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あなたはどっち派?社会と自分の関係性 ぬQ×アベキヒロカズ対談

あなたはどっち派?社会と自分の関係性 ぬQ×アベキヒロカズ対談

川崎市市民ミュージアム『&(アンパサンド)がカタチをひらくとき』
インタビュー・テキスト
飯嶋藍子
撮影:豊島望

アベキヒロカズの仕事のスタイルは「相手が持っているものを深く引き出す」

アベキ:僕は、与えられたテーマについて割と勉強します。歴史などを調べる場合だと、現地に行って図書館の郷土資料を読みあさったり、地域の物知りおじいさんを訪ねたり。そうやって一次情報を得ると、「本に書いてあることと意外と違うぞ!」とか新たな発見がある。何も知らないで作品に取り組むのは嫌なので、そういう体験を大事にしたいんです。

―現地にまで赴いて深堀りしていくんですね。

アベキ:集合知というか、みんなが深層心理で理解できるものに到達したいっていうのがあって。たとえば以前、星新一さんの展覧会のレセプションの招待状をデザインしたんですけど、封筒って航空便ならエアメールだし、船便ならシーメールじゃないですか。そこで、星さんだから封筒にスターメールと書いたんです。そういうしるしをつけたことで、これは星さんからの手紙でもあるし、文字通りどこか遠い星からの手紙でもあるように思える。それってデザインどうこうというより、粋というか、集合知をくすぐられる感じがするんですよね。

『星新一展』レセプションの招待状『スターメール』
『星新一展』レセプションの招待状『スターメール』

―情報が繋がる気持ちよさみたいなものがありますよね。そういう深層心理を利用するのが、アベキさんのひとつの方法論なんですね。

アベキ:もうひとつ大切にしていることがあって、僕は学生時代にメディアアートを学んでいて、その時に「Media is message」という言葉を教わったんです。誰かに「好き」と、たった2文字を伝えるだけでも、それを直接言うのか、手紙、メール、LINE、どの媒体を使うかで伝わり方が全く違う。それが自分の創作の原点にあって、紙を選ぶときにも「どういうメッセージにしたいのか?」ということを考えます。だから僕は「グラフィックデザイナー」を名乗ってはいるけれど、常に新しいメディアを作っているという意気込みでやっているんです。

『&(アンパサンド)がカタチをひらくとき』 / 柳川智之+大原崇嘉の出展作品。色彩理論を応用し、イメージの「見え」の強さから画面を再構成する。
『&(アンパサンド)がカタチをひらくとき』 / 柳川智之+大原崇嘉の出展作品。色彩理論を応用し、イメージの「見え」の強さから画面を再構成する。

『&(アンパサンド)がカタチをひらくとき』 / 大原崇嘉の出展作品。文字のスペーシングを通してレイアウトにおける視覚的な法則性を探求している。
『&(アンパサンド)がカタチをひらくとき』 / 大原崇嘉の出展作品。文字のスペーシングを通してレイアウトにおける視覚的な法則性を探求している。

―対象物とじっくり対話していくんですね。そこにはアベキさんらしい社会との間合いがあるのでしょうか?

アベキ:そうですね。作品を見ていただくとわかるんですけど、僕には「アベキヒロカズ風」というものってはっきりとはなくて、よくも悪くも統一感がない。そこには自分の姿勢が表れていて、僕はプロジェクトを自分の作風にねじこむよりも、プロジェクトごとにそれぞれのあるべきかたちを考えたいんです。相手が持っているものを深く引き出す中で、自分の知らない自分に出会えるというところに、面白みを感じています。でも、やっぱりぬQさんが持っているような発想の突破力にはめちゃくちゃ憧れますね(笑)。

対するぬQのスタイルは……「ウケるな~」&「マイブーム」

ぬQ:私は、対象物に対しては、なんか「ウケるな~」って気持ちを大切にしています(笑)。それぞれ笑いのテイストの好みはあっても、笑うこと自体が嫌いな人っていないと思うんです。笑いっていうのは喜びの表現だから。面白いものとかくだらないものを見たり、作ったりするのがすごく好きで、それが私の喜びなんです。

ぬQ

アベキ:「ウケるな~」って大事ですよね。ぬQさんは作品の具体的なアイデアはどういったところから着想するんですか?

ぬQ:実際に日常で目にしたことから色々想像を膨らませますね。今回出展する『カゼノフネ公園』は、昨年の映画祭中に行ったモエレ沼公園(北海道)での思い出を元に、自分なりに公園を作るというテーマで制作した新作です。 また、今年の頭にあったSMAPの解散騒動からもインスピレーションを受けています。私たちは転職の権利があって、SMAPもSMAPをやめる権利があるという当然のことに改めて気づかされました。このニュースの衝撃が大きかったので、キャラクターのコスチュームを中居(正広)くん風にしたんです。

ぬQの新作『カゼノフネ公園』。ぬQの作品にいつも登場するキャラクター、最果一郎(左)と玉川ふたこ(右)
ぬQの新作『カゼノフネ公園』。ぬQの作品にいつも登場するキャラクター、最果一郎(左)と玉川ふたこ(右)

―コスチュームがポイントなんですね。

ぬQ:私は、スターシステム(ひとりのスター役者がいろいろな役を演じるように、作品が変わっても特定のキャラクターを起用する様式)を採用して、毎作同じキャラクターを使っているので、コスチュームにトレンドを入れるんですよ。

―ぬQさんのキャラクター、もともとサングラスをかけていませんでしたっけ?

ぬQ:もともとかけてます。それも、2009年に映画『アバター』が公開されて3D映画が流行ったからなんです。3Dって昔からあったのに、急にみんながあのメガネをかけて映画を見る風景が、すっごいおかしくて、これはもう入れようと思って(笑)。

左:ぬQ

アベキ:それも「ウケるな~」みたいな気持ちが出発点になっているんですね。

ぬQ:そうそう。作品は、日記みたいな、自分の生きた証でもあるから、毎作そのときのマイブームを投入するんです。アベキさんの場合はクライアントワークだと、マイブームを入れるのは難しいんですかね?

アベキ:今まであんまりそういう発想がなかったかもしれません。でも、そういう瞬発力って大事だと思います。僕はそのテーマにひそんでいるものを大事にしすぎる傾向があるから、ぬQさんのように意外性のあるものをフットワーク軽く取り入れるスタンスも増やしたいですね。

右:アベキヒロカズ

―アイデアの生まれ方にもそれぞれの形がありますね。ぬQさんが「ウケるな~」を信じている軽やかさに驚きました。

ぬQ:大学生のときに漫画を描いて、先生に見せたら「これは誰のために描いたの?」と訊かれて、「私はただ面白いと思って描きました」と答えたら、ひどく叱られたことがありました。

―叱られたんですか(笑)。

ぬQ:はい(笑)。でも、例えば「割れないシャボン玉があったら素敵だな」とふと思うのは、誰かのためでしょうか? それって誰のためでもないと思うんです。あえて言うなら、美しいものとか面白いものへの根源的な憧れだと思うんです。それを製品として売るにはターゲットを設定しなきゃいけないけど、もっと手前の思考や試作の段階では「これは面白い」「これは美しい」でいいと思っています。当時は、まだ学生だから先生の考えがわからないのかな? って思っていましたけど、何年経っても自分自身の「ウケるな~」をという感覚を研ぎ澄まして形にすることで、みんなを楽しませることができるのだから、良いと信じています。

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イベント情報

『&(アンパサンド)がカタチをひらくとき』

2016年8月4日(木)~9月25日(日)
会場:神奈川県 川崎市市民ミュージアム アートギャラリー1、2、3
時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
出展作家:
アベキヒロカズ
大原崇嘉
木戸龍介
桑田恵里
ぬQ
柳川智之
休館日:月曜(9月19日は開館)、8月12日、9月20日、9月23日
料金:一般300円 大学生・高校生・65歳以上200円
※中学生以下無料

プロフィール

アベキヒロカズ

1979年、福岡県出身。東京造形大学メディア造形専攻アート・アンド・メディアテクノロジー・コース卒業。2002年から2010年までデザイン事務所に所属。2010年、アベキノデザインを設立。2012年、こまつ座『井上ひさし生誕77フェスティバル2012』アートディレクション、2013年、川崎市市民ミュージアム『新世代アーティスト展in Kawasaki セカイがハンテンし、テイク』選定グラフィックデザイナー。情報編集という視点から、企業やプロジェクトのロゴをはじめ、多くの展覧会や劇場公演の宣伝美術、書籍のアートディレクション、デザインを手掛ける。2014年アメリカ・サンフランシスコに留学。

ぬQ(ぬきゅー)

1987年、東京都出身。アニメーション作家。修了制作のアニメーション『ニュ~東京音頭』が第18回学生CGコンテスト最優秀賞を受賞、第16回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出されるなど、国内外で上映多数。pixivZingaro(東京)やシブカル祭(バンコク)など国内外の展覧会で作品発表をしながら、チャットモンチーのミュージックビデオや、ローソンのキャンペーン広告などクライアントワークも手がける。

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