特集 PR

音楽家は増えすぎた? 馴れ合わず、孤高の道を行くdownyの問い

音楽家は増えすぎた? 馴れ合わず、孤高の道を行くdownyの問い

downy『第六作品集「無題」』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:高見知香 編集:野村由芽、飯嶋藍子
2016/09/12

2016年もはや3分の2が経過して思うのは、多くのミュージシャンが純粋な作品主義へと立ち返ろうとしているということだ。音楽を取り巻く環境の変化、インターネットやフェスといった存在が「合理化」や「効率化」を推し進め、その結果失われつつあった音楽の価値を再度取り戻そうとするかのような、「まず音楽ありき」という視点。2015年をターニングポイントに、今年はそんな流れが顕著に表れているように思う。

そんな意味において、downyの新作『第六作品集「無題」』は今年を代表する一枚だと言っていいだろう。フィジカルの限界を追求し、手練れのプレイヤーたちがその能力を最大限に詰め込んだ楽曲たちは、少しだけ初期を連想させつつも、明確にアップデートされていて、打ち込みを生演奏が凌駕していく感じは、結果として確かな時代性も備えている。9年ぶりの復活から3年、MONOとenvyと共に立ち上げた新たなフェス『After Hours』も話題となる中、「今回は戦闘モードだった」という青木ロビンにその想いを訊いた。

やっぱり対バンするときは勝つつもりでやってるし、「立ち上がれねえくらいのライブしてやりたい」って思う。

―9年ぶりの復活から3年が経ちました。それ以前と比べて、ロビンさんの生活にはどのような変化がありましたか?

青木:東京と沖縄の行き来が増えたので、もう前作を作ったときほど柔らかい気持ちではないかもしれないですね。東京に来ると僕自身の周りもミュージシャンが多いですけど、沖縄では僕のことをミュージシャンだと認識している人はほとんどいないんです。そのスイッチのオンオフがあって、気楽ではあるんですけど、ギャップもあったりするんですよね。

―そんな中、MONOとenvyと新フェス『After Hours』を立ち上げて、先日のGoto(Takaakira“Taka”Goto / MONO)さんとノブ(Nobukata Kawai / envy)さんらとの対談(MONO、envy、downyはなぜフェスを興すのか? その理由を語る)では「つなげ役」としてのロビンさんもクローズアップされていましたね。

青木:そんなキャラじゃなかったはずなんですけど、いつの間にかそんなことになってしまってますね(笑)。もともと社交的な方ではあると思うんですよ。ジャンル関係なく友達がいて、例えば、THA BLUE HERBのBOSSくんたちとは沖縄に来るたびにBBQしてますよ(笑)。意識して「つなげよう」なんて全然思ってなかったですけど、東京と沖縄の行き来が増えた分、みんなとマメに連絡をするようになったので、それが結果的に「つなげる」みたいになったのかも。

青木ロビン
青木ロビン

―MONOやenvyのような上の世代だけではなく、THE NOVEMBERSやPeople In The Boxのような下の世代のアーティストとの交流もありますが、下の世代の活動をどのように見ていらっしゃいますか?

青木:すごくクレバーだと思います。特に彼らはチャレンジャーな部分が良いと思うし、やると決めたらすぐに行動に移すフットワークの軽さもいいですよね。何かをやれると思っているときは、できないことなんてイメージもしないじゃないですか?

逆に言えば、イメージできることは「できる」ってことだと思うんです。だから、THE NOVEMBERSが自主レーベル(MERZ)を立ち上げるときも「絶対やった方がいいよ」って応援してました。時代がそういう人たちを作っているとも言えると思いますよ。

―業界全体の体力が下がっていることの表れでもあるけど、逆に言えば、アーティスト主体でいろんなことのできる可能性がある時代だと言うこともできますよね。結果的にとはいえ、そういう中で今のロビンさんのように上の世代と下の世代をつなぐ存在というのは、すごく意味があると思うんです。

青木:でも昔は「対バンと口を利く」って考えすらなかったです(笑)。今はそんなことないですけど、ただそこでなあなあにはなりたくなくて、やっぱり僕らはピリピリしていたいと思います。もちろん、コミュニケーションを取るのはすごくいいことですけど、今って何でも「いい」って言わなきゃいけない空気があるじゃないですか?

―SNSとかはそういう空気が強いですよね。

青木:そうそう、音源渡されたらSNSで「良かった」って言わなきゃいけないようなムードとか、そういうのは自分たちはいいかなって。変に尖がっていたいわけじゃないし、説教臭くもなりたくはないけど、ただみんないいやつになりゃあいいってわけじゃなくて、嫌われてもいいから、ちゃんとやることやんなきゃっていう気がします。

仲間といるとすごく楽しいですけど、やっぱり対バンするときは勝つつもりでやってますし、「立ち上がれねえくらいのライブしてやりたい」って思いますからね。僕らは、「これコピーできねえな」みたいな、びっくりするような音楽を作ることで、「バンドってもっといろんなことできるよ」と思ってもらえればそれでいい。この3年でそこに立ち返って、それが音にも表れたのが新作なんじゃないかと思います。

Page 1
次へ

リリース情報

downy第六作品集『無題』
downy
第六作品集『無題』(CD)

2016年9月7日(水)発売
価格:2,808円(税込)
felicity / cap-257 / PECF-1140

1. 凍る花
2. 檸檬
3. 海の静寂
4. 色彩は夜に降る
5. 親切な球体
6. 孤独旋回
7. 「   」
8. 乱反射
9. 翳す、雲

プロフィール

downy
downy(だうにー)

2000年4月結成。メンバーに映像担当が在籍するという、特異な形態をとる5人編成のロック・バンド。音楽と映像をセッションにより同期、融合させたライブスタイルの先駆け的存在とされ、独創的、革新的な音響空間を創り上げ、視聴覚に訴えかけるライブを演出。ミュージックビデオの制作、プロデュースもメンバーが手掛け、世界最大級のデジタル・フィルム・フェスティバルRESFESTに於いても高い評価を得る。4枚のオリジナルアルバムをリリースの後、2004年12月末日を以て活動休止。2013年、9年ぶりに活動再開。2013年第5作品集「無題」、2014年に第5作品集「無題」remixアルバム、過去4作品の再発をリリース。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

Dos Monos“Clean Ya Nerves (Cleopatra)”

トラックが持つドロドロとした不穏さを映像で表現したのは、『南瓜とマヨネーズ』などで知られる映画監督の冨永昌敬。ストリートを舞台にしたノワール劇のよう。ゲストで出演している姫乃たまのラストに示す怪しい動作が、見る人間の脳内にこびりつく。(久野)

  1. アジカン後藤と関和亮が語り合う、ゆとりなき今の社会に思うこと 1

    アジカン後藤と関和亮が語り合う、ゆとりなき今の社会に思うこと

  2. 『おっさんずラブ』映画化決定、2019年夏公開 田中圭が喜びのコメント 2

    『おっさんずラブ』映画化決定、2019年夏公開 田中圭が喜びのコメント

  3. ねごと×chelmicoが語る、「ガールズ」の肩書きはいらない 3

    ねごと×chelmicoが語る、「ガールズ」の肩書きはいらない

  4. SEKAI NO OWARIの新アルバム『Eye』『Lip』同時発売、ツアー&海外盤も 4

    SEKAI NO OWARIの新アルバム『Eye』『Lip』同時発売、ツアー&海外盤も

  5. 『アベンジャーズ/エンドゲーム(原題)』は4月に日米同時公開、予告編も 5

    『アベンジャーズ/エンドゲーム(原題)』は4月に日米同時公開、予告編も

  6. 斎藤工主演『麻雀放浪記2020』がマカオ国際映画祭出品中止、過激な内容で 6

    斎藤工主演『麻雀放浪記2020』がマカオ国際映画祭出品中止、過激な内容で

  7. 「マニアック女子」の部屋と部屋主を撮影、川本史織の写真展『堕楽部屋』 7

    「マニアック女子」の部屋と部屋主を撮影、川本史織の写真展『堕楽部屋』

  8. 入場料のある本屋「文喫 六本木」オープン間近、ABC六本木店の跡地に 8

    入場料のある本屋「文喫 六本木」オープン間近、ABC六本木店の跡地に

  9. 上白石萌歌がHY“366日”歌う、井之脇海との恋物語「午後の紅茶」CM完結編 9

    上白石萌歌がHY“366日”歌う、井之脇海との恋物語「午後の紅茶」CM完結編

  10. 大英博物館で日本国外最大規模の「漫画展」。葛飾北斎から東村アキコまで 10

    大英博物館で日本国外最大規模の「漫画展」。葛飾北斎から東村アキコまで