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現代の漠然とした不安を笑う ドミコ・さかしたの醒めた眼差し

現代の漠然とした不安を笑う ドミコ・さかしたの醒めた眼差し

ドミコ『soo coo?』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:豊島望 編集:山元翔一
2016/11/07

かつて、甲本ヒロトはロックンロールを指して「飽食の果ての飢餓」と呼んだ。1950年代のアメリカで生まれたロックンロール。それは、発達する資本主義社会のなかで、食べるものにも、着るものにも、住む場所にも困らず、物質的にはあらゆるものに満たされているはずの現代人の、しかし、それでも満たされない心の空虚さが生んだアートフォームなのだと。つまり、ロックンロールの前提にあるのは、社会や経済の豊かさ。……では果たして、この2016年の日本においても、ロックンロールは有効なのだろうか?

ドミコはロックンロールバンドだ。2016年の、日本の、ロックンロールバンドだ。ドミコは醒めている。「明日のことなんてわかんねぇじゃん」というあっけらかんとした達観と、「でも、今日は生きているんだよ」という切実なロマンティシズム。「何も信じない」と「全てを信じる」を同居させる感性。まるで子どもの「無垢」と老人の「悟り」が交錯したかのような眼差しで、ドミコはロックンロールを鳴らしている。

1stフルアルバム『soo coo?』を肴に、バンドのコンポーザーである、さかしたひかるに話を訊いた。「2016年の日本において、ロックンロールは有効なのか?」――以下のインタビューは、そんな先の問いに対して、何かしらのヒントを与えてくれるかもしれない。

「フリーターは不安」とか言われても、その不安って漠然としているような気がするんですよね。就職して安心した気になってる方がヤバくないですか?

―さかしたさんは、大学を卒業したあと一度就職されて、それをすぐに辞めて音楽活動を始めているんですよね。

さかした:そうですね。その職場では半年しか働いていなかったので未練もなく、辞めたときは前向きな感じでしたね。就職すること自体が後ろめたかったんですよ。音楽や楽器に興味があって、大学を卒業する前は「俺って、将来は音楽やっているんじゃないかなぁ」って漠然と思っていたけど、実際は何もせず就職しちゃったので。でも、就職してからもスタジオで遊んだりしていたら、うまい具合に「ライブやろう」っていう話になって、「じゃあ、仕事辞めてバンド結成しようかな」っていう感じです。

さかしたひかる
さかしたひかる

―バンドを組むから仕事を辞めた、というのは、音楽で食べることが難しいと言われるこのご時世、珍しいですよね。

さかした:自分のキャパシティー的に両立は無理だなって思ったんです。「まぁ、バイトでいいや」っていう感じで。

―フリーターになることに不安はなかったですか?

さかした:何も不安はないですね。「フリーターは不安」とか言われても、その不安って漠然としているような気がするんですよね。実際に今、俺はフリーターの何がどうヤバいのかもわかんないし。

さかしたひかる

―不安を感じるのは、貯金とか保険とか、主に金銭的な部分で将来に漠然とした不安がある、ということだと思うんですけど。

さかした:でも、「わかんないことって、不安じゃなくね?」って思う。それに、就職して安心した気になっている方がヤバくないですか? 大手の企業にしたって、いつ潰れるかわからないんだから。たとえば、シャープみたいな大企業が経営難になるなんて、10年前には誰も想像していなかったと思うんですよ。それなのに、企業に所属しているからって安心する方がヤベぇなって思う。

―「未来なんて、どうなるかわかんねぇじゃん」っていう感じ?

さかした:そうっすね。単純に、あんまり先を見ないんだと思います。まぁ、今は政治家が一番いいんじゃないですか?(笑)

人助けをしたければ別の仕事を選ぶし、俺は別に「音楽で何かを変えたい」とは思わないです。

―ははは(笑)。世間が煽る、漠然とした将来の不安に流されずに生きる感覚って、10月に『BEACH TOMATO NOODLE』を一緒に主催したTempalayのようなバンドにも共通する感覚だと思いますか?

さかした:言われてみれば、そうかもしれないです。ただ「楽しさ」を求める感じというか。Tempalay然り、あのイベントで一緒に動いてくれたバンドたちに対しては、ただの身内じゃない感覚はあるんですよね。

―実際、『BEACH TOMATO NOODLE』はやってみていかがでしたか?

さかした:ドミコは単独でイベントをほとんどやったことがなかったし、今回も、Tempalayと一緒に、ただ「仲がよくてカッコいい人を集めてやってみてみよう」っていう感じだったので、その場がどういう空間になるのか想像もつかなかったんです。でも、ネットに上がっている写真を見てもらったらわかると思うんですけど、すげぇハッピーな空間を共有できたなって思います。幸福感、満足度はすごく高かったんじゃないかな。『ウッドストック・フェスティバル』(1969年にアメリカで開催されたロックを中心とした大規模な野外コンサート)のDVDで見た景色、みたいな感じで。

さかしたひかる

―「『ウッドストック・フェスティバル』のような景色」って、少なからずイベントのコンセプトのなかにありましたか?

さかした:いや、特にそんな考えはなかったんですけど、結果として、すごくハッピーな空間になったなっていう感じです。事前にあったのは、ほんと、「楽しいことがしたい」っていうだけですね。

―もうちょっとだけ突っ込ませてほしいんですけど、『ウッドストック・フェスティバル』って、「ラブ&ピース」を掲げた「カウンターカルチャー」だったわけですよね。そこには、社会に対する反抗心があった。ドミコは、何かに対して反抗していると思いますか?

さかした:していないですね。人助けをしたければ別の仕事を選ぶし、俺は別に「音楽で何かを変えたい」とは思わないです。みみっちい話、自分の音楽がカッコよく聴こえる世界にしたいとは思いますけど、「みんながゴミを拾う社会にしたい」とか、そんな気持ちで音楽はやらないです。なので、反抗的な概念は曲に入っていないと思います。全部、自分の深層心理みたいなものをグワーって引っ張り出しているだけなんじゃないかな。

さかしたひかる

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リリース情報

ドミコ『soo coo?』
ドミコ
『soo coo?』(CD)

2016年11月9日(水)発売
価格:2,300円(税込)
RED-0005

1. my baby
2. まどろまない
3. グレープフルーツジュース
4. Pop,Step,Junk!
5. Slip In Pool
6. さなぎのなか
7. マイララバイ
8. haii
9. おーまいがー(album ver.)

イベント情報

『ドミコ「soo coo?」Release Tour』

2016年11月30日(水)
会場:東京都 渋谷Chelsea Hotel
出演:
ドミコ
Gi Gi Giraffe
TENDOUJI
※アウトストアフリーライブ

2016年12月14日(水)
会場:愛知県 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
出演:
ドミコ
Tempalay
DENIMS

2017年1月13日(金)
会場:宮城県 仙台 enn 3rd
出演:
ドミコ
and more

2017年1月26日(木)
会場:大阪府 Pangea
出演:
ドミコ
and more

2017年1月27日(金)
会場:広島県 4.14
出演:
ドミコ
and more

2017年1月29日(日)
会場:福岡県 graf
出演:
ドミコ
and more

2016年2月4日(土)
会場:東京都 新代田 FEVER
出演:ドミコ

プロフィール

ドミコ
ドミコ

2011年結成。埼玉を拠点に活動。メンバーは坂下光(Vo,Gt)と長谷川啓太(Dr)の2人。これまでに、自主制作盤『わお、だいびんぐ』(入手不可)、全国流通盤のミニアルバム2作『深層快感ですか?』('14)と『Delivery Songs』('15)'をリリース。'16年に入ってからは3月リリースの会場限定シングル『ooo mai gaaa!!!』収録曲の「おーまいがー」が「ニンジャスレイヤー」EDに抜擢。4月にはHiNDS来日公演のオープニング・アクトを務めた。11月9日、初めてのフル・アルバム『soo coo?』をリリースする。

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