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深く雑多な音楽愛好家Kidori Kidori推薦、悩みながら躍る10曲

深く雑多な音楽愛好家Kidori Kidori推薦、悩みながら躍る10曲

Kidori Kidori『フィールソーグッド e.p.』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:山元翔一

もう一度ロックに感動することができないのなら、この先音楽をやっていけないって思った。

―では、ここからは1970年代のニューオーリンズものにいきましょうか。まずはTHE WILD TCHOUPITOULAS。

THE WILD TCHOUPITOULAS『Wild Tchoupitoulas』
THE WILD TCHOUPITOULAS『Wild Tchoupitoulas』

マッシュ:一時期、俺のなかでニューオーリンズブームがあったんですけど、ディスクガイドを眺めていて、この一際派手なジャケットがずっと気になっていたんです。実際にレコ屋で見つけて買って聴いたらめっちゃよくて。俺は特にこの時代の音が好きで、“Hey Pocky A-Way”はベースラインもかっこいいんです。ブラックミュージックの方にいきたいモードになったのはここからなんですよね。

―このアルバムにはTHE METERS(ニューオーリンズのR&Bバンド)とアラン・トゥーサンがプロデューサーとして関わっていて、Dr.Johnの『In The Right Place』(1973年)にも同じメンバーが関わっていますね。

マッシュ:Dr.Johnの“Right Place Wrong Time”は「売れる曲を書け」って言われて書いた曲らしいんですけど、俺にはこれがめっちゃ響きました(笑)。鍵盤の音がかっこいいし、管楽器の入り方もセクシーだし、やっぱりこの時代の音が好き。アラン・トゥーサンはわりと最近聴いたんですけど、「かっこいい」とかじゃなくて、もっと上の次元で感動して、「俺、まだ感動できるんだな」って思いました。ニューオーリンズものってちょっとかわいくて、そういう部分も好きなんですけど、アラン・トゥーサンの“Southern Nights”は本当にきれいで、これを聴いて「ニューオーリンズものはこれでおしまい!」って思ったんです。

Dr.John『In The Right Place』
Dr.John『In The Right Place』

―それから、「俺たちはロックバンドだ」ってモードに切り替わるわけですか?

マッシュ:ちょっとロックに飽きた時期があったんですよ。そこから、ワールドミュージック(世界各地の様々な様式の音楽を包括するジャンル)やジャズ、ブルースを聴いてみて。そういう変遷がありつつも、もう一度ロックに感動することができないのなら、この先音楽をやっていけないって思ったんですよね。それでいろいろ聴いてみて、「ロックもいいやん」って思えて、音楽を続けるモチベーションを保てたんですよ。

―なるほど。

マッシュ:そこで取り上げたいのがTHE ROLLING STONESで。さっきも話したように、ブラックな音に惹かれつつも、俺らは「ロックバンド」ですから、「じゃあ、お得意のミクスチャーだ」ということで、ディスコミュージックに目をつけました。ディスコはブラックミュージックとロックの隙間の音楽なんですけど、今回選んだ“Miss You”もディスコなんですよ。ロックバンドとして「いまやるべきことはこれだ」って思いましたね。この曲が入っている『Some Girls』(1978年)ってアルバムは、パンクっていう新しい音楽が出てきたことによってロックバンドが古いものとみなされはじめていたなか、当時流行っていたパンクやディスコを取り入れて、「俺たちまだ若いぜ」って頑張ったアルバムなんですよ。

―さっき言ってたD'Angeloとかはもうceroがやってるわけで、そこじゃないところにいくのがKidori Kidoriらしいですね。くるりとかにしても、「いまそこ行くんだ?」みたいなのが面白いし。

マッシュ:同じようなディスコ路線でも、いまデヴィッド・ボウイの『Let's Dance』をあえて持ってこないのが俺たちらしいのかなって(笑)。デヴィッド・ボウイもPrinceも今年亡くなっちゃいましたけど、彼らをこの企画で「追悼で選びました」なんて言ってもね。「追悼」というのはそういうことではないと思うので。

「自分がある」っていうことがすごく大事で、「あれっぽいね」で終わっちゃう曲を書いてもしょうがない。

―そして、今回のリストのなかで一番異質なのがハービー・ハンコックだなと。

マッシュ:この人も「何でも大好き」「新しいもの全部やるぜ」みたいな、愛らしいミュージシャンなんですよね。ジャズで言うと、ロバート・グラスパーとかを持ってきた方がいまっぽいとは思うけど、トレンドリスナーだと思われるのも嫌なんで(笑)。でも、ハービーは本当に好きで、“Riot”を聴いたときの感動はいまでも聴くたびによみがえってきます。ジャズにおける自分の基準とも言えるし、単純に聴いていて気持ちいいなって思いますね。

ハービー・ハンコック『Speak Like A Child』
ハービー・ハンコック『Speak Like A Child』

―そして、最後が7月に対バンも決まっているOGRE YOU ASSHOLEです。

マッシュ:オウガも音楽が好きなミュージシャンで、そういう自分が理想的だと思うミュージシャンの先輩のなかでも、比較的歳が近いんです。『homely』でゆらゆら帝国の制作チームと関わり始めて、ガラッと変わって。その次のアルバムの『100年後』に入っていた“夜の船”を聴いて、「めっちゃいい!」ってなりましたね。ライブは何度も観ているんですけど、邦楽でそういうバンドってほとんどいなくて、一緒にライブができるのは本当に嬉しいです。なおかつ、この曲は<正しい場所 間違った時間>って歌っているんですよね。

―Dr.Johnの“Right Place Wrong Time”からの引用だと。オウガもこういうピンポイントの引用はあるけど、何かの真似をしているわけじゃなくて、いろいろ音楽を聴きまくって、その感覚だけを引用するというか、「じゃあ、自分は何を作ろうか」っていう、そういう影響の受け方をしているところがいいですよね。Kidori Kidoriもきっとそうだと思うし。

マッシュ:ありがとうございます。でも本当にそうで、じゃないと、やっている意味がないと思うんですよ。「~になりたい」って思うことはピュアな動機で、それも間違ってないとは思うけど、ジミ・ヘンドリックスはジミ・ヘンドリックスを聴いてジミ・ヘンドリックスになったわけじゃない。つまり、憧れではなく、自分の「フィルター」、自分の「価値判断の基準」、何より自分の「アウトプット」がある。ちゃんと「自分がある」っていうことがすごく大事で、「あれっぽいね」で終わっちゃう曲を書いてもしょうがない。ちゃんと作っている人間の顔が見える……って言うと、野菜みたいだけど(笑)。

マッシュ

―せっかくいいこと言ってたのに(笑)。

マッシュ:関西人なんで、つい言っちゃうんですよ(笑)。とにかく、曲を聴いて、「こういうやつなんじゃないか」って思ってもらえるような音楽を作りたいし、それでみんなが楽しくなったり、感動を覚えてもらえれば、それが何より嬉しいですね。

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リリース情報

Kidori Kidori『フィールソーグッド e.p.』
Kidori Kidori
『フィールソーグッド e.p.』(CD)

2016年6月8日(水)発売
価格:1,296円(税込)
HIP LAND MUSIC / Polka Dot records / RDCA-1043

1. フィールソーグッド
2. ハッピーアワー
3. 東京
4. 東京ラッシュ

イベント情報

『Kidori Kidori presents まともなイベント vol.9 ~「フィールソーグッドe.p.」レコ発編~』
2016年6月24日(金)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京都 新代田 FEVER
出演:
Kidori Kidori
and more

2016年7月1日(金)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:大阪府 心斎橋 Pangea
出演:
Kidori Kidori
OGRE YOU ASSHOLE

料金:各公演 前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

プレイリスト

『Kidori Kidoriと選ぶ、不安を肯定するフィールソーグッドな音楽』

・THE BEACH BOYS“Sloop John B”
・BEACH HOUSE“Space Song”
・マック・デマルコ“Blue Boy”
・CORNELIUS“STAR FRUIT SURF RIDER”
・THE WILD TCHOUPITOULAS“Hey Pocky a-Way”
・Dr.John“Right Place Wrong Time”
・アラン・トゥーサン“Southern Night”
・THE ROLLING STONES“Miss You”
・ハービー・ハンコック“Riot”
・OGRE YOU ASSHOLE“夜の船”

プロフィール

Kidori Kidori
Kidori Kidori(きどり きどり)

2008年、地元・大阪は堺の幼なじみであった、マッシュ(Vo,Gt)、川元直樹(Dr,Cho)、ンヌゥ(Ba)の三人によって、「キドリキドリ」結成。2013年7月、バンド名の表記を「キドリキドリ」から「Kidori Kidori」へ変更する。2014年1月に、活動の拠点を大阪から東京に移すことを発表。3月上旬、オリジナルメンバーであったンヌゥが失踪の末、精神疾患を患っていることが発覚し、療養のため脱退する。2015年2月に、エッジのある英語詞ロックという今までのバンドイメージを覆す、日本語新曲と洋楽カバーで構成されたEP『El Urbano』をリリース。そして、2015年6月3日に『![雨だれ]』を発売。同年8月にベーシストの汐碇真也が正式メンバーとして加入。2016年6月、新体制初リリースとなるEP『フィールソーグッド e.p.』をリリースする。

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