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台風クラブが語る、シンプルだからこそ奥深いロックと日本語の話

台風クラブが語る、シンプルだからこそ奥深いロックと日本語の話

台風クラブ『初期の台風クラブ』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:馬込将充 編集:山元翔一

歌って「予言の自己実現」みたいなところがあって。

—夏は嫌いだけど、歌詞のモチーフにはなりやすい?

石塚:夜中にウロウロしてるシーンとかも、冬だと寒くてできないから、夏の感じがあると思うんです。昔、ひとりで夜中に録音したラジオを聴きながらチャリで出ていって、日が出てから帰ってきたりしてたんですけど、そういう時間がめちゃめちゃ好きで……って自分で言いながら、そんなことが趣味って怖いですね(笑)。

—逃避願望みたいなものがあったのでしょうか?

石塚:逃避するようなところを走ってたわけでもないんですよね……京都の南のほうって、工場があったりしてクサクサしてるんですけど、そういうところを夜中に走るのがめっちゃ楽しかったんですよ。

—さっきTheピーズの話もしましたけど、石塚さんにはどこかルーザーのような感覚があって、それが台風クラブの楽曲にもつながっていたりしますか?

石塚:僕は底辺っちゃ底辺だと思うんですけど、それを売りにするのもみっともないし……適切に言葉を置いていこうとは思ってます。ルーザーであることを押しにするバンドってたくさんいましたけど、「紋切り型のルーザー像」に則っているだけだと、「それは全然ちゃうな」って思うんですよね。

石塚淳

石塚:歌って「予言の自己実現」みたいなところがあって、歌ってるうちに、どんどん再帰的に強化されていくんですよね。昔、“2013年のピンボール”という歌を作ったんですけど、歌ってると、マジで貧乏とかへっちゃらになってきて、「ブルースマンが歌ってた効能ってこれか?」って自分で思いました。どんどん笑い飛ばせていくんですよ。

—決して明るい内容じゃないんだけど、それを明るく歌って笑い飛ばすっていうのはポイントですよね。

石塚:浅川マキさんとかも歌詞はすごく寂しい感じですけど、聴いてて全然そうは思わないですからね。それが歌の不思議なところかなって思います。

—今の文脈で、自分を表す「この1曲」みたいなのを挙げることってできますか?

石塚:難しいですね……頭のなかでルーレットが回って、たまたま止まったやつですけど、ブルースビンボーズの“バビロンのぬくもり”という曲はいつ聴いてもほんま最高ですね。「人の忘れっぽさとかも肯定してるんちゃうん?」って思って、いつ聴いても考えさせられます。

今後は何も考えてない。「バンド編成で音楽をやりたい」っていうくらいです。

—台風クラブというバンド名に関しては、相米慎二監督の映画のタイトル(1985年公開の『台風クラブ』)にちなんでいるわけですよね?

石塚:そうなんですけど、失礼な話、相米さんや映画自体にものすごく心酔してるわけではないんです。バンド名を決めるときに、思想とかを反映した名前じゃなくて、サクッと、でもイカした単語にしたいと考えていて。「昔、夜中に変な映画見たな」ってモヤッとしたものが残る感じと一緒に、この映画が記憶のなかに残っていたんですね。なんというか、「いい匂いがする」みたいな印象もあって、この名前をつけたところはあります。

—夜中に見たというのも相まって、映画にあったモヤッとした感じに惹かれたと(笑)。

石塚:バンド名を決めたあとに入った、山さん(山本啓太 / ベース)がバリバリ映画畑で働いてて、一番好きな監督が相米慎二やったっていうオチなんですけどね。ただ、バンドを結成してからも見返してはないです。

台風クラブ
台風クラブ

—では、歌詞における小説の影響はいかがでしょうか?

石塚:本は好きで、高校の頃は古本屋で100円のをよく買ってましたけど、体系的には読んでないです。ただ、江戸川乱歩だけはホンマに好きで集めていました。

—印象に残っている作品などはありますか?

石塚:佐藤春夫(近代日本の詩人・作家)の『都会の憂鬱』(1923年)っていう作品ですね。有名な『田園の憂鬱』(1919年)の後日譚で、作家を目指してる主人公の話なんですけど、めちゃめちゃ身につまされるんですよ。何もできないまま歳を取った江森渚山って登場人物がいて、「俺かあいつか」みたいな、めちゃめちゃ面白いけど怖いっていう。

—音楽家としての今後についてはどう考えているのでしょうか?

石塚:いや、何も考えてないです。1stアルバム出すことになったのも、「曲たまってきたし、今年出したいな」と思って、レーベルの人に連絡しただけで。長期目線で何かを目指すという意識は全然ない。「バンド編成で音楽をやりたい」っていうくらいですね。

好きなレコードを買って、「こんなんやりたい」って無意識に蓄積されたものを、やっと集まったこの三人で出す。それをやるだけです。ちゃんとしたプレスCDで出てますけど、こういうことになってるのも「すごいなあ」って、自分でも変な感じっすね。

石塚淳

台風クラブ『初期の台風クラブ』ジャケット
台風クラブ『初期の台風クラブ』ジャケット(Amazonで見る

—アルバム以降の新曲に関してはどうでしょう? 何かモードに変化はありますか?

石塚:しばらくアルバムのレコーディングばっかりだったんで、新曲はまったく作ってないんです。やっぱり、働きながら、暮らしながら音楽やるってなると、そうなっちゃうんですよね。ギターを持つ時間がなかなか作れないから、そこは「戦ってかななあ」って感じなんですけど。

年に1回アルバムをリリースして、そのあとあちこちツアーを回るとか、そういう普通のロックバンドらしい活動はできないですから。かといって何も気にはしてないですけど。とにかく音楽ができる状況に自分を持っていく、そして音楽をやるっていうのが一番大事なんです。

石塚淳

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リリース情報

台風クラブ『初期の台風クラブ』
台風クラブ
『初期の台風クラブ』(CD)

2017年8月23日(水)発売
価格:2,052円(税込)
LNCM-1211

1. 台風銀座
2. ついのすみか
3. ずる休み
4. ダンスフロアのならず者
5. 相棒
6. 春は昔
7. 42号線
8. 処暑
9. 飛・び・た・い
10. まつりのあと

プロフィール

台風クラブ
台風クラブ(たいふうくらぶ)

山本啓太(Ba)、石塚淳(Vo,Gt)、伊奈昌宏(Dr)によるスリーピースバンド。京都を拠点に活動を行う。2016年11月、本秀康主宰の「雷音レコード」から7インチアナログ『ずる休み/まつりのあと』をリリース。2017年4月22日、7インチアナログ『相棒 / 飛・び・た・い』を、同年8月23日、初の全国流通盤フルアルバムとなる『初期の台風クラブ』を発表した。

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