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なぜピーター・バラカンは自らを「評論家ではない」と語るのか?

なぜピーター・バラカンは自らを「評論家ではない」と語るのか?

『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:鈴木渉 編集:山元翔一、久野剛士

「自分は評論家ではなく、あくまで音楽ファンの延長線上で仕事をしている」。そう言い切るピーター・バラカン監修の音楽フェス『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』が、10月21日と22日の2日間にわたって、恵比寿ガーデンプレイスで開催される。「ルーツミュージック」をひとつの軸としつつ、現代に接続するラインナップはここでなければ味わえないものばかり。4年目を迎える今年も非常に多彩な面々が集い、きっと新たな音楽との出会いの場となるはずだ。

ラジオDJやテレビの司会を務めつつ、40年以上に渡ってここ日本で世界の音楽を紹介し続けてきた彼は、いまの音楽シーンをどのように見つめているのか? その言葉からは、確かな説得力と強い音楽愛が伝わるはずだ。

自分がそれを本気でやっていることが伝われば、それなりに聴いてくれる人はいます。

―40年以上にもわたってラジオDJを続けられているピーターさんのラジオ愛のルーツをお伺いしたいです。

ピーター:僕が子どもだった1950~60年代はラジオが一番力のある媒体だったんです。もちろん、テレビもあったんですけど、イギリスはテレビのチャンネルが1960年代半ばまでBBCと民放の2つしかなかったんですよ。日本はアメリカの影響で早くから民放が複数あったので、イギリスの方が素朴だったんですよね。あとは海賊ラジオもあったし、そういうラジオ黄金時代の影響をもろに受けていて、そこに可能性を感じました。

ピーター・バラカン
ピーター・バラカン

―実際にDJをやりたいと思うようになったきっかけは?

ピーター:自分でもやりたいと思ったのは、チャーリー・ギレットという人の存在が大きいです。いわゆるDJとは違って、すごく静かに、淡々と、僕好みの音楽を紹介してくれる人でした。おそらく本人も、DJというよりは、「僕はラジオでレコードをかけてるだけ」とか、そんなことを言いそうな感じ。友達の家に行って、部屋でいろんなレコードをかけてもらって、そこで話してるような雰囲気かな。その人に大学のときに出会って、「自分もこういうことがやりたい」と思っていたら、運よく日本でそれをやらせてくれる放送局があって、それがいまも続いてるんです。

―やっぱり、音楽を紹介してくれる人の存在ってすごく重要ですよね。

ピーター:友達同士だったら正直に何でも言うじゃないですか? 僕も同じようにやりたいし、その方が説得力があると思うんです。僕はラジオで自分の好きな曲しかかけないので、ときどき「何でそうなのか?」って訊かれるんです。そういうときは「選曲する基準に、自分の好き嫌い以外何があるんですか?」って、逆に訊いちゃいます(笑)。自分がいいと思ってるから選ぶ。そうでなければ、リスナーに対して説得力がないんじゃないかな。

―ピーターさんはよく「自分はジャーナリストではない」とおっしゃってますよね。

ピーター:よく「評論家」とも言われるんですけど、自分では一度も名乗ったことがないです。評論家っていうのは、何でも聴く人で、それを客観的に分析して、伝える人。それも大事な役割ですけど、僕は一切そういうことはしていません。自分の興味のあるものしか聴かないし、好きなものしか紹介しない。そんなの評論家と呼んじゃいけない。僕は音楽ファンの延長線上でこの仕事をしてるんです。「甘い」と言われるかもしれないけど、仕事がある間は甘えさせていただきます(笑)。

ピーター・バラカン

『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』イベントポスター画像
『Peter Barakan's LIVE MAGIC!』イベントポスター画像(イベント情報を見る

レコード会社が自分で自分の首を絞めた時期があったように思います。

―「音楽ファンの延長線上」という視点から見て、「CDからサブスクへ」という音楽の聴かれ方の変化はどのように感じていますか?

ピーター:媒体はずっと変わっていくものなので、使う人の使い方次第だと思います。Spotifyみたいなストリーミングにはほとんどの音源があって、検索も簡単ですよね。

僕の話で言うと、選曲のときに「あの曲何分何秒だっけ?」って調べるために、いちいちCDを探さなくていいから、ものすごく便利(笑)。だから、ある程度知識のある人だったら、自分で検索して掘り進められる。そうじゃない人はある程度のキュレーションが必要かもしれない。ただ、友達とかキュレーションのプロが選んでるのを見ればいいし、SNSの機能もあるから、使い方はいくらでもあると思います。

昨年の『LIVE MAGIC!』、サニー・ランドレスのステージ(撮影:Tatsuya Nakayama)
昨年の『LIVE MAGIC!』、サニー・ランドレスのステージ(撮影:Tatsuya Nakayama)

―日本もこれからサブスクの比率が増えていきそうですよね。

ピーター:日本はCDの値段を高くし過ぎたと思います。そして、アルバムはもっと短いものでよかった。CDは75分から80分入るけど、人の集中力はそんなに続かないし、10曲全部いいアルバムを作るのだって大変なのに、それ以上の曲数で全部いいって、すごく大変なことですよね。

3,000円払って、実際聴いてるのはそのうち3曲とかってなると、MP3に流れるのは当然。つまり、レコード会社が自分で自分の首を絞めた時期があったように思います。利益だけを追求しても何もいいことはなくて、送り手と受け手の信頼関係が壊れてしまう。これが一番怖いことです。

―それはラジオ局やDJとリスナーの関係においても言えますよね。

ピーター:もちろんそうです。リスナーの信頼を失ったら、誰も聴いてくれない。たとえ地味なことをやっていても、自分がそれを本気でやっていることが伝われば、それなりに聴いてくれる人はいると思いますよ。イギリスには1960年代後半からずっとBBCで番組をやっていたジョン・ピールという伝説のDJがいて、彼の好みはすごく変なんです(笑)。でも、彼が本気だっていうことはすごく伝わるので、聴いていて面白いんですよね。

昨年の『LIVE MAGIC!』、NAOITO のステージ(撮影:Hiroki Nishioka)
昨年の『LIVE MAGIC!』、NAOITO のステージ(撮影:Hiroki Nishioka)

―1990年代のイギリスのロックを聴いて育った身としては、ジョン・ピールの存在は大きいです。ジャイルス・ピーターソンにしても、名物DJの存在は国を越えて大きな影響力を持っていますよね。

ピーター:あの人(ジャイルズ・ピーターソン)もジョン・ピールとかの影響を受けていると思います。ダンスミュージック、クラブサウンドに関しては第一人者で、ひとつの形を作り上げた人ですよね。

―いまはすごく売れてるものとそれ以外がはっきりと分かれてしまっているように感じますが、その溝を埋める紹介者がたくさんいて、その中で自分に合うと思った人の曲を聴いてみれば、新たな発見もあるし、多様性が保たれますよね。

ピーター:そうだと思います。僕が一時期InterFMの編成をやってたときは、まさにそうやって各ジャンルの音楽に精通した人をDJとして連れてきて、番組をやってもらって、かなり上手くいってるなと思ったんです。ただ、口コミが広がるには時間がかかるから、これを続けていかないとって思ってたんですけど……上手くはいかなかった。各局がもっと真剣に取り組めば、いくらでも面白いものが作れるんじゃないかと思ってます。

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イベント情報

『Peter Barakan's LIVE MAGIC! 2017』

2017年10月21日(土)、10月22日(日)
会場:東京都 恵比寿ガーデンプレイス、ザ・ガーデンルーム
10月21日出演:
Soulive
The New Stew
The Renaissance(小原礼&屋敷豪太) feat. 西慎嗣
Playing For Change
濱口祐自
民謡クルセイダーズ
トリプルファイヤー
The Steve McQueens
The Flowerpot Men
10月22日出演:
Omar Sosa & Seckou Keita feat. Gustavo Ovalles
We Banjo 3
The New Stew
Myahk Song Book - 與那城美和・松永誠剛
濱口祐自
Quarter To Africa
Robert Ellis
BimBamBoom Acoustic Special Band
料金:1日券12,000円 2日間通し券21,000円

プロフィール

ピーター・バラカン

1951年ロンドン生まれ。ロンドン大学日本語学科を卒業後、1974年に音楽出版社の著作権業務に就くため来日。現在フリーのブロードキャスターとして活動、『バラカン・ビート』(インターFM)、『ウィークエンド・サンシャイン』(NHK-FM)、『ライフスタイル・ミュージアム』(東京FM)、『ジャパノロジー・プラス』(NHK BS1)などを担当。著書に『ロックの英詞を読む~世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『ラジオのこちら側』(岩波新書)『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『猿はマンキ、お金はマ ニ』(NHK出版)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫)などがある。

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