「伝えたいことがあるんだ」ねごとインタビュー

伝えたいことがあると、人はこんなにも変わるものなのか。初めてねごとにインタビューをしたのは2年4か月前。当時まだ本格的な活動間もなく、音源リリース前で取材慣れしていなかったとはいえ、決して話すことが得意とは言えなかった彼女たちが、今は溢れんばかりの想いを途切れることなく話し続ける。昨年は数多くの夏フェスにも出演し、年末には東名阪でのホールツアーも実現して、順調にステップアップを遂げたように見える彼女たちだが、実は前アルバム『ex Negoto』リリース以降は、ライブをしては悩む日々を繰り返していたという。しかし、大学卒業を目前に控え、困難を乗り越えることに成功した彼女たちは、シングル3枚とアルバムの4か月連続リリースを決め、活動ペースを一気に加速。そしてできあがったセカンドアルバム『5(ファイブ)』 は、より洗練された音楽性もさることながら、劇的に言葉の強さを増した作品に仕上がった。新たにリーダーに就任した藤咲佑(Ba)と蒼山幸子(Vo,Key)が語ってくれた今作リリースまでの過程から、生まれ変わったねごとが抱く想いの強さを感じ取ってほしい。

四人の塊になれていなかった。(佑)

―前作『ex Negoto』からの大きな変化として、佑さんがリーダーになりましたよね。どうして今さらリーダーに?

:去年、たくさんの夏フェスに呼んでもらえたのですが、やっぱりライブは難しいなと感じている時期だったんです。思うようにやりきれなかったというか。それはなんでだろう? と考えた結果、四人の塊になれていなかったからじゃないかなと思ったんですね。ちょうどそういうタイミングで、スタッフから「リーダーになって、先頭に立って引っ張っていかない?」と言われたので、やってみようと思って。

―同級生的な関係から、急に1人がリーダーになるって、けっこう勇気がいる決断だと思います。

:そうですね。私自身も、リーダーは先頭に立って、どんどん進めていくっていう印象があったので、「どうしよう?」という不安は今もあるんですけど……。

幸子:佑は引っ張っていくようなタイプではないけど、「今話し合いをするべきかな?」ってときに声をかけてくれるんです。佑がリーダーになる前は、四人とも付き合いも長いし、言葉にしなくてもわかるだろうと思って、あまりお互いに踏み込んでこなかったんですよね。でも、ねごととしてライブに出ているからには、例えば誰かがミスしたら、それはねごとのミスになるということを、ちゃんと言い合うようになったんです。それは、もともとお互いのことを信じていたからできたことだし、全員が「変わらなきゃ」と思ってたからこそ言えるようになったというか。そういうときに佑がリーダーになって、一本筋が通った気がします。

―11月に始まった4か月連続リリースから、作詞作曲のクレジットが全部「ねごと」になりましたけど、そういう体制変更も関係してるのでしょうか?

:それは夏フェスの後に私が提案したんですけど、誰が作った曲でも、四人全員がその曲をちゃんと語れるようにしたいなと思ったんです。今までは幸子がメロディーや歌詞を作ってきて、瑞紀がトラックを中心に作っていたんですけど、ちゃんと私や小夜子も曲のことを理解して、語れるようになりたいし、本当の意味で四人で作っていきたいなって。

―前作からの1年ちょっとの間、悩むことも多かったんですか?

幸子:けっこう苦しいことがたくさんあった1年間でした。私たちが一番大事にしていて、楽しみたいはずのライブで、壁にぶつかったんですよね。一生懸命やってるのに、「なんで手応えがないんだろう?」「どうやったら届くんだろう?」って毎回悩んでいました。結局、四人が楽しむことが一番大事で、一人一人ががんばってビームを出すよりも、四人で1つになって出したビームの方が強いということに気付かせてもらった1年間でした。

蒼山幸子
蒼山幸子

―三本の矢ならぬ四本の矢ですね。

幸子:今回のアルバムの曲は、リスナーがいたからこそできた曲が多いんです。(前アルバムリリース後最初に出した)“sharp ♯”は突き抜けたいっていう気持ちで書いて、(その次のシングル曲)“Lightdentity”も「この悩みは絶対に光になる」って初めて言えた曲だったんですけど、今回の3部作のシングルは、自分たちのことだけじゃなくて「よりリスナーと繋がりたい」という気持ちが込められているんです。四人だけじゃ作れなかった曲がたくさん入ってる。だからタイトルを『5』にしたんです。「4+1」っていう意味で。

―リスナーが5人目のねごとみたいな。

幸子:はい。だから前作の『ex Negoto』よりも一曲一曲にすごく思い出があって。聴いただけで作ったときのことを思い出せる、濃いアルバムになってますね。

「四人とも同じことを考えているんだな」って。(幸子)

―さっき手応えがなかったと言ってましたけど、傍から見てるとライブはいつも盛り上がってるし、会場もどんどん大きくなっていきましたよね。それでも手応えがなかった?

幸子:例えば、MCで「こういう想いでいるんです」って語るのが恥ずかしかったんです。それは「四人で同じことを思ってる」って言える自信がなかったからで、それがライブに出ていたんですね。

―今は自信を持って言えるようになった。

幸子:そうですね。最初の頃はMCで全然しゃべらなかったけど、今は佑が中心になって全員でしゃべります。それって伝えたいことがあるからだと思うんです。

―はじめの頃に取材したときは、四人とも全然しゃべらなかったですからね(笑)。ライブでいろんなバンドと対バンすることも多かったと思うんですけど、そういうところからの影響もありました?

:そうですね。『ex Negoto』のツアーの後にやった学園祭ライブで、迷いが始まったんです。お客さんが同世代ということもあったし、対バンも今までの蓄積があるバンドさんで、お客さんと一緒に楽しもうという姿勢を見て「私たちは、こんなに楽しんでるお客さんをさらに楽しませることができるのかな?」と不安になって。あと、チャットモンチーさんが二人体制になったときに、対バンする機会があって。その時、お二人の音楽に対しての想いがすごく伝わってきて「なんで二人なのに、こんなに強いんだろう? 私たち負けてるな、四人もいるのに」って衝撃を受けました。

藤咲佑
藤咲佑

幸子:ライブって、バンドが持つ精神力の強さというか、どれだけその人たちが強い気持ちで生きてきたかってことが出るじゃないですか? それがねごとはまだまだ浅いなってすごく感じたんです。私たちは人生経験では先輩方にもちろん勝てないですけど、音楽に向かう気持ちの強さは年齢と関係ないし、もっと強くならなくちゃいけないなって。

―実際に歌詞を見ても、「伝えたいことがあるんだ」という強い想いを感じるんですけど、歌詞に対する考えも変わりました?

幸子:クレジットを「ねごと」に統一したこともあって、今回は他のメンバーが歌詞を書いてる曲も入ってるんです。“潜在証明”と“メイドミー…”は小夜子が中心に書いてて。

左から:藤咲佑、蒼山幸子

―“潜在証明”の「△」っていう不思議な言葉遣いとか、小夜子さんらしいですよね。

幸子:“そして、夜明け”はメロディーを瑞紀が作って、歌詞を佑が書いてるし、“flower”は瑞紀が歌詞を書いてます。そういう方法の中で私も「今までのねごとの世界観ってどういうものだったかな?」って考えるきっかけになりました。他のメンバーが歌詞を書いてくれたときに、表現の仕方はそれぞれ違うけど、夜明けに向かっていたり、明日を見ていたりするような気持ちが共通していて、「四人とも同じこと考えているんだな」って。

―確かに、「もう一歩前へ」とか「先へ」とか「遠くへ」みたいな歌詞が多いですよね。前進していく決意みたいなものを感じました。

幸子:最初からそういう歌詞にしようと思っていたわけではないんですけど、やっぱり前に進みたいっていう気持ちをみんな持っていたんだと思いますね。

今でもあれが原風景だし、そういう「楽しいな」って思った景色をもう一度見たい。(佑)

―四人で歌詞をやりとりをするときに、「もうちょっと前向きにしようよ」とか、そういう意見もあったんですか?

:ありましたね。私たちが音楽を鳴らしているのは、やっぱり昔見た景色をまた見たいからで。

―昔見た景色というのは?

:『閃光ライオット』(ねごとが音楽活動を続けるきっかけとなった10代アーティスト限定のフェス)のときに6,000人が目の前にいて、私たちの音楽を初めて聴いてくれたはずなのに、あんなにも乗ってくれたこととか。今でもあれが原風景だし、そういう「楽しいな」って思った景色をもう一度見たい。音楽って楽しいし、それを楽しいと思わせてくれたのはリスナーのみんなだから、みんなと近付くために、もっと前向きな歌詞にしようというのはもう一度考え直した部分でしたね。



幸子:“greatwall”はクレジットを「ねごと」にしようって決めてから取り掛かったので、メロディーもみんなで出しあった中から選びました。歌詞も今佑が言ったように「音楽って楽しいよね」っていう原点に立ち返るために、一人一人に「音楽に焦がれた瞬間をまず言葉にしてみて」って声をかけて、書いてもらったんです。小夜子はなぜか私たちが出会ったきっかけから書いてきたんですけど(笑)。そこで「あ、いいね!」って思うものを歌詞に封じ込めました。結果的に“greatwall”は強い想いがあるけど、ダンサブルだし、きらめきがあって、迷いの中で書いたけど、やっぱり音楽が好きだっていう気持ちが表れてる曲になったと思いますね。

―“greatwall”は「高い壁」ということですか?

幸子:そうですね。シングル3部作はそれぞれテーマがあって。最初に出した“nameless”は、ねごとを知らない人だったり、ねごとなんて聴かなくていいかなと思っている壁の向こうにいる人たちに向かって投げた、気付いて欲しいという想いを込めた第1弾でした。“greatwall”はこっち側には楽しい音楽が鳴ってるから、気付いてるなら間にある壁を壊し合って、一緒に楽しもうよというメッセージを込めていて、“たしかなうた”は、その壁を壊した先に、私たちが寄り添っていって、手を繋ぐようなイメージの曲。そうやって、だんだんリスナーに近付いていくような3曲の流れがあるんです。リリースしていく中で、どんどんその想いは強まっていったし、それを実感として得られたのが、この前のホールツアーだったのかなって思います。

夢を見てるような部分と、どんな人にでも通じるような普遍的な部分の、どちらも併せ持ったねごとになりたい。(幸子)

―僕が最初に取材させてもらったときに、「ねごとはどういうバンド?」という質問に対して、幸子さんが「色がないのがねごと」って言ってたんですね。変わってきた部分はありますか?

幸子:色がないからどんな色にでもなれるっていう意味では変わってないですね。作りたい曲が、毎回全然違うので。

―でも、今回のアルバムを聴いて、いろんな色があるんだけど、その一つ一つが濃くなった感じがすごくしていて。

幸子:今回のアルバムは、1個のフレーズや1個の歌詞に四人の想いが凝縮されている分、すごく濃くなっているんだと思います。ファーストで出していたような、夢見心地な部分も大事にしたいんですけど、今自然に思っている言葉や音が曲に宿っているんですよね。セカンドだけど、新生ねごとの1枚目というか。

―ある意味、「寝言」っぽくなくなったというか、ちゃんと言葉が意志を持ってますよね。

幸子:今回のアルバムは歌詞は今までよりも現実に近いかもしれません。夢を見てるような部分と、どんな人にでも通じるような普遍的な部分の、どちらも併せ持ったバンドになりたいんです。

:四人で固まって、改めて「ねごとってなんだろう?」と考えたことによって、バンドとして言いたいことや、色みたいなものが濃くなってきたのかなって。今は自然にそういう流れになっているんですけど、今後どうなるのか私たちもわからないので、今は曲作りが本当に楽しいですね。

―卒業したら環境も変わるだろうし、今後が楽しみですね。ちなみに卒業旅行は全国ツアーなんですよね?

:そうなんです。2月から全国ツアーです。

―リアル卒業旅行は行かないんですか?

:ツアーが卒業前から始まって5月まであるので、卒業式も出られないと思います……。一応マネージャーから事前に、「ライブが決まるかもしれないけど、卒業式どうする?」って言われたんですけど、三人とも「ライブやりたいです」って(笑)。でも、これからライブの本数も増えて、新しい土地や新しい人に会えるので、そこで触発されて作れるものもあると思うんですよね。それがすごく楽しみです!

リリース情報
>ねごと
『5』完全生産限定盤(CD)

2013年2月6日発売
価格:3,500円(税込)
KSCL-2197

1. greatwall
2. トレモロ
3. sharp ♯
4. nameless
5. たしかなうた
6. 街
7. 潜在証明
8. メイドミー…
9. Re:myend!
10. そして、夜明け
11. Lightdentity
12. flower
13. SEED with groove
14. nameless -instrumental-
15. greatwall -instrumental-
16. たしかなうた -instrumental-

ねごと
『5』(CD)

2013年2月6日発売
価格:3,059円(税込)
KSCL-2198

1. greatwall
2. トレモロ
3. sharp ♯
4. nameless
5. たしかなうた
6. 街
7. 潜在証明
8. メイドミー…
9. Re:myend!
10. そして、夜明け
11. Lightdentity
12. flower
13. SEED with groove

プロフィール
ねごと

蒼山幸子(Vo&Key)、沙田瑞紀(G)、藤咲佑(Ba)、澤村小夜子(Dr)による千葉県出身、全員平成生まれの4ピースバンド。さわやかでポップな要素と、オルタナティブなロックエッセンスを盛り込んだ、一見アンバランスなバランス感で新世代のガールズロックを奏でる。「閃光ライオット2008」審査員特別賞受賞。2010年、初音源となるミニアルバム『Hello!”Z”』をリリース。12年11月のシングル『nameless』から13年2月の2ndフルアルバム『5』まで、4か月連続リリースを展開。



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