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BOOM BOOM SATELLITES、残酷な運命から希望を描いた傑作

BOOM BOOM SATELLITES、残酷な運命から希望を描いた傑作

インタビュー・テキスト
矢島由佳子
撮影:豊島望
2015/02/03
  • 716

運命とは、ときにとても残酷だ。「神様は乗り越えられる試練しか与えない」なんて言葉は、残酷な運命と対峙しなければならない人生の場面においては、単なる綺麗事でしかなくなってしまう。しかし、絶望に突き落とされたときにこそ、不貞腐されたり、エゴイスティックに生きたりするのではなく、「人のために生きたい」と思えたのであれば、その瞬間、人間は誰かの心を本気で救える偉大なパワーを発揮できるのではないだろうか。

BOOM BOOM SATELLITESは、これまで実に希有な人生を歩んできた。そしてその都度、自分たちの人生を音楽にリアルに反映させながら、ときに攻撃的に、ときに優しく包み込むようなサウンド、ビート、そして歌で、私たちに多彩な情感を湧き起こさせてくれた。川島(Vo,Gt)に初めて脳腫瘍が発見されたのは1997年、デビューを果たした年である。その2年後、同じ症状を再び患い2度目の手術を受ける。そして2013年1月、前作『EMBRACE』の発売と全国ツアーが始まる直前に3度目の発症が確認され、ツアーの中止を発表、川島は手術を受けて約4か月間の休養期間に入った。活動再開後は順調に前に進んでいるように見えていたが、昨年末にオフィシャルブログで発表された内容が、世間を驚かせた。約2年ぶりにリリースされるアルバム『SHINE LIKE A BILLION SUNS』の制作を進めながらいくつものフェスに出演していた2014年、川島は4度目の再発と闘い、さらには余命2年の宣告を受けていたことが報告された。

「聴いてくれた人のために」とインタビュー中に何度も発言しているように、エゴが一切ない川島が発する歌声と、川島と一心同体の存在としてバンドの未来を共にしながら、どうにも操れない現実に恐怖や孤独が襲いかかり、音楽に希望と救いを見いだそうとして作り続けた中野(Ba,Programming)のサウンドが融合し、命の儚さと尊さを表しながら神聖なサウンドスケープを描いた『SHINE LIKE A BILLION SUNS』がついに完成。この1枚が出来上がるまでのBOOM BOOM SATELLITESの生き様を、ここに綴る。二人が鳴らす音は、どんな暗闇にいても私たちの心に寄り添い、救いの手を差し出してくれる。BOOM BOOM SATELLITESのライフミュージックよ、この薄暗い世の中を照らせ、永遠に。

今までも僕たちは音楽と人生をセットにして生きてきて、このアルバムも僕たちにとってはリアルなんです。(中野)

前回BOOM BOOM SATELLITES(以下、BBS)に取材をさせてもらったのが、2014年8月。「アルバム全体の6~7割までは出来た」という制作真っ直中のタイミングだった。そのときが、川島が世界的にも珍しい治験段階の放射線治療を受けた直後であったということを、私は年末の報告で知ることになる。その取材の中で、アルバムに懸ける想いを語ってくれていた二人の真剣な眼差しは、あれから半年経った今も脳裏に焼き付いているほど力強いものだった。

―8月に取材をさせてもらったとき、「どんなアルバムになりそうですか?」と訊いたら、「曲を聴いてるスタッフは『明るい』って言う」とおっしゃっていて。そのときは、それがどういう明るさなのか想像もつかなかったのですが、完成した『SHINE LIKE A BILLION SUNS』を聴いて感じたことは、このアルバムに含まれている明るさというのは、暗闇や絶望に立たされた人たちが「人のために何かをしたい」と思ったときに発揮することのできる真の優しさ、放つことのできる希望の光だと思ったんですよね。

中野:そうですね。今までも僕たちは音楽と人生をセットにして生きてきて、人生を切り売りしながらそのときに見いだしたいものを作ろうと思って取り組んできました。だから、このアルバムも僕たちにとってはリアルなんです。自分たちの音楽をリアルと切り離してフィクションで描くタイプのアーティストもいますけど、ロックバンドの場合は、やっぱりリアルな方が伝わると思うんですよね。

―このアルバムの制作期間、BBSが見いだしたかったものというと?

中野:自分たちが救われたい気持ちとか、希望が欲しかったりとか……自然とそういうものが出てると思います。ちょっと強引でも前に進んでいこうっていうロックバンドのアジテーションが、このアルバムには入っていると思う。それが、優しさっていうものを印象づけたりとか、リスナーに寄り添う感じにつながっているんじゃないかな。

中野雅之
中野雅之

―リスナーに寄り添う感じっていう点で言うと、この作品は二人のエゴを一切感じさせないんですよね。

中野:エゴがないっていうのは、ひとつには川島くんの声にあると思うんですね。上手く歌おうとか、表現力豊かにしようとする感じがないのに、個性や表現に乏しいとか、人肌の体温感がないわけではない。自己表現の欲求に駆り立てられて、持っている能力をフルで使おうとするのがロックバンドのボーカルだってずっと思って生きてきたんですけど……珍しいボーカリストなんですよね。

―川島さんは、「エゴがない歌を歌おう」という意識はされてるんですか?

川島:意識してないです。むしろ上手に歌いたい(笑)。

川島道行
川島道行

中野:そう、全く自覚がないことなんですよ。「エゴをなくそう」って考えだすと、それが音楽に対して作為的なことが働いている状態になって、それ自体がエゴになりますからね。

音楽を受け取るほうには、何も着色せずに聴いてほしいんですよね。でも、ひた隠しにしているのもよくないと思ったんです。(中野)

ここまで読んでくださったあなたに、伝えておきたいことがある。次のページから、制作期間中に二人を襲った残酷な試練を深く訊いていくことになるが、川島自身も以前から「病気であることを美として、ネガティブな発言で共感を得ることはしたくない」と発言している通り、決して彼らのストーリーから涙や同情を誘いたいわけではなく、「病気を乗り越えたから感動的な作品ができました」みたいな安直な作品紹介をしたいわけでもない。音楽と人生をリンクさせて、常に嘘のない表現スタイルを選んできた二人のロックミュージシャンが、果てしなく誠実に「音楽」と向き合い続けて完成させた作品を、偽りなく伝えたいからである。

年末にブログで病状を公表したことも、アルバム発売前に公開された“A HUNDRED SUNS”のミュージックビデオで、それまでずっと手術跡を隠すために帽子をかぶって公の場に登場していた川島が帽子をかぶらずに映っていることからも、二人が音楽に対してどこまでも真摯かつ素直でいたいという想いが伺える。


中野:音楽を受け取るほうには、何も着色せずに聴いてほしいんですよね。でも、ひた隠しにして、川島くんが帽子をずっとかぶっているのもよくないと思ったんですよ。バンドのあり方としても、ファンに対しても、ちゃんと堂々としていたいなと思って。あとはもうアルバムの音楽力が勝ってくれさえすれば、何とかなるんじゃないかって。

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リリース情報

BOOM BOOM SATELLITES『SHINE LIKE A BILLION SUNS』初回生産限定盤(CD+CD-ROM)
BOOM BOOM SATELLITES
『SHINE LIKE A BILLION SUNS』初回生産限定盤(CD+CD-ROM)

2015年2月4日(水)発売
価格:3,780円(税込)
SRCL8688/9

1. SHINE
2. ONLY BLOOD
3. COMPLICATED
4. A HUNDRED SUNS
5. VANISHING
6. BACK IN BLACK
7. THE MOTH (attracted to the flame)
8. BLIND BIRD
9. OVERCOME
10. STAIN
11. EMERGENCE
※CD-ROMにはリミックスパーツを収録

BOOM BOOM SATELLITES『SHINE LIKE A BILLION SUNS』通常盤(CD)
BOOM BOOM SATELLITES
『SHINE LIKE A BILLION SUNS』通常盤(CD)/dt>

2015年2月4日(水)発売
価格:3,240円(税込)
SRCL8690

1. SHINE
2. ONLY BLOOD
3. COMPLICATED
4. A HUNDRED SUNS
5. VANISHING
6. BACK IN BLACK
7. THE MOTH (attracted to the flame)
8. BLIND BIRD
9. OVERCOME
10. STAIN
11. EMERGENCE

『FRONT CHAPTER Vol.4』

2015年5月5日(火・祝)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO

2015年5月6日(水・休)
会場:福岡県 DRUM LOGOS

2015年5月13日(水)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2015年5月14日(木)
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO

2015年5月16日(土)
会場:富山県 MAIRO

2015年5月20日(水)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO

2015年5月29日(金)
会場:北海道 札幌 cube garden

2015年5月31日(日)
会場:宮城県 仙台 RENSA

プロフィール

BOOM BOOM SATELLITES(ぶん ぶん さてらいつ)

1990年、中野雅之と川島道行によって結成。エレクトロニックとロックの要素を取り入れながら、新しい道の音楽を想像し続ける日本屈指のクリエイターユニット。1997年、ヨーロッパでデビュー。UK音楽誌『Melody Maker』は、「The Chemical Brothers、The Prodigy以来の衝撃!」と報じたことをはじめ、多くのメディアに大絶賛される。2004年には映画『APPLESEED』の音楽を担当、その後もリュック・ベッソン監督の映画『YAMAKASI』やクリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』で楽曲が起用されるなど、多くのクリエーターから愛され続けている。2015年2月4日、9枚目のアルバム『SHINE LIKE A BILLION SUNS』がリリース。

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