あの人の音楽が生まれる部屋

あの人の音楽が生まれる部屋 Vol.15 tofubeats

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あの人の音楽が生まれる部屋 vol.15:tofubeats

パーソナルな部分をあえて濃く表現した
メジャーファーストアルバム

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そうした「隠居生活」の中、ある意味ではリハビリのような気持ちで作り上げたのがファーストアルバム『lost decade』(2013年発売)でした。この作品は、iTunes Store総合1位を記録。続く『Don't Stop The Music』(同年)では森高千里を、『ディスコの神様』(2014年発売)では藤井隆をフィーチャーし話題となります。そして、満を持してリリースされたのが、メジャーに移籍して初のフルアルバム、その名も『First Album』です。

tofubeats:これまでになく、パーソナルなアルバムに仕上がりましたね。こないだCINRAに掲載されていたインタビュー記事で、くるりの岸田さんも言っていたんですけど、あまりにアーティストのパーソナルが強過ぎる音楽って、聴き手の「容れ物」にはなれないからダメだと思うんですよね。世に出す以上は人に聴いてもらうことが前提ですし、それを抜きには考えられない。だから、『lost decade』のときは、「ちょっと自分の匂いが濃過ぎるな」と思ったら、薄める作業もしてました。主に歌詞の部分ですが、個人的なことは1行くらいに留めておくようにしたりとか。 でも今回は、そういうことをあまり考えずに勢いに任せて作ったところがあります。それが自分としてはすごく新鮮ですね。

『First Album』のオープニングは、『lost decade』のそれと対になっています。『lost decade』は、オールナイトのイベントを終えて帰宅し、家からアルバムがスタートするというストーリー。一方『First Album』は、野外フェスの盛り上がりからそのまま外へとつながっていく。オノマトペ大臣やPUNPEEら、身近な人脈とともに作り上げた『lost decade』と比べると、一回りも二回りも広い世界が広がっています。中でもBONNIE PINKをフィーチャーした“衣替え”には特別な思い入れがあるそうです。

tofubeats:BONNIE PINKさんのことは昔から大好きで、この曲も、元々彼女に歌って欲しいと思って作ったんですよ。最初のオファーではスケジュールがあわずに実現できなかったので、自分で歌ったバージョンを『ディスコの神様』に収録したのですが、今回はなんとめでたくOKのお返事をもらえたので、アレンジを変えて歌ってもらいました。すごく嬉しかったですね。歌を録りに行って、帰りの電車の中でラフミックスを聴いてたら、感動して涙が出そうでした(笑)。BONNIE PINKさんって、一本筋が通っているというか、やりたいことがずっと一緒なんだなって思うんですよ。それは自分も共感するところで、今回のアルバムもいろんなタイプの曲が入っているようで、目指しているところは全部一緒。そこへ向かう角度が曲によって違うっていうことだけなんですよね。TOWA TEIさんとか、海外アーティストだとPara Oneとか、自分が好きなアーティストの共通点って、それをやってる人だなと思います。

物事は、終わりがあるから美しい

tofubeatsの機材

歌詞に関しては、「まだ誰もテーマにしていないけれども、誰もが共感するであろう事柄」を常に探すようにしているというtofubeatsさん。“衣替え”は、思いついたときに「季節ソングとして年に2回聴ける!」と膝を打ったとか。神聖かまってちゃんのの子をフィーチャーした“おしえて検索”は、教育テレビの『みんなのうた』のような感じで、インターネットの検索について歌ったら面白いんじゃないか? というアイデアから生まれました。<やりたいことだけやりたいの>というフレーズは、tofubeatsさんの人生観、世界観を象徴しているよう。ある意味では「諦観」とも言えるような切ないムードは、歌詞だけでなくサウンドにも共通して流れているものです。

tofubeats:「音楽ぐらいしか楽しいことがない」とか、「ゲームよりも人生を進めたい」とか(笑)、いろんな曲で言ってますけど、それはいまの自分自身の態度を表明していると思います。限りがあることに美しさを感じるのは、日本的な考え方なのかもしれないですけど、「人生は終わるからいい」っていう気持ちはありますね。僕は「カーテンコール」とか「エンドロール」が好きなんですよ。ドラマとかアニメとかでも最終回が大好きですし。前作では“lost decade”という曲がそうなんですけど、今回も“衣替え”で終わらずに、最後にリプライズっぽい曲が入って終わるのは、終わりを美しく表現したかったからなんです。明るい曲調で悲しいことを歌っている曲に惹かれるのは、世代的な価値観が表出しているのかもしれないですね。

「やりたいことだけやりたい」
そのメッセージで、同世代リスナーから尊敬される存在に

tofubeatsの機材

20歳頃に挫折を味わい、病気を乗り越え、メジャーレーベルから見事に1つの大きな扉を開いたtofubeatsさん。子どもの頃から憧れていたミュージシャンたちとの念願のコラボも実現した彼の、今後の展望はどのようなものでしょう。

tofubeats:ストレスをなるべく少なくして、やりたいことをやりたいタイミングでやりたいようにやっていければいいなと思います。時代や状況に合わせて臨機応変にやっていきたいし、何より楽しくやれる場にいたい。いまはとても楽しいですね。あと、僕はいつでも若いクリエイターとコラボしたいと思っています。僕や僕の周りの友人たちがこれまでやってきたことが、間違ってなかったということを作品で証明していきたい。僕が売れるということは、僕に音楽を教えてくれた人たちが間違ってなかったっていうことですからね。そのために、やっぱりちゃんと売れたいですよね。

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