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自らの最悪の「糞」を身体化する、アンジェリカ・リデルの叫び

自らの最悪の「糞」を身体化する、アンジェリカ・リデルの叫び

インタビュー・テキスト
岩城京子
撮影:相良博昭

老いは、人間にとって最悪の出来事です。老いに美しさなど微塵もありません。

―『フェスティバル/トーキョー15』で11月に上演される『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』についてうかがいます。ここでは『ピーター・パン』のネバーランド、2011年に銃乱射事件があったノルウェーのウトヤ島、そして上海という3つの空間を行き来しながら作品がつむがれていきます。この3つの空間は、どのようなコンセプトでつながっているのでしょうか。

リデル:永遠の少年であるピーター・パンは、小説の最後、老いて醜くなったウェンディに耐えきれず、彼女の娘を連れて冒険に出ていきます。ウトヤ島ではキリスト教原理主義者の犯人が10代と20代の若者を標的にして69人を殺害しました。ウトヤ島での事件の直後に私が訪れた上海では70代の老いた男女が、まるで若さを取り戻そうとするかのように踊りにふけっていました。私にとってこれらはすべて「若さの喪失」を示す出来事です。この世界から若さが消失し、死が押しよせてくる感覚を表しています。そのような若さを失うことへの強迫観念を、私はこの作品で表現したいと思いました。

『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』 ©Ricardo Carrillo de Albornoz

『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』 ©Ricardo Carrillo de Albornoz
『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』 ©Ricardo Carrillo de Albornoz

―強迫観念は、リデルさんの作品にとって重要な要素に見えます。

リデル:私はいつも、ある種の強迫観念から創作を始めます。その心理状況に突き動かされるように、混乱に身を投じ、日記に心情を綴り、そして自分のアンテナに偶然に引っかかってくるものを頼りに創作を進めていきます。ですから、1つの作品が完成するのに、少なくとも1年から2年の歳月を要する。混乱から作品を創造するわけですから、大変な時間と労力を要するわけです。

アンジェリカ・リデル
アンジェリカ・リデル

―「ウェンディ・シンドローム」とは、他人に見捨てられたり、傷つけられたりすることを極端に怖れるあまり、まるで過保護な母親のように周りの人の面倒を見てしまう女性の心理傾向を指す名称です。つまりウェンディとは母性の象徴。なぜそのウェンディを自分で演じてみようと思われたのでしょうか。

リデル:いろいろな場所ですでに語っていますが、私は自分の母親に対して痙攣的な嫌悪感を抱いています。それは死にゆく命である私を産み落とした、母に対しての憎しみです。その憎しみを、私はウェンディに投影しています。母性の象徴であるウェンディは、私にとって憎悪の対象です。ただ私はウェンディに憎悪を抱くと同時に、シンパシーも感じています。彼女はいつも見捨てられる恐怖を抱きながらピーター・パンに接していて、しかも最終的には老いて本当にピーターに捨てられてしまう。その見捨てられたウェンディに、私は自分の姿を重ねることができた。それでウェンディを自ら演じてみようと思ったわけです。

―日本社会は今加速度的に高齢化していて、長い老後をどのように美しく過ごすべきか考える中高年層が増えています。同時に、日本では若さを売りものにするアイドルがもてはやされ、老いに怯える女性が過剰なアンチエイジングに走っています。最後の質問ですが、リデルさんは「美しく老いる」ことは可能だと思われますか。

リデル:老いは、人間にとって最悪の出来事です。死に近づくわけですからね。川端康成の『眠れる美女』では、美しい娘のかたわらで一晩を過ごした老人が、翌朝、自分の老いさらばえた醜さを自覚して森の中で自殺します。この老人のように、老いるということは人に愛されなくなること。ですから、たとえ40歳でもその人が誰にも愛されなかったら、その人は老いてしまったということです。しかも老人というのは、未来において愛される可能性を否定された存在です。たとえ愛される期待や希望を持っていても、その願いが成就されることは決してない。ですから質問にお答えするなら、老いに美しさなど微塵もありません。

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イベント情報

『フェスティバル/トーキョー15』

2015年10月31日(土)~12月6日(日)
会場:
東京都 東京芸術劇場、あうるすぽっと、にしすがも創造舎、アサヒ・アートスクエア、池袋西口公園、豊島区旧第十中学校
埼玉県 彩の国さいたま芸術劇場
ほか

『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』

2015年11月21日(土)~11月23日(月・祝)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 プレイハウス
作・演出・美術・衣裳:アンジェリカ・リデル(アトラ・ビリス・テアトロ)

『フェスティバルFUKUSHIMA!@池袋西口公園』

2015年10月31日(土)、11月1日(日)
会場:東京都 池袋西口公園
総合ディレクション:プロジェクトFUKUSHIMA!、山岸清之進

SPAC - 静岡県舞台芸術センター
『真夏の夜の夢』

2015年10月31日(土)~11月3日(火・祝)
会場:東京都 西巣鴨 にしすがも創造舎
演出:宮城聰
作:ウィリアム・シェイクスピア『夏の夜の夢』(小田島雄志訳)より
潤色:野田秀樹
音楽:棚川寛子

ゾンビオペラ『死の舞踏』

2015年11月12日(木)~11月15日(日)
会場:東京都 西巣鴨 にしすがも創造舎
コンセプト・作曲:安野太郎
ドラマトゥルク:渡邊未帆
美術:危口統之

地点×空間現代
『ミステリヤ・ブッフ』

2015年11月20日(金)~11月28日(土)
会場:東京都 西巣鴨 にしすがも創造舎
作:ヴラジーミル・マヤコフスキー
演出:三浦基
音楽:空間現代

『ブルーシート』

2015年11月14日(土)、11月15日(日)、12月4日(金)~12月6日(日)
会場:東京都 江古田 豊島区旧第十中学校
作・演出:飴屋法水

『God Bless Baseball』

2015年11月19日(木)~11月29日(日)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
作・演出:岡田利規

富士見市民文化会館 キラリふじみ『颱風奇譚 태풍기담』

2015年11月26日(木)~11月29日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
作:ソン・ギウン
演出:多田淳之介

『地上に広がる大空(ウェンディ・シンドローム)』

2015年11月21日(土)~11月23日(月・祝)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 プレイハウス
作・演出・美術・衣裳:アンジェリカ・リデル(アトラ・ビリス・テアトロ)

パリ市立劇場『犀(サイ)』

2015年11月21日(土)~11月23日(月・祝)
会場:埼玉県 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
作:ウジェーヌ・イヨネスコ
演出:エマニュエル・ドゥマルシー=モタ

ギンタースドルファー/クラーセン

『LOGOBI 06』
2015年11月26日(木)~11月29日(日)
会場:東京都 浅草 アサヒ・アートスクエア

ゲーテ・インスティトゥート韓国×NOLGONG

『Being Faust - Enter Mephisto』
2015年11月19日(木)~11月22日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト

アジアシリーズ vol.2 ミャンマー特集
『ラウンドアバウト・イン・ヤンゴン』

2015年11月13日(金)~11月15日(日)
会場:東京都 浅草 アサヒ・アートスクエア
構成・出演:ティーモーナイン
演出・出演:ニャンリンテッ
音楽・出演:ターソー

プロフィール

アンジェリカ・リデル

作家、演出家、俳優。1966年スペイン生まれ。アーティストネームである「リデル」は、ルイス・キャロルの小説『不思議の国のアリス』のモデルであるアリス・リデルからとられた。1993年にアトラ・ビリス・テアトロを設立。個人の意識や魂の奥底を見つめ、性、死、暴力、権力、狂気、宗教にひそむ人間の深部から人間や社会をとらえる作品を作り続けている。混沌と美が共存する詩的かつ過激な舞台は、2013年オープニングを飾った『ウィーン芸術週間』を始め、『アヴィニョン演劇祭』、パリ・オデオン座などヨーロッパの主要なフェスティバルや劇場で上演され、現代演劇シーンにおいて常に高い注目を集めている。2012年、『La casa de la fuerza』で『スペイン劇文学国家賞』を受賞。また、2013年には『ヴェネチィア・ビエンナーレ国際演劇祭』において『銀獅子賞』を受賞

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