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醒めた世代の表現者たち 佐藤麻優子と関川航平『1_WALL』対談

醒めた世代の表現者たち 佐藤麻優子と関川航平『1_WALL』対談

第18回『1_WALL』作品募集
インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

言語化し得ない「わからない」範疇は広大にある。それを流通しやすい言葉に変換してしまいたくはない。(関川)

—「醒めてる」けど「活き活き」している、とはどんな感覚ですか?

関川:別に、陽気なキャラになりたいとかではなくて。手に負えないような謎や、考えるほどにわからなくなるものに関心があるから、そこへ安易に解像度の低い言葉をあてて、フムフムとか言ってるのはマジでクソだと思ってしまう。自分でそうしてしまうのも、人からそうされるのも。そこには言葉の解像度をもっと上げれば、さらなる謎があるはずだし、そこに関しては積極的でありたいんです。

関川航平

関川航平『片耳をふさぐ』(2017年)スパイラルで行われたいくつかの過去に見た風景についてと、実際にパフォーマンスをしている場所から見える風景についてをごちゃまぜにして、即興で喋りつづけるパフォーマンス作品。 撮影:市川勝弘 画像提供:スパイラル / 株式会社ワコールアートセンター
関川航平『片耳をふさぐ』(2017年)スパイラルで行われたいくつかの過去に見た風景についてと、実際にパフォーマンスをしている場所から見える風景についてをごちゃまぜにして、即興で喋りつづけるパフォーマンス作品。 撮影:市川勝弘 画像提供:スパイラル / 株式会社ワコールアートセンター

佐藤:「解像度の低い言葉」っていうのは、すごくわかります。そこへの疑問みたいなものはたぶん関川さんの方が「アツい」気がして、それは作品が生まれるまでの時間のかかり方とか、表現の手法の違いもあるのかな。

私は、世の中に出すならある種の「わかりやすさ」もなきゃいけないなと思っていて。これって逆に言うと、他者にそこまで自分の考えをわかってほしい気持ちがないのかな。そこまで「こんなことを考えてます」って深く知られるのは恥ずかしい部分もあって。

左から:佐藤麻優子、関川航平

関川:僕は「わかりやすい」「わかりづらい」というのは、区別できている時点でどちらも「わかる」の範疇だと思っている。そのどちらでもなく、言語化し得ない「わからない」範疇がもっと広大にあると考えています。

それを表現という行動に移す際には「モヤモヤと」とか「なんとなく」という言葉を便宜的にあてはめて、なにかがスタートする。でもその土台には、普段使いの言葉以外による深い「納得」があるはずで。最近は、「そこには別の言語感があるんだ」と認めたいと考えている。それが「わからない」の領域を探っていくためのはじまりだと思っています。

大事なのは、「わからなさ」に触れてるな、という実感をどうやって失わないようにするか。(関川)

—「わからない」領域の重要性についてのお話は、表現する側だけでなく、それを見る人にもありそうですね。

関川:そうですね。例えば展覧会に行って、パッと見で「色が綺麗だな」「形が良いな」というのは言葉の領域の話。だけどその前に、もっと無自覚で「◎△$♪×¥●&%#?!」みたいな言語にならない感覚があるはず。

この最も温度のある状態が冷え固まっていくことで「綺麗だと感じた」って言葉になるんだと思う。それはカンマ何秒のできごとかもしれませんが、そのことは忘れずにいたい。『1_WALL』に出したドローイング作品をひとつの区切りとすれば、それ以降僕は、言葉に対してより関心が強いのかもしれません。

左から:佐藤麻優子、関川航平

佐藤:確かに。「わからなさ」がすごくよくわかった気がします。

関川:そこでややこしいのは、だからといって言葉にする行為を敵視する必要は全然なくて。僕と佐藤さんの共通点が、ある「わからなさ」に触れたいということなら、それは僕らがその「わからなさ」に触れてると実感できた瞬間を知っているからだと思う。それをどうやって、失わないようにするかっていうことが大事だと思います。

—今日のお話は、これから『1_WALL』への応募を考えている方にもヒントになるのではと思いました。お二人の感じる『1_WALL』らしさのようなものはありますか?

関川:逆に、特定の傾向がないのが良くて、それは僕が応募した理由でもあったかもしれません。平面表現が基本とはいっても、例えばファイナリストのグループ展は、壁から90cmまでの空間は使えるルールなので、パフォーマンスをやってきた身としては「肩幅くらいで動くならイケるかな?」と思ったり(笑)。実際の応募作品のバリエーションが増えれば、多様さはさらに広がるでしょうね。

第18回『1_WALL』作品募集フライヤー
第18回『1_WALL』作品募集フライヤー

—最終プレゼン自体をパフォーマンスの形で行ったAokidさん(第12回グラフィック部門グランプリ)や、WEB技術と絵画表現の可能性を交差させる藤井マリーさん(第16回グラフィック部門ファイナスト)のような方もいますね。

佐藤:私は、『1_ WALL』は審査側にも多様な方々がいるのがいいなと思っていました。最初に知ったのはグラフィック部門を通じてですし、写真部門もその領域の専門家だけではないので、だから自分も出そうと思えた。

そういう多彩な観点から見てくれるコンペって珍しいと思うし、審査を通じて自分についても理解を深めていけた感覚がありました。「そうだ、私はこういうことを思ってたんだ」と新しく伝えられる言葉が見つかることもあった。そういう自らの理解を深めたり、発見の機会があるのが良いですね。

佐藤麻優子

—最後に、近々でお二人の活動にふれられる情報があればぜひ。

関川:いま横浜のBankART1929で開催中の『BankART LifeV~観光』で、『以外の見る』という新作パフォーマンスを行っています。展示会場の一部屋で僕がほぼ毎日、なにかしらやっています。油粘土で文字を書いたりしていて、ちょっとお客さんは入ってきづらいようなんですけど(苦笑)、よければぜひ見に来てください。

佐藤:私は『代官山フォトフェア2017』に『1_WALL』を紹介する場が設けられることになり、そこに出展予定です。新作を出したくて、『1_WALL』のコンペ時にも話した、男女の性差にまつわる感情を起点にした写真が撮れたらと思っています。

—今後のご活躍も楽しみにしています。今日はありがとうございました。

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イベント情報

第18回『1_WALL』作品募集

応募受付期間:
[グラフィック部門]
2017年11月24日(金)~12月1日(金)
[写真部門]
2018年1月11日(木)~1月18日(木)

審査員:
[グラフィック部門]
川上恵莉子(アートディレクター)
菊地敦己(グラフィックデザイナー)
白根ゆたんぽ(イラストレーター)
大日本タイポ組合
都築潤(イラストレーター)
[写真部門]
飯沢耕太郎(写真評論家)
鈴木理策(写真家)
百々新(写真家)
姫野希美(赤々舎代表取締役、ディレクター)
増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)

『BankART LifeV~観光』

2017年8月4日(金)~11月5日(日)
会場:神奈川県 横浜 BankART Studio NYK、ほか

『代官山フォトフェア2017』

2017年9月29日(金)~10月1日(日)
会場:東京都 代官山ヒルサイドフォーラム、ヒルサイドプラザ

「1_WALL」グランプリ受賞者トークセッション

2017年9月29日(金)17:00~18:30
会場:東京都 代官山ヒルサイドフォーラム、Exhibition Room
参加費:500円
定員:40名
お申し込み:当日先着順(フェア会場入り口にお集りください)
登壇:
吉田志穂(写真家)
青木陽(写真家)
浦芝眞史(写真家)
佐藤麻優子(写真家)
田中大輔(写真家)

プロフィール

佐藤麻優子(さとう まゆこ)

1993年3月7日東京生まれ、埼玉県育ち。専門学校 桑沢デザイン研究所中退。第14回写真『1_WALL』グランプリ。個展「ようかいよくまみれ」開催。

関川航平(せきがわ こうへい)

美術作家。1990年生まれ。パフォーマンスやインスタレーション、イラストレーションなど様々なアプローチで、作品を介して起こる意味の伝達について考察している。

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