特集 PR

新世代のポップソングを歌う緑黄色社会が語る「世代感」とは

新世代のポップソングを歌う緑黄色社会が語る「世代感」とは

緑黄色社会『ADORE』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:馬込将充 編集:飯嶋藍子、川浦慧

<それなりにね>っていう言葉に救われる人は、たくさんいるんじゃないかなって思う。未完成でいいっていうことだから。(peppe)

―新作『ADORE』は、すべて長屋さんが作詞作曲されていますけど、なかでも“want”“キラキラ”“恋って”といった曲を聴くと、「恋愛」がモチーフとして重要なのかなと思ったんですけど、どうですか?

長屋:私は、恋愛も、友情も、家族愛も、「人が集まる」っていう点で通ずるものはあるんじゃないかと思う。だから、当てはめ方は自由だと思うんです。聴く人がそれを恋愛に当てはめるのか、友情に当てはめるのか。そこは、自由に捉えてくれたらいいなって思います。

緑黄色社会『ADORE』ジャケット
緑黄色社会『ADORE』ジャケット(TOWER RECORDSで見る

―“キラキラ”で、<あなたがわたしをつくってしまった / わたしがあなたをつくってしまった>と歌いますよね。これまでのお話を聞いていても感じるのは、緑黄色社会はバンド全体の指針としても、四人それぞれの考え方としても、あくまで「他者がいてこその自分」みたいな感覚が強いのかな、と。これは、さっき小林さんが話してくれた「結局、世界と関与しなければならない」という感覚に通じるものだと思うんですけど。

長屋:“キラキラ”は特に、さっき言ったような、人と人がすれ違ってしまうことって、実は素晴らしいことだなと思って書いた曲なんです。それって、「人間らしさ」だなって。別に誰が悪いとか、自分が正しいとかじゃないですよね。みんな違う考えを持っているのは当たり前じゃないですか。

―そうですよね。

長屋:私は、性格的にも、自分の悩みを人に話したり、自分の気持ちを出したりするのが恥ずかしくて苦手だったんですよ。他の誰かの話を聞くことはできるし、それにアドバイスしたりすることもあったんですけど、自分のことは本当に話さなくて。メンバーにも話さなかったし。

穴見:……(深く頷く)。

―穴見さん、めっちゃ頷きますね(笑)。

長屋:思い当たるフシがあったみたいです(笑)。でも、話してみたら意外とわかってもらえるものだし、打ち解けることで人に甘えたり、身を委ねたりするのは、簡単だし楽になれることなんだなって、段々と思えるようになったんです。だからこそ、今はもっといろんな人と関わることで、自分のなかの感情を広げたいなって思う。まだ知らない感情がたくさんあると思うから。

長屋晴子
長屋晴子

―“want”で、<あなたに会いたい / ただそれだけでいい>と歌っていますけど、たとえば、いわゆるJ-POPのラブソングって、「<会いたい>しか歌わねぇな」みたいに揶揄されることもあるんですよね。

長屋:そうですね(笑)。

―ただ、“want”の歌詞は、<アイスクリームが食べたい>とか、<子供のように生きたい>とか、具体的なものから観念的なものまで、様々な願望が歌われたうえで、その全てを凌駕する願望として、<あなたに会いたい / ただそれだけでいい>と歌う。この<会いたい>に行き着くまでの切実さって、すごいと思うんです。欲しいものはたくさんある。でも、結局は「あなた」がいればいいんだっていう。

長屋:結局、ここに行き着いちゃうなって思うんですよね。もちろん、やりたいことはたくさんあるけど、結局、<会いたい>が満たされてしまえば解決することってたくさんあると思う。「簡単だな、自分」って思ったりもするんですけどね(笑)。あれだけ「あれ食べたい!」とか「これやりたい!」って言っていたのに、結局、「あなた」に会えれば解決する……でも、それだけで幸せになれるのって、すごくシンプルで素敵なことだとも思うし。

―裏を返すと、そこにはきっと「シンプルな幸せを見つけることほど難しいことはないんだ」という前提も存在していますよね?

長屋:そうですね。どうしたって人間は贅沢をしたくなってしまうし、人を羨んでしまうし。私自身、そういう気持ちが強くあったんです。でも、ものすごく高い場所にある大きなものを掴むより、私は、目の前に転がっている小さな幸せを集めたい。本当に、日常に潜んでいる小さな「嬉しい」とか「楽しい」とか「幸せ」とか、そういうものに気づけた瞬間って、自分のなかで世界が広がる瞬間なんです。たとえば、アイスで「当たり」が出たとか、アイスをわけ合って食べるとか……アイスばっかりだけど(笑)。

小林:(笑)。でも、小さい子を乳母車に乗せて歩いているお母さんを見たりすると、すごく幸せだよね。

小林壱誓
小林壱誓

長屋:そうそう。贅沢なんていらない。「普通」が一番いいなって思う。だって、すごく幸せじゃないですか? 家庭がある光景、子供がいる光景、天気がいい光景……そういう、普通のことが私は嬉しい。

最初にも言いましたけど、私は、自分がすごく一般的な人間だと思っているし、みんなだって普通の人じゃんって思う。でも、なんで、人は人が持っているものを羨ましく思ってしまうんだろう? なんで、人間って、ないものねだりをするものなんだろう?……そう思っちゃうんです。

長屋晴子
長屋晴子

―周りを見渡してみても、「みんな贅沢だなぁ」って思いますか?

穴見:贅沢だよね。

peppe:うん、そう思う。

長屋:みんな、贅沢だよ。昔の曲で、<贅沢だ、お前は>ってサビで歌っている曲があったんですけど(笑)。それは自分に向けて歌っていたんです。今のままで十分なのに、なんで贅沢したがるんだろう? って。シンプルが一番だと思う。

―今作の最後に収録された“それなりの生活”は、タイトルからしても、そういった「シンプルな幸せ」に対する長屋さんの向き合い方が赤裸々に歌われている歌なのかな、と思いました。

長屋:一度、一人で弾き語りをする機会をいただいたんですけど、この曲は、それに向けて書いた曲なんですよね。それまでは、自分の気持ちを伏せて、悟られないような歌詞を書いていたんですよ。でも、より素直に、自分に向き合って歌詞を書くようになったきっかけの曲ですね。

peppe:私はこの曲を聴いたとき、サビの<上手くやってくよ それなりにね>っていう歌詞に、「もう、すべて共感!」っていう感じでした。私の友達にも、“それなりの生活”の、この部分の歌詞を好きな人が多いんですよ。<それなりにね>っていう言葉に救われる人は、たくさんいるんじゃないかなって思う。未完成でいいっていうことだから。

左から:穴見真吾、peppe
左から:穴見真吾、peppe

長屋:さっきの話に繋がるんですけど、人は欲張ってしまうけど、でも、もっと目の前にある「今」を大事にすればいいのになっていう気持ちで書きました。がむしゃらに頑張っていろいろ掻き集めてみても、上手くいかないことが私には多くて。でも本当は、「それなり」でいいのになっていう。

―なるほど。<それなり>という言葉が、皆さんにとってはとても大事なんですね。

長屋:うん、そうですね。

―<犠牲を増やして 前を向いていれば / いつか明るい風が吹くって勘違いしながら>とか、<これといって辛くもない / 命を捨てたい訳でもない / だけど何が足りない>とか……この曲の歌詞って本当にキラーフレーズだらけで、全てのセンテンスの意味を捉えたくなっちゃうんですけど。

長屋:ありがとうございます(笑)。

―この曲の最後は、<光る未来は見えないけど / だからこそ行け>というフレーズで締めくくられていて。長屋さんにとって、未来とは、簡単には見えないものですか?

左から:小林壱誓、長屋晴子
左から:小林壱誓、長屋晴子

長屋:というより、想像できなかったんです。この曲の歌詞を書いた頃は、自分の未来に明るい光が見えていなかったから、「大人になんてなりたくない」と思っていて。でも今は、昔に比べて、素の自分を好きになれているから。素直になれるようになってきたし、もっともっと、自分のことを好きになりたいと思うんです。昔は、未来を想像するだけで動こうとしなかったけど、今は、自分から動くことで未来を変えたいなって思えるようになったし。

―なるほど。人って、たくさんの欲望を持ち、それを叶えることで未来を描こうとする生きものでもあると思うんです。でも、長屋さんは、「それなり」の幸せに気づくことで、未来を描けるようになった。長屋さんにとってバンドをやっていくことは、自分の殻を剥ぎ取って、素直になっていくことでもあるのかもしれないですね。

長屋:そうですね。それもあるし、私が素直になることが、きっと、周りにも影響するだろうと思ってやっています。さっきも言いましたけど、私が思っていることは、きっとみんなも思っていることなので。自分が変えていくことで、それで、また違う誰かが変わればいいなって思いますね。

Page 3
前へ

リリース情報

緑黄色社会『ADORE』
緑黄色社会
『ADORE』(CD)

2017年8月2日(水)発売
価格:1,620円(税込)
HPP-1008

1. 始まりの歌
2. want
3. キラキラ
4. 恋って
5. それなりの生活

プロフィール

緑黄色社会
緑黄色社会(りょくおうしょくしゃかい)

2012年活動開始。Vocal長屋晴子の力強く透明で時に愛らしい独特な歌声、キーボードpeppeの型にはまらないフレーズ、Guitar小林壱誓の柔らかいコーラス、バンドを支える最年少、穴見真吾のBass Line。同級生3人と幼馴染で組まれ、お互いを知り尽くした四人がそれぞれの個性を出し合い、様々なカラーバリエーションを持った楽曲を表現し続けている。2013年 SCHOOL OF LOCK × Sonymusic 10代音楽フェス「閃光ライオット」準グランプリ。2017年1月11日初の全国流通盤となる1st Mini Album「Nice To Meet You??」をタワーレコード限定でリリースし、4月7日には初のワンマンライブをell.FITS ALLにて開催、Sold Outとなる。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. ドラマ『ここぼく』が描いた日本社会のいま。危機感と真実の追及 1

    ドラマ『ここぼく』が描いた日本社会のいま。危機感と真実の追及

  2. 佐藤健とシム・ウンギョンが共演 サントリーウイスキー「知多」新動画 2

    佐藤健とシム・ウンギョンが共演 サントリーウイスキー「知多」新動画

  3. 記録映画『東京オリンピック2017』に七尾旅人らがコメント ポスター到着 3

    記録映画『東京オリンピック2017』に七尾旅人らがコメント ポスター到着

  4. スチャとネバヤン、同じ電波をキャッチしちゃった似た者同士 4

    スチャとネバヤン、同じ電波をキャッチしちゃった似た者同士

  5. 羊文学を形づくる「音」 6つの日本語曲を選んで3人で語り合う 5

    羊文学を形づくる「音」 6つの日本語曲を選んで3人で語り合う

  6. 坂口恭平が語る「死なないという勝ち方」。画狂老人・北斎に学ぶ 6

    坂口恭平が語る「死なないという勝ち方」。画狂老人・北斎に学ぶ

  7. ジム・ジャームッシュ特集上映ポスター&チラシ12種、大島依提亜がデザイン 7

    ジム・ジャームッシュ特集上映ポスター&チラシ12種、大島依提亜がデザイン

  8. 青春音楽映画『ショック・ドゥ・フューチャー』予告編、石野卓球らコメント 8

    青春音楽映画『ショック・ドゥ・フューチャー』予告編、石野卓球らコメント

  9. 自己不信や周囲の目にどう向き合う? 女性アスリートの6篇の物語 9

    自己不信や周囲の目にどう向き合う? 女性アスリートの6篇の物語

  10. ちゃんみなが経験した、容姿に基づく中傷と賛美 自らラップで切る 10

    ちゃんみなが経験した、容姿に基づく中傷と賛美 自らラップで切る