曽我部恵一が語る、自分が父親としてダメだと思う瞬間

もうすぐ「父の日」ということで、複数のクリエイターにふだんは聞けない「父親」としての話を聞いてみようという、サントリー「伊右衛門 特茶」との連動インタビュー企画。第2回はミュージシャンであり、レーベルオーナーでもあり、そして3人の子を持つ父親でもある曽我部恵一にインタビューしました。本人は自身の父親ぶりを「適当」と言うものの、正直に子どもたちと向き合う姿には、きっと心打たれる人も多いはず。もの作りと子育ての両立について、ミュージシャンという激務をこなすうえでの健康法についてまで、幅広く語ってもらいました。父親って、かっこいい!

仕事の話を聞かれたりもしますよ。「いつからやってるの?」とか、「どういうふうにやってるの?」とか。「パパの歌、大好き!」みたいなのは、今はほとんどないですけどね(笑)。

―今日は曽我部さんに音楽や歌の話ではなく、「父親」をテーマにインタビューをさせていただきたく、プライベートなお話もうかがっていければと思っています。

曽我部:もちろん大丈夫ですよ、よろしくお願いします。

―曽我部さんの歌にも時々登場されていますが、3人のお子さんの父親でいらっしゃるんですよね?

曽我部:中2、小4、小1で、上2人が女の子、1番下が男の子です。

曽我部恵一
曽我部恵一

―お子さんたちは、お父さんがミュージシャンであることも知っているんですか?

曽我部:それはもちろん。ライブにもたまに連れていきますし、時々仕事の話を聞かれたりもします。たとえば「いま収入はいくらくらいあるの?」とか。

―そっちですか(笑)。

曽我部:特に次女は気になるみたいですね。長女はもう中学生なので、差し出がましいと感じているのか、あまり聞いてこなくなりましたけど。いろんなことを聞かれますよ。「いつからやってるの?」とか、「どういうふうにやってるの?」とか。「パパの歌、大好き!」みたいなのは、今はほとんどないですけどね(笑)。

―それはそれで寂しいですね(笑)。お子さんとの付き合い方は、どんな感じなんですか?

曽我部:うーん、「適当」っていう言葉が一番近いかもしれません。もちろん「これはさすがにマズいだろう」という状況では怒ったりもしますけど、ちゃんと勉強やりなさいとか、こういう教育を受けさせたいとかは一切ない。なんでもいいんじゃないかな。好きなことを見つけられたら。

―子どもに対して、それほど干渉するタイプではないんですね。

曽我部:やっぱり、自分の子どもとはいえども、他人でもありますからね。ただ、20年とか30年とか、たまたま一緒に暮らす中で、いい関係でありたいなと思うんですよ。その中で最低限、自分が思っていることをちゃんと伝えられたらと。「親の言うことを絶対に聞きなさい」「これが正しい」っていうのは、なかなか難しいじゃないですか。それに対して、自分もはっきりした根拠を持っているわけではないというか。だから、「自分はこう思うけど、なんでそうなのかよくわからない」というのは、正直に言っていますね。

―たしかに父親になったからといって、正解を知っている人になるわけではないですからね。

曽我部:「なんで勉強しなきゃいけないの?」と、問われても、「なんでだっけ?」みたいな感じじゃないですか。自分もそういうことを大人に押し付けられるのは嫌だったし、気をつけている部分ではありますね。

曽我部恵一

―だんだん子どもが親離れして、寂しくなったりすることもありますか?

曽我部:もともとあんまりベタベタしないですね。僕自身、自分の時間も大切なタイプなので。ただ、少し前まで1番下の子が幼稚園で、お弁当を作って送り迎えしていたんですよ。4月から小学生になって、それが必要なくなって楽にはなったんだけど、どこか寂しさを感じているところはありますね。

―“うみちゃん、でかけようよ”という歌があるので、子どもを連れて出かけるのが好きなのかなと思っていたんです。

曽我部:子どもと一緒に出かけるのは好きですよ。“うみちゃん、でかけようよ”は次女の歌なんですけど、彼女は超インドア派なんですよ。学校から帰ってきたら、すぐパジャマに着替えて、マンガを読んだり、パソコンやったり、ペンタブレットでイラストを描いていたり、絶対に外に出たがらない(笑)。なので作りました。

―そうだったんですか!? 本人が大人になったら、また聴いてもらいたいですね。

自分が生きて、感じてきたことが自然と歌になっていくので、家族や子どものことは、どうしても出てきますよね。

―お子さんのことを歌われていたり、曽我部さんは私生活と作品内容がリンクしているタイプのミュージシャンだと思うのですが、ご自身ではどう捉えていますか?

曽我部:自分が生きて、感じてきたことが自然と歌になっていくので、家族や子どものことは、どうしても出てきますよね。だから、父親になったから子どもの歌を作ろうっていうことではないんですよ。それは家族だけじゃなく、あらゆることに対しても同じなので。人間の本質的な部分って、環境が変わってもそれほど変わらないと思うんです。自分自身も父親になったことで、劇的に変わったとは思わないので。

―父親になったことで、アーティストとして良い影響を感じている部分はありますか?

曽我部:具体的にはわかりませんが、もちろんあるとは思います。自分以外の他者と一緒に暮らすっていうのは、一人で暮らしていたときとは全然違いますから。すり合わせなきゃいけないこともいっぱいあるし、修行みたい(笑)。ただ、子どもの生活時間に合わせなきゃいけないから、仕事に使える時間は確実に減るし、制作期間はちょっと辛いですよね。

―集中しなければいけないときもあるでしょうからね。

曽我部:昔は集中して、何日も寝ないで制作に没頭していた時期があったんですよ。ずっとそんなやり方で作ってきたけど、いまは物理的にできない。でも、子どもがいてくれて良かった、幸せだなと思う瞬間はすごくある。やっぱり子どもはパワーをくれますよ。子どもたちが頑張っているから、僕も頑張ろうかなと思うことも多いし。ただ、やっぱり制作期間中は破綻してしまいますけど。

―破綻ですか?

曽我部:子どもを学校に送り出すために、毎朝6時半に起こさなきゃいけないんですけど、夜、子どもたちをお風呂に入れて、寝かせて、家事をやった後にやっと自分の時間なので、そこから制作するとすぐ朝になる。それで、だいたい昼には仕事があるから、子どもを送り出してからの2、3時間しか寝る間がなくて。だから制作期間中はキツいですね。早死にしそうです(笑)。

―昼夜逆転してしまう。

曽我部:昼間寝られるなら、まだいいんですけどね。でも、もの作りをする人はみんなそうかもしれません。ただでさえ精神的に不安定な世界に飛び込んでいくような仕事だけど、母親のミュージシャンもいるわけだし、みんな大変なんだろうなと思いますね。

欲望の赴くまま暴飲暴食するのではなく、ある程度自制しながら生きていく。そういう人はかっこいいなと思いますね。

―寝る時間は少ないというお話でしたが、健康には気を使っていらっしゃいますか?

曽我部:40歳を超えてから、気を使い始めましたね。30代までは朝まで飲んで、二日酔いで子どもを幼稚園に送ったりもしてましたけど、いまはお酒もやめました。家族を大事にしたいなら、お酒は諦めたほうがいいと思ったので。

―思い切って生活習慣を変えたんですね。ご自身なりの健康法はありますか?

曽我部:半身浴などもしていますけど、一番大事なのは「睡眠」と「精神状態」だと思います。寝ていないとライブで声も出ないし、心に悩みを抱えていると絶対に病気になると思うから、なるべくストレスがないようにしたいんです。

―家族のご飯を作られているとのことでしたが、食べ物や栄養についても考えられている?

曽我部:バランス良く栄養を摂るようには考えています。ちなみに今晩は餃子です。餃子でも、自分で作れば塩分をコントロールできるし、野菜たっぷりにできるから。ただ、油はどうしても使うし、焼き魚にしても脂が乗っているので、脂肪分やカロリーは気になりますけどね。

曽我部恵一

―でも、曽我部さんは一時期に比べると、だいぶ痩せましたよね。

曽我部:3年くらい前が1番痩せていて、いまは少し増えたんですけど、できればもう少し減らしたいんですよ。

―それは、ダイエットに取り組んでいたんですか?

曽我部:そうですね。カロリーコントロールで普段摂っているカロリーの3分の2に制限したら、ちゃんと痩せました。いまはダイエットはしていませんが、トクホ(特定保健用食品)の「特茶」をときどき飲んでいます。

―常に健康への意識を持たれているんですね。ミュージシャンはやはり体型も大事だと思うんですけど、そこは意識されてますか?

曽我部:もちろん音楽が1番ですけど、男は見た目も大事ですよね。太っているからダメってことはまったくないけど、お父さん友だちでもスラッとしてる人はカッコいいし、いろいろ気を使って自制しているんだろうなって思う。欲望の赴くまま暴飲暴食するのではなく、ある程度自制しながら生きていく。そういう人はかっこいいなと思いますね。

やっぱり他の親御さんが普通にやっていることは、ちゃんとできていたい。ただ、なかなか上手くいかなくて。

―父親として自分はこうありたいとか、意識していることはありますか?

曽我部:一人の大人としてちゃんとしなければ、っていうのはすごくあります。それができなかったときは1日中ヘコみますね。この間も家族全員が寝坊して、朝8時半に起きるっていう事件があって、子どもは3人とも遅刻。でも僕のせいなんですよ、僕が二度寝しちゃったから……。その日は1日落ち込みましたね。こんな当たり前のこともできないのか……と思って。

―学校に少し遅刻しちゃっただけですよね(笑)。

曽我部:そういうのがすごくヘコむんですよ。やっぱり他の親御さんが普通にやっていることは、ちゃんとできていたい。ただ、なかなか上手くいかなくて。

曽我部恵一

―自分の無力さを感じる瞬間はあるでしょうね。

曽我部:子育てって、そういうのばかりだと思うんですよ。特に赤ちゃんの頃は思い通りにならなくて、どうしようもない瞬間がたくさんあるから、お母さんが参っちゃうことも多いじゃないですか。そういうのは本当にわかる。赤ちゃんを死なせちゃったとか、無理心中しようとしたっていう事件があるけど、ほんの些細なことがきっかけで、そっち側に振れちゃうんだろうなあって。だからこそ、適当な部分があってもいいんじゃないかと思うんですよね。あんまり「こうあるべき」みたいに、自分に課しちゃうのも良くないなと思って。

―でも、8時半に起きてヘコむくらいなら、曽我部さんもちゃんとやってるという印象ですよ(笑)。

曽我部:8時半はやっぱりへこみますよ。そこから各所に「すみません、ちょっとバタバタしてまして……」って電話して。ほんと毎日やっていることの半分くらいは失敗ですよ。まぁ、そんなことがあっても、晩ご飯を食べるときに、みんなで「いただきまーす!」って言って、こんなことがあったよ、あんなことがあったよ、この人が面白いねとか、そうやってワイワイしているときが最高に幸せ。それがあれば、あとは全部チャラっていうか。

―それは素敵ですね。

曽我部:それがあったらいいかなと思って。今日もこのチームでご飯が食べられたね、良かったねって。

―意外とそれができている家族は少ないのかもしれませんね。

曽我部:ウチはそこくらいしかウリがないんですよ(笑)。

―でも、お話を聞いていると、なんだかんだ楽しそうで。父親ってかっこいいなと思いました。

曽我部:いやぁ、別に子どもがいるから偉いとか、そういうのは全然思わないですけど。

―あえて聞きますが、父親として子どもたちに1つ、これだけは絶対に伝えておきたいなと思うことはありますか?

曽我部:うーん……(1分ほど沈黙)。結局、お前たちを本当に愛してるっていうことだけですよね。それだけは確実なこと。自分の命よりも大切だと思っている人がいるんだよ、っていう。それも直接伝えるんじゃなくて、生きていく中で、そうやって実際に誰かに守られたり、愛された経験が積み重なって、何か大事な力になっていく気がするんですよね。

商品情報
伊右衛門 特茶

「伊右衛門 特茶」は、トクホで初めて脂肪の「分解」というメカニズムに着目した、体脂肪を減らすのを助けるトクホです。

リリース情報
サニーデイ・サービス
『Birth of a Kiss』(CD)

2015年7月2日(木)発売
価格:2,376円(税込)
ROSE-191

1. baby blue
2. 恋におちたら
3. あじさい
4. 恋人の部屋
5. 夜のメロディ
6. シルバー・スター
7. 24時のブルース
8. ふたつのハート
9. 成長するってこと
10. 胸いっぱい
11. 若者たち
12. 東京

サニーデイ・サービス
『Birth of a Kiss』(アナログ2枚組)

2015年7月2日(木)発売
価格:3,996円(税込)
ROSE-191X

[SIDE-A]
1. baby blue
2. 恋におちたら
3. あじさい
4. 恋人の部屋
[SIDE-B]
1. 夜のメロディ
2. シルバー・スター
3. 24時のブルース
4. ふたつのハート
[SIDE-C]
1. 成長するってこと
2. 胸いっぱい
3. 若者たち
4. 東京
[SIDE-D]
1. ここで逢いましょう

サニーデイ・サービス
『Birth of a Kiss』(CD+DVD)

2015年7月2日(木)ROSE RECORDS オンラインショップ限定販売
価格:7,020円(税込)
ROSE-190

[CD]
1. baby blue
2. 恋におちたら
3. あじさい
4. 恋人の部屋
5. 夜のメロディ
6. シルバー・スター
7. 24時のブルース
8. ふたつのハート
9. 成長するってこと
10. 胸いっぱい
11. 若者たち
12. 東京
[DVD]
1. baby blue
2. 恋におちたら
3. 花咲くころ
4. あじさい
5. 雨の土曜日
6. スロウライダー
7. 虹の午後に
8. おせんべい
9. アビーロードごっこ
10. 恋人の部屋
11. 夜のメロディ
12. シルバー・スター
13. NOW
14. 星を見たかい?
15. 24時のブルース
16. ふたつのハート
17. 成長するってこと
18. 胸いっぱい
19. 夢見るようなくちびるに
20. 青春狂走曲
21. いつもだれかに
22. 白い恋人
23. 旅の手帖
24. 若者たち
25. ここで逢いましょう
26. 東京
27. コーヒーと恋愛
ボックス仕様、フォトブック、ポスター、缶バッジ、バックステージパス(レプリカ)入り

プロフィール
曽我部恵一 (そかべ けいいち)

1971年生まれ、香川県出身。ミュージシャン。1994年サニーデイ・サービスのボーカリスト / ギタリストとしてデビュー。2001年よりソロ活動をスタート。2004年、メジャーレコード会社から独立し、東京・下北沢に<ローズ・レコーズ>を設立。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、執筆、CM・映画音楽制作、プロデュースワーク、DJなど、その表現範囲は実に多彩。下北沢で生活する三児の父でもあり、カフェ兼レコード店<CITY COUNTRY CITY>のオーナーでもある。最新作は7月2日発売、サニーデイ・サービス初のライブフルアルバム『Birth of a Kiss』。



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