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蟻、音楽やBBSを用いた「相談所」で人々の悩みをひっくり返す

蟻、音楽やBBSを用いた「相談所」で人々の悩みをひっくり返す

mushifuru project キミノオルフェ『1st LIVE CONCERT Le Salon』
インタビュー・テキスト
矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
撮影:田中一人

自分のために生きるのか? 誰かのために生きるのか? そのふたつを天秤にかけたとき、どちらに傾くかは、年齢を重ねるごとに変わっていくような気がしている。「誰かのため」こそが、自分の幸せに繋がると気づけたのなら、そしてそれ以前に、自分のことをちゃんと愛せるようになれたのなら、生きる原動力は、一回りも二回りも大きくなるのかもしれない。

この記事の主人公は、今年の2月6日に解散したバンド「蟲ふるう夜に」にて、ボーカルを務めていた「蟻」。解散ライブの日から約4か月間、彼女は沈黙を保っていたが、先日新たに始動するプロジェクトが発表された。その名は「キミノオルフェ」。これは、音楽やアートの持つ「救い」や「浄化」という効能を最大限に活用しながら、悩みを抱えて苦しんでいる人たちを守る「コミュニティー」になるだろう。

2007年のバンド結成時は、自分の不幸を叫び散らかすかのように歌っていた蟻だが、今は「誰かのために」、自分の精神力と創造力を使うと決めた。彼女はなぜそこまで舵を切ることができたのか? 「キミノオルフェ」として発信される作品や、ここで語られている言葉が、今何かに迷っている人にとって道標となることを願って。

這い上がろうとしている人たち、ドロドロとした沼で足掻いている人たちのためになればいいなと思っています。

―まず、新たに始める「キミノオルフェ」の活動内容についてお伺いさせてください。

:「オルフェ」というのはギリシャ神話に出てくる吟遊詩人なんですけど、「リスナーにとってのオルフェになっていくよ」というのがコンセプトです。Twitterや、これから開設する鍵付きの一対一のBBSで、リスナーから悩みとか物語を募集して、それを元に作った曲とイラストをホームページで発表していこうと思っています。

5月21日にオープンした、「キミノオルフェ」公式サイト。新曲2曲が試聴できる
5月21日にオープンした、「キミノオルフェ」公式サイト。新曲2曲が試聴できる

―蟻さんを中心としたひとつのコミュニティーが、「キミノオルフェ」のホームページ上で形成されていくイメージ?

:そうですね。昔、前略プロフィール(2000年代後半に流行したウェブページ作成サービス)をやっていたんですけど、そこにBBSを置いて、みんなで何でもないことで盛り上がったり、悩み相談をしたりしていたんです。当時めちゃくちゃ暗かった自分も、そこでは「同じようなことを考えている人がいる」と思えたんですよね。

蟻

―前略プロフィールとキミノオルフェの違う点は、そこに書き込まれた想いを、蟻さんが歌や絵に変えていくというところですよね。具体的に、どういう人の悩みや物語を形にしていきたいと考えていますか?

:もともと私がすごく弱い存在で、「自分は不幸になるために生まれてきたのか」と思い込んでいたくらいだったんですよね。でも、そこから這い上がってきた自信が、今はあるんです。だから、「自分はもっと幸せになれるはずなのに」と思いながら這い上がろうとしている人たち、ドロドロとした沼で足掻いている人たちのためになればいいなと思っています。沼が心地いいと思っている人もいると思うんですよ。「ああ、辛いな」って言いながらも、そこから出たくない人たちにとっては、いつか私の手が必要になったときに差し出せたらなと思う。

―蟻さんがかつて「沼」にいた背景には、何があったんですか?

:周りの環境にも恵まれなかったというか……父親のことは大好きだったんですけど、世間的に言えばろくでもない人で、小学校のときに両親が離婚して。お金がなかったから、公園に寝泊まりするとか、ふらふら放浪していたときもあったりして……世界中で一番不幸なんじゃないかって本気で思ってたんですよ。だけど、まあ、そんなことないんですよね(笑)。

蟻

―そうやって笑いながら「そんなことないんですよね」と言えるようになったのは、大きな変化ですよね。蟻さん自身はどうやって沼から抜け出せたのでしょう?

:蟲ふるう夜にが今の事務所に入って、活動が広がってきたこともあると思います。あと、アドラー心理学のことを書いた『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健。2013年刊行)を読んだのは、私の中で結構大きかったです。あの本を読んで、過去に縛られて、トラウマの中で生きていた自分を確認したんですよね。不幸を原動力にしながら、音楽活動をやっていたんだなって。でもそれって、短期的な力にはなるんだけど、それでずっと走り続けるのは無理なんですよ。

―「不幸」や「苦しみ」が創作のモチベーションのひとつになる、ということはよく言われることだったりもしますけどね。

:でも、不幸になるために創作をやってるわけじゃないですよね。それに、不幸になればいいものがたくさんできるのかっていうと、そうではないし。あとは、ボイストレーナーの佐藤涼子先生と出会ったことで、膿が出ていくような感じがありました。先生に、「あなたは人を浄化させるために歌ってるんでしょう。歌うことしかないんでしょう」と言われて、「自分にやれることがもう既にあったんだ」って気づけたというか。そうやって自分で自分に納得できることが徐々に蓄積されたことで、「自分には何もない」という想いから抜け出せたんだと思います。

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イベント情報

mushifuru project キミノオルフェ『1st LIVE CONCERT Le Salon』

2016年6月4日(土)OPEN 15:30 / START 16:00
会場:東京都 恵比寿 ザ・ガーデンルーム
料金:一般3,500円 プレミアムチケット6,400円 ペアチケット9,900円

プロフィール

キミノオルフェ

2016年2月6日に活動を終了し「蛹化」した”蟲ふるう夜に”。そのVo.蟻が“「キミのための吟遊詩人」になる”というテーマを掲げて始動させるmushifuru projectの第一弾。オルフェとはギリシャ神話に登場する吟遊詩人。“蟲ふるう夜に”では自分の弱さや痛みを浄化し、強さと希望に変える歌を歌っていた蟻が、“キミノオルフェ”では他人の悩みや想いを昇華するため、楽曲と絵画による物語をつくり、届けていく。

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