? そうやって話を聞くと、どのソフトもインターフェイスから既に複雑そうで、「怖いな」って思って(笑)。自分はサンプルを切り刻んで混ぜることができればよくて、他の機能は特に要らないので、だったらわかりやすい方がいいし、お金もかからないし。「これをやりたい」っていう具体的な手法が出てきたら考えるかもしれないけど、今は思ってることがGarageBand‎で全部実現できてるので、特にやり方を変えようとも思わないですね。

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リリース情報

canooooopy 『百夜を繋ぐ言の千切れ葉 [disconnected words connect the worlds]』(CD)
canooooopy
『百夜を繋ぐ言の千切れ葉 [disconnected words connect the worlds]』(CD)

2014年11月29日(土)発売
価格:2,052円(税込)
Virgin Babylon Records / VBR-021

1. 配管工の帳拭い [pipefitter opens the day]
2. 忍び寄りの逓送員 [viral address stalker]
3. 芥かぶりの海賊たち [pirates of the calibration]
4. 有機コイルの超伝導体 [the innersonic blaster]
5. 混合物のオラトリオ [mono montaged oratorio]
6. 電磁神殿の光線獣 [beamed beast at terminal temple]
7. 沈めた望みと夜鳴きの煌虫 [songs about a sunken hope]
8. 世界記述師の研究室 [laboratory of world-coders]
9. 夢見騒がしの望郷者 [too long way home]
10. 地底都に座すとげ目の亡者 [young lordead of ground nadir]
11. 未来視たちの幻灯樹 [visionary's magic plantern]
12. 変幻世界の霧めく姉妹 [kaleido world mysty sisters]
13. 復体の列が踏み鳴らす [doppelinedancerstomps]
14. 多角地区での喧噪と転生 [the polygonic spree]
15. 仮想平面の非可逆豹 [jagged jaguar on a frame]
16. ガウスの灰塵 [the phantom of the gauss]
17. 月焼け落ちる海の腹 [the dead moon blues]
18. 裂けゆく次元の金屏風 [drift to the next world]

音源情報

canooooopy
『飢えた夢魔への流動食: 提供作品集 [past works for someone]』

※これまでの提供曲をまとめた作品、Virgin Babylon Recordsのbandcampからフリーダウンロード可能

プロフィール

canooooopy(きゃのーぴー)

すべての曲が100%サンプリング製法、使用機材はGarageBandのみ、という特異なスタイルでありながら、これまでにメキシコ、アメリカ、イギリスなど世界15カ国よりアルバム、リミックス、コラボ、プロデュースなど、 様々な形で多くの作品をリリース。そしてついに、彼自身の初のCDアルバムである"百夜を繋ぐ言の千切れ葉 [disconnected words connect the worlds]"が11月29日にVirgin Babylon Recordsよりリリース。幾千の音がこれまで以上に緻密に織り込まれ、ネクストレベルのサンプリング・ミュージックが完成した。

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