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コンプレックスを受け止めた音楽家・KASHIWA Daisukeの歩み方

コンプレックスを受け止めた音楽家・KASHIWA Daisukeの歩み方

KASHIWA Daisuke『program music II』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:小見山峻 編集:柏井万作
2016/04/27

クオリティーの高い作品を作るために重要なのは理論なのか? それとも、理論を知らないまま自由に作るからこそ爆発力のある作品が生まれるのか? そんな問いはこれまでに何度も繰り返されてきたが、もちろん明快な答えを出すことはできない。

エレクトロニカ系のアーティストとして出発し、坂本龍一も賛辞を寄せるなど、アカデミックなイメージもあるKASHIWA Daisukeだが、実際には工学部の出身で、音楽学校で理論を学んできた音楽家に対してコンプレックスもあったという。しかし、自身の欲求に従って作品を作り続けるなかで、徐々に自らの進む道を見出していった。

そんなKASHIWAの最新作『program music II』は、たむらしげるの著書『水晶山脈』にインスパイアされ、生楽器のアンサンブルを中心に構成された作品。ソロ活動のスタートからは今年で10年。その変遷と、今も変わらないもの作りに対する意欲の源泉について話を訊いた。

「アーティスト自身がひとつの作品」みたいな、いろんなアルバムを全部ひっくるめた上で、ひとつの作品になるって感じが好きなんだと思います。

―今作『program music II』は、2007年に発表された『program music I』の続編であり、ジャケットにもなっているたむらしげるさん(絵本作家・イラストレーター)の著書『水晶山脈』にインスパイアされて作られた作品だそうですね。

KASHIWA:以前『88』っていうピアノアルバムを出してるんですけど、ピアノだけではなく、いくつか生楽器を加えて作品を作りたいっていうのがスタートでした。それを作っているうちに、何となくのテーマが見えてきて、それが僕が昔からずっと好きだったたむら先生の『水晶山脈』につながっていると気付いて、アルバムのストーリーが一気に出来上がりました。

KASHIWA Daisuke
KASHIWA Daisuke

―なぜ今回生楽器をフィーチャーしようと思ったのでしょうか?

KASHIWA:歳をとってきたせいなのか、生楽器の自然な音に心惹かれるようになってきたんですよね。若い頃は、生楽器を演奏せず、ソフトで音楽を操れることが刺激的だったんですけど、それよりもっと有機的な、田舎に行って自然の風景を見たときに「綺麗だな」って思ったり、自分の心が癒される、そういう感覚を音にしたかったんです。まあ、誰しもいろんな時期があると思うんですけど、たまたま今回は自分のベクトルがそういう自然な、ナチュラルな方に向いたっていうことですね。

―たしかに、KASHIWAさんは「エレクトロニカ」のイメージも強いとはいえ、これまでも電子音楽と生楽器の音楽を幅広く作ってこられて、作品ごとに変化し続けていますよね。

KASHIWA:そうですね。もともとプログレとかQUEENなどに影響を受けているので、どのアルバムを聴いても「この人だよね」っていう固有のサウンドがあるより、「アーティスト自身がひとつの作品」みたいな、いろんなアルバムを全部ひっくるめた上で、ひとつの作品になってる感じが好きなんだと思います。

―『水晶山脈』はいつ頃からお好きだったんですか?

KASHIWA:20代後半で知って、本を買ったんですけど、それ以前にたむら先生のことはCMや映画で知ってたんです。子供の頃、ハウスのシチューのCMで、街が下にあって、その上が水面になってて、そこを船が行くっていう、それがもともとすごく印象に残ってたんですよね。

―『program music I』は『銀河鉄道の夜』と『走れメロス』がモチーフになっていましたが、KASHIWAさんは何らかの物語からインスパイアされることが多いのでしょうか?

KASHIWA:それはあんまり意識はしてなくて、単純に、何か面白いことをやりたいっていうのが常にあるんです。『program music I』について言うと、普通本とか映像とか物語があって、後からそれに音楽をつけるのが一般的なやり方ですよね? でもそうじゃなくて、音楽のみでその物語を表現してみたらどうなんだろうと思ったんです。

―サントラではなく、あくまで独立した作品として作ったと。

KASHIWA:そうですね。音楽自体から物語を想像させるようなものが作れたらすごく面白いんじゃないかなって。原作を知ってる人が聴いて、「そうそう」って思ってくれてもいいし、まったく知らない人が聴いて、「こういうストーリーなのかな」って想像してもいい。その物語を僕の解釈として音で表現するっていうことがやりたかったんです。

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リリース情報

KASHIWA Daisuke『program music II』
KASHIWA Daisuke
『program music II』(CD)

2016年4月23日(土)発売
価格:2,376円(税込)
Virgin Babylon Records / VBR-030

1. crystal valley
2. meteor
3. city in the lake
4. blue beryl
5. airport
6. cluster gear
7. subaru
8. like a starhead

プロフィール

KASHIWA Daisuke(かしわ だいすけ)

学生時代、プログレッシヴ・ロックに影響を受け作曲を始める。 2004年にkashiwa daisukeとしてソロ活動を開始し、2006年にドイツのレーベルonpaより1stアルバム『april.#02』をリリース。 翌年8月、nobleレーベルより2ndアルバム『program music I』を発表。 2008年9月には、大型野外フェスティバルSense of Wonderに出演。 2009年2月、3rdアルバム『5 Dec.』をnobleよりリリース。 同年6月にはヨーロッパ3ヶ国8都市を廻るツアーを敢行し、世界三大クラブと呼ばれるベルリンのクラブ、BerghainではCLUSTERと共演し、旧ソ連軍の秘密基地跡で毎年開催されるドイツ最大級のフェスティバルFusion Festival 2009にも出演。 2010年4月、マカオ、香港を巡るアジアツアーを行う。 自身の創作活動の他、様々なメディアへの楽曲提供、作家、リミキサー、マスタリングエンジニアとしても活動している。

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