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ポストロックは生き方の転換点でもあった。京都発・sowの歩み

ポストロックは生き方の転換点でもあった。京都発・sowの歩み

sow『Route of migratory』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:山元翔一
2016/10/14

もともと「これがかっこいい」って自分が思う音楽を頑張ってやろうとしてたんですけど、憧れと身の丈が合ってなかった。(吉村)

―そもそもsowって、どのように結成されたんですか?

吉村:僕らは京都精華大学の音楽系サークルの先輩後輩で、僕が入学した当時の部長が山田で、あとの二人は僕の一個下。もともとは別のメンバーと、PCも使ったデジタルハードコアみたいな音楽をやっていたんですけど、そこに山田と山下が加入して、バンドサウンドになって。そこから以前いたギタリストが抜けるタイミングで二反田を誘って、今の編成でライブを始めたのが2011年ですね。

二反田:今回のアルバムの最後に入ってる“mirror”はそのころに作った曲で、一番古い曲を改めて録り直したんです。

―もともとデジタルハードコアをやっていたというのは意外でした。

吉村:最初は「ハルマゲドン」っていう名前で世紀末感のある音楽をしていたんです(笑)。当時は「とにかく音がでかい」とか、「派手なアクションをする」ってことがかっこいいと思っていましたね。でも今の編成になってからは、全員で息を合わせて、点と点をつないでフレーズにしていくみたいなことが、気持ちいいと感じたんです。

左から:山田弦矢、山下貴弘、二反田由貴、吉村和晃
左から:山田弦矢、山下貴弘、二反田由貴、吉村和晃

山田(Dr):もともと結構無理してたよね。

吉村:「これがかっこいい」って自分が思う音楽を頑張ってやろうとしてたんですけど、憧れと身の丈が合ってなかったというか。でもセッションで、身体から自然と出る音で曲が作れるようになってからは、すごく自然体でやれるようになりました。

―ジャンルで言えば、「ポストロック」ということになるのかと思いますが、この四人になってからのバンドの方向性のようなものはありましたか?

二反田:「ピアノがメインのバンド」みたいなイメージにはしたくなくて、メインでフレーズを弾くのは部分的にして、ギターとピアノが出たり引っ込んだりするっていう曲の構成は心がけています。

吉村:典型的なピアノフレーズは苦手やもんな。

山下:バンドとしてコテコテなことができないのかも。ベタなリフとかリズムは基本使わない。

吉村:王道ピアノインストと言えるようなバンドさんはたくさんいるんですけど、僕らはメロディーでドラマチックに聴かせるってことができないんですよね。「ドラマチックにしようぜ」って言っても、この四人で鳴らすとなかなかそうならなくて。

二反田:「ハッピーな曲にしよう」って言ってやっても、ひねくれてたり。

二反田

―自分たちでもどこにたどり着くかわからない?

吉村:そうなんですよね。だから、ライブでやっていると曲がどんどん変わっていって、最終的な落としどころが見えにくいんです。

―さっき名前が挙がった“mirror”に関しては、そんな中でも「自分たちらしい曲ができた」という手応えを感じた曲だったわけですか?

山下:そうなんですけど、“mirror”もどんどん変わってて、CD-Rで作ったデモにはいろんなバージョンがあるんです。

二反田:お客さんに「“mirror”って5曲くらいあるよな」って言われたことあります(笑)。

吉村:でも、今回でファイナルやな。“mirror”シーズン5で完結です(笑)。

エモーショナルな瞬間の感情ってすごく複雑で、下手に言葉にはできなくて、だからインストバンドをやってるのかなって思うんですよね。(吉村)

―そうした変遷がありつつ、今のメンバーになってからは5年目にして初のフルアルバムが完成しました。

sow

吉村:2014年に初めての音源(『to growth, for growth』)を出して、週末に単発でちょっとずつ、1年くらいかけて全国をツアーで回って、その経験をフィードバックした結果が今回のアルバムなんじゃないかと思っています。最初はまとまり切らないんじゃないかとも思ったんですけど、できあがってみると、意外と雑多な感じはあんまりしなくて、それはよかったなと。

―インタールードっぽい曲があったり、流れがしっかり構成されているので、アルバムとしてのまとまりを感じました。「Route of migratory」というタイトルは、今おっしゃったツアーの話が関係してそうですね。

山下:ツアー先で、イベンターさんとかライブハウスの人とか対バンの人と関係を作って、それを京都に持って帰ってくる。そういうことを繰り返していたので、それと渡り鳥が旅先で生態系を作って、また戻ってくるっていうのをつなげて考えたんです。アルバムの最後が僕らの一番古い曲だっていうのも、テーマ的につながるなって。

―岡村優太さん(ceroのイラストなど手がける京都精華大学出身のイラストレーター)が手がけたアルバムジャケットはまさにそのイメージですよね。吉村さんとしては、楽曲に関してどんなことにこだわりましたか?

sow『Route of migratory』ジャケット
sow『Route of migratory』ジャケット(Amazonで見る

吉村:エモーショナルな要素は絶対入れたくて、ギターフレーズを考えたりするときも、「ここで感情の波が来る」みたいなポイントは狙って作りました。ただ、そこで喜びを感じるのか、悲しみを感じるのかっていうのは、人それぞれでいいと思っているんです。

エモーショナルな瞬間の感情ってすごく複雑で、下手に言葉にはできないんです。だからインストバンドをやっているのかなとも思うんですよね。演奏して気持ちがハイになってるときも、「楽しい!」って感情だけじゃないというか。

山下:どれかだけではないね。

吉村:「悲しそうな曲だから悲しい」みたいな表面的な表現にしたくないんです。だから、タイトルを決めるのがすごく苦手で、任せちゃうんです(笑)。

吉村和晃

山下:ある意味勝手なイメージでつけているんですけど、できるだけイメージを固定しないタイトルにしているつもりです。

二反田:仮のタイトルは私がつけることが多いんです。たとえば、“circle ratio”だったら、構成の譜割りを数字で書いているのが円周率に見えちゃって、ずっと「円周率」って呼んでいたんですよ。それで、結果的にその英訳になったという(笑)。

―具体的に、“circle ratio”はどうやってできた曲なんですか?

吉村:スタジオの最初の1時間くらいは、誰も何もしゃべらずに音を出してて、そのときに山田がネタとなるドラムパターンを放り込んでくるんです。最初は誰も理解できないんですけど、ちょっとずつフレーズの頭や拍子がわかって、きっかけはそういう感じやったと思います。

山下:滅多にないんですけど、この曲はそのリズムに上手いことベースもギターも鍵盤も乗ったんです。だいたいはネタが放り込まれても理解できずに終わるんですけど(笑)。

二反田:何拍なのかも教えてくれへんくて、「どう? わかるか?」って(笑)。

山田:セッションしている中で、「このパターンやったら使えるな」っていうのが見えたら、そのドラムパターンを回すんです。でもそのときは、自分の中で「こういうベースが入って、こういうギターが乗っていたら面白い」って考えながら回しているんで、あんまり周りの音を聴いてないんですよ(笑)。

山田弦矢

―それを口に出しては言わないんですか?(笑)

山田:自分からは言わないです。「今のフレーズいい感じやん」って思ったら、アイコンタクトで合図する感じですね。

二反田:だから、ハマってないときはホントみんなバラバラなんですけど、一度ハマったらちゃんと波に乗れるんですよね。

山下:前作は足し算の曲が多かったけど、今回は引き算ができるようになってきたのかな。以前は詰め込んで作っていたけど、今回はきっかけになる1フレーズみたいなのができたら、そこからスムーズに組み立てられるようになったんじゃないかと思いますね。

sow

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リリース情報

sow『Route of migratory』
sow
『Route of migratory』(CD)

2016年10月19日(水)発売
価格:2,000円(税込)
FBAC-006

1. migration
2. circle ratio
3. fata morgana
4. clockwork
5. 10th sentiment
6. carved pixels
7. beach
8. Run for
9. I see what the city saw feat. Ryu (from Ryu Matsuyama)
10. mirror

イベント情報

『earth garden"秋" 2016』
2016年10月22日(土)、10月23日(日)
会場:東京都 渋谷 代々木公園 イベント広場・ケヤキ並木
※sowは23日に出演

『タワーレコード京都インストアライブ』
2016年11月13日(日)
会場:京都府 タワーレコード京都店内 イベントスペース
※アコースティックセット

『sow 1st Album「Route of migratory」Release Party』
2016年12月25日(日)
会場:京都府 木屋町 UrBANGUILD
出演:
sow × VJ Yohsuke Chiai & Takuma Nakata
Ryu Matsuyama
吉岡哲志(LLama)
and more

プロフィール

sow
sow(そう)

2008年結成。メンバーチェンジを経て2011年現編成での活動を開始。国内外のポストロックバンドと数多く共演。アートイベントへの出演などジャンルレスに活動。叙情的なフレーズと緻密な構成の楽曲は、鋭角的、攻撃的なハードコアサウンドから繊細且つ雄大なサウンドスケープまで多彩な表情を見せる。

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