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高田漣が「ブルース」を語る。余裕のない今の日本にこそ必要な歌

高田漣が「ブルース」を語る。余裕のない今の日本にこそ必要な歌

高田漣『ナイトライダーズ・ブルース』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:沼田学 編集:山元翔一
2017/10/12
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没後10年を機に、父・高田渡へ捧げたトリビュート作品『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』から2年、高田漣が『ナイトライダーズ・ブルース』をリリースした。今作は、1970年代に高田渡、はっぴいえんど、あがた森魚などを輩出し、日本のフォーク / ロックの歴史に偉大なる足跡を残したレーベル「ベルウッド・レコード」から初めてのリリースとなる、高田漣のオリジナルアルバム。「血」は、まだそこに流れ続けている、というわけだ。

……と、少しばかり堅苦しい書き出しで始めてみたが、実際のところ、『ナイトライダーズ・ブルース』はとても軽やかだ。めちゃくちゃ踊れて、笑えて、でも実は泣けて……でも、やっぱり踊れて笑える、そんなアルバム。細野晴臣、林立夫、鈴木茂から成る「TIN PAN」や、長岡亮介(ペトロールズ)、佐藤良成(ハンバート ハンバート)といった豪華ゲスト陣も集った本作で高田は、「邦楽」であること、そして、自分自身の原点に立ち返ること――そうした様々な命題を抱えながら、どの時代、どんな状況にいても、人が生きている限り存在する「ブルー」な気分に向き合おうとする。そして、そこから生まれ落ちる音楽……つまり「ブルース」を、この2017年の日本に再定義しようとしている。

日常にあるちょっとした情けないことや、失敗しことのなかに、僕はある種の「ブルース」を感じるんです。

―新作『ナイトライダーズ・ブルース』を聴いて、思い出した言葉があったんです。The Whoのギタリスト、ピート・タウンゼントの言葉なんですけど……。

高田:ピート・タウンゼント!?(パッと目を輝かせる)

―「ロックンロールは、俺たちを苦悩から解放してもくれないし、逃避させてもくれない。ただ、悩んだまま踊らせるんだ」という言葉です。『ナイトライダーズ・ブルース』で鳴っているのも、この言葉のように、悲しみや苦悩を根底にしながら、踊り明かすような音楽だなぁと。

高田:うんうんうん……あんまり言ってきてないんだけど、僕、The Whoが大好きなんですよ。家で思い悩んだときは、だいたいThe Whoのライブ映像を見ますよ。そうすると、悩みなんか吹っ飛ぶんです。The Whoは最高のバンド。まったく自分の音楽性には活きていないんだけどさ(笑)。

高田漣
高田漣

高田:でも、すっごく好き。今回のアルバムって、かつてなく「自分が聴きたい音」のアルバムなんですよ。さらにハッキリ言っちゃうと、僕、あんまり人のことを応援したくないんですよね(笑)。

―ははははは(笑)。

高田:でも、だからといって他人のことが嫌いなわけでもないんですよ。失敗した人に、「頑張れよ」って言うよりも、「お前、何やってんだよ。情けねえなぁ」って一緒に笑ってあげる……今回のアルバムの歌のニュアンスって、そういうものだと思う。だから、The Whoって表現してくれたのはわかります。

―ピート・タウンゼントの場合は「ロックンロール」でしたけど、高田さんの場合、今作のタイトルに冠された「ブルース」という言葉が、そうしたアルバム全体のニュアンスを象徴するものなのでしょうか?

高田:そうですね。今回のアルバムのサウンドは、決して、音楽形式としての「ブルース」ではないんですよ。ただ、日常にあるちょっとした情けないことや、失敗しことのなかに、僕はある種の「ブルース」を感じるんです。

「魂の叫び」というよりは、朝起きたら二日酔いで、「昨日、なんであんなに飲んじゃったんだろうな」って後悔したり、街を歩いていたらやけに目が合う女の子がいて、「俺のこと好きなんじゃないか?」って勘違いしたり(笑)。そういう日々の他愛のないことのなかにある愛おしさを、今回は歌いたいなぁと思って。

高田漣

―そこに向かったのは、なぜだったのでしょうか?

高田:2年前の『高田渡トリビュート』(『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』)の影響はあると思います。声高に何かを叫んだり、社会の不正を突いたりすることがなくとも、僕らは生きていますよね。どんなことがあっても、毎朝起きて、仕事に行って、生きている。そういう日々を、もうちょっと大事にしたいなって思ったし、今の日本の社会には、そんなことを歌ったものがあってもいいんじゃないかって思ったんです。だって今、みんな本当に余裕がないじゃないですか。

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リリース情報

高田漣『ナイトライダーズ・ブルース』
高田漣
『ナイトライダーズ・ブルース』(CD)

2017年10月4日(水)発売
価格:3,000円(税込)
KICS-3525

1. ナイトライダー
2. ハニートラップ
3. Ready To Go ~涙の特急券~
4. Take It Away, Leon
5. Sleepwalk
6. ハレノヒ
7. ラッシュアワー
8. 文違い
9. 思惑
10. バックビート・マドモワゼル

プロフィール

高田漣
高田漣(たかだ れん)

1973年、日本を代表するフォークシンガー・高田渡の長男として生まれる。少年時代はサッカーに熱中し、14歳からギターを始める。17歳で、父親の旧友でもあるシンガーソングライター、西岡恭蔵のアルバムでセッションデビューを果たす。スティール・ギターをはじめとするマルチ弦楽器奏者として、YMO、細野晴臣、高橋幸宏、斉藤和義、森山直太朗、等のレコーディングやライヴに参加。ソロアーティストとしても6枚のアルバムをリリース。2007年、ヱビス「ザ・ホップ」、プリングルズのTVCMに出演。同年夏、高橋幸宏の新バンド構想の呼びかけにより、原田知世、高野寛、高田漣、堀江博久、権藤知彦の計6人で「pupa」結成。2013年、映画『横道世之介』(原作:吉田修一、主演:高良健吾・吉高由里子、監督・脚本:沖田修一)、『箱入り息子の恋』(監督・脚本:市井昌秀、主演:星野源・夏帆)、シティボーイズの公演~シティボーイズミックス PRESENTS『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』の音楽を担当。2013年6月、豪華ゲスト陣が参加したソロアルバム『アンサンブル』をリリース。2015年4月には高田渡の没後10年を機にトリビュートアルバム『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』をリリース。2017年10月4日に『ナイトライダーズ・ブルース』を発表した。

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