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深く雑多な音楽愛好家Kidori Kidori推薦、悩みながら躍る10曲

深く雑多な音楽愛好家Kidori Kidori推薦、悩みながら躍る10曲

Kidori Kidori『フィールソーグッド e.p.』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:山元翔一

「ロックンロールは俺たちを苦悩から解放してもくれないし、逃避させてもくれない。ただ、悩んだまま躍らせるんだ」。これはTHE WHOのギタリスト、ピート・タウンゼントによる名言だが、Kidori Kidoriの新曲“フィールソーグッド”は、まさにこの言葉を体現するかのような一曲である。昨年8月に新メンバーを迎え、新編成一発目ならではの勢いあるバンドサウンドを鳴らす一方、歌詞に目を移せば<気づいたんだ この場所はどうも 行くあてなんてないこと>と、見事に引き裂かれている。しかし、「これが生きるということなんだ」と、彼らはあくまで軽やかに、チャーミングに告げているのだ。

今回はフロントマンのマッシュに新作『フィールソーグッド e.p.』についての話を訊くとともに、Apple Musicを使って、「フィールソーグッドな10曲」のプレイリストを作ってもらった。「おすすめした音楽をいいと思ってもらえるような、音楽好きのミュージシャンでありたい」という言葉を裏付ける、洋邦・年代問わない選曲は非常に興味深く、現在のKidori Kidoriのモードが透けて見えると同時に、文字通り「フィールソーグッド」な気分になれる10曲が並んでいる。サウンドから、歌詞から、ジャケットから、豆知識から、ぜひこのプレイリストを楽しみ尽くしてほしい。

Apple Musicでプレイリストを開く

いまってCDが売れないとか悲しい話題が多いけど、「音楽、楽しくない?」っていうところが何より大事だと思うんです。

―前作『![雨だれ]』はメンバーの脱退などを受けての内省的な作風でしたが、その後に新メンバーが加入し、現在は文字通り「フィールソーグッド」な状態にあるのでしょうか?

マッシュ:いまのバンドの状態はフィールソーグッドだと思います(笑)。「二人でバンドって言うのもどうなのかな」っていう違和感がちょっとあったんですけど、三人になって、空気感もすごくいいし、いまはバンドをやっていて楽しいですね。

マッシュ
マッシュ

―藤原寛さん(AL / ex.andymori)をはじめ、何人かサポートを迎えてきたなかで、汐碇さんがメンバーになったのは何がポイントだったのでしょうか?

マッシュ:こう言うとちょっと馬鹿っぽいですけど、ガッツがあるんですよ(笑)。音には人間性とかそのときの気持ちが絶対に宿ると思っていて、一緒にやっていくなかで、彼にはそれがすごく見えたんですよね。前に頑張っていたバンド(BAND A。2015年5月に解散)が解散しても、地元に帰らずに、東京でまたバンドをやるって、ガッツがあるなって。

―新作の表題曲の“フィールソーグッド”はアップテンポのナンバーで、改めてバンドになったいまの三人の衝動が表れていると言えますか?

マッシュ:そういう気持ちもありました。あと、今回はアルバムを見据えて作ったEPなので、先にざっくりしたアルバムのコンセプトがあって、そこに向かって曲を作っていったんです。そのなかで一番勢いがあったのがこの曲で、三人組になって一発目に発表する曲としてドンピシャかなって。リフをめっちゃ繰り返しているんですけど、そこはがむしゃら感を意識していて、歌詞の描写も走っている感じにして、疾走感を出すことを狙いました。

―現状、アルバムはどんなイメージなのでしょうか?

マッシュ:前作は、「東京から大阪を見たときの郷愁」というコンセプトで作ったアルバムだったんですけど、次は「東京にいて東京を見ている」というか、この先を見ている感じの作品にしたくて。その視点の違いと、それに伴う人間的な変化が出るんじゃないかと思います。

―“フィールソーグッド”の歌詞はタイトルに反してやや内省的な雰囲気ですが、これもアルバムとのリンクがあるわけですか?

マッシュ:そうですね。「東京にいる」ということをもう一歩掘り下げると、「大人になる」ってことだと思ったんです。「大人になる」ということは、つまり「ものを知る」ということで。おじさまリスナーが「最近のロックは面白くない」ってよく言うけど、それは単に刺激に慣れてしまっただけで、若い子が聴いたらいまのロックも十分刺激的だと思うんです。そんなふうに、大人になると純真さがなくなっていく気がして、そういうこともアルバムのテーマになるのかなって。

―なるほど。

マッシュ:今回の歌詞もそういったこととリンクしつつ、グルグル回っている様子というか、結論に達するのが難しいテーマのなかを走り続けているイメージがあって。そういう「悩みながら走る」みたいな感じが反映されていると思います。

―「悩みながら走る」ことを、フィールソーグッドだと感じている?

マッシュ:いまってCDが売れないとか悲しい話題が多いけど、「音楽、楽しくない?」っていうところが何より大事だと思っていて。悩みなんて常にあるし、誰だって家に帰ったら暗いんじゃないかと思うんですよ。それでも、音楽は楽しいし、楽しくしていきたいから、そういう意味を込めての「フィールソーグッド」なんです。

マッシュ

―この「フィールソーグッド」をもう少し噛み砕いて説明できますか?

マッシュ:人間、いくら悩んだところで、結局ポジティブに落とし込むしかないと思うんですよ。そうでなければ、究極的なことを言うと、死ぬしか選択肢がないんじゃないかなって。だからこそ、「楽しい」っていう気持ちを大事にしたい。THE WHOのピート・タウンゼントが、「ロックンロールは俺たちを苦悩から解放してもくれないし、逃避させてもくれない。ただ、悩んだまま躍らせるんだ」って言っていましたけど、俺が思う「フィールソーグッド」は、まさにこの「悩みながら躍らせる」ものなんです。

―もうちょっと踏み込んでお訊きしたいんですけど、マッシュさんの考える「フィールソーグッド」の定義には「逃避」と呼ばれるようなものは含まれるんでしょうか?

マッシュ:逃避的なものを俺はずっと追い求めていると思うんですよね。なんせ俺、自由になりたくて音楽をやっているんで。でも今のモードはむしろ、ずっと逃げてきたものを追い求めているくらいの感覚なので、逃避的な意味合いは薄いですね。ずっと逃げてきて、遠くに来てしまったことに気づいたことで危機感を感じているというか。そういうモードですね。

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リリース情報

Kidori Kidori『フィールソーグッド e.p.』
Kidori Kidori
『フィールソーグッド e.p.』(CD)

2016年6月8日(水)発売
価格:1,296円(税込)
HIP LAND MUSIC / Polka Dot records / RDCA-1043

1. フィールソーグッド
2. ハッピーアワー
3. 東京
4. 東京ラッシュ

イベント情報

『Kidori Kidori presents まともなイベント vol.9 ~「フィールソーグッドe.p.」レコ発編~』
2016年6月24日(金)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京都 新代田 FEVER
出演:
Kidori Kidori
and more

2016年7月1日(金)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:大阪府 心斎橋 Pangea
出演:
Kidori Kidori
OGRE YOU ASSHOLE

料金:各公演 前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

プレイリスト

『Kidori Kidoriと選ぶ、不安を肯定するフィールソーグッドな音楽』

・THE BEACH BOYS“Sloop John B”
・BEACH HOUSE“Space Song”
・マック・デマルコ“Blue Boy”
・CORNELIUS“STAR FRUIT SURF RIDER”
・THE WILD TCHOUPITOULAS“Hey Pocky a-Way”
・Dr.John“Right Place Wrong Time”
・アラン・トゥーサン“Southern Night”
・THE ROLLING STONES“Miss You”
・ハービー・ハンコック“Riot”
・OGRE YOU ASSHOLE“夜の船”

プロフィール

Kidori Kidori
Kidori Kidori(きどり きどり)

2008年、地元・大阪は堺の幼なじみであった、マッシュ(Vo,Gt)、川元直樹(Dr,Cho)、ンヌゥ(Ba)の三人によって、「キドリキドリ」結成。2013年7月、バンド名の表記を「キドリキドリ」から「Kidori Kidori」へ変更する。2014年1月に、活動の拠点を大阪から東京に移すことを発表。3月上旬、オリジナルメンバーであったンヌゥが失踪の末、精神疾患を患っていることが発覚し、療養のため脱退する。2015年2月に、エッジのある英語詞ロックという今までのバンドイメージを覆す、日本語新曲と洋楽カバーで構成されたEP『El Urbano』をリリース。そして、2015年6月3日に『![雨だれ]』を発売。同年8月にベーシストの汐碇真也が正式メンバーとして加入。2016年6月、新体制初リリースとなるEP『フィールソーグッド e.p.』をリリースする。

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