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APOGEEが語る、異端児として戦った10年。今、時代の中心に至る

APOGEEが語る、異端児として戦った10年。今、時代の中心に至る

APOGEE『Higher Deeper』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也 編集:山元翔一
2018/03/30

APOGEEが約3年半ぶりとなるニューアルバム『Higher Deeper』を、3月21日に発表した。活動休止を経ての復活作となった前作『OUT OF BLUE』で海外におけるチルウェイブ~インディーR&Bの流れとリンクした彼らは、「今」という時代を存分に享受し、文字どおり「ハイな高揚感とディープな酩酊感」が同居する、APOGEE印の素晴らしい作品を作り上げた。

これまでの彼らを追いかけてきたファンの方ならご存知のとおり、シンセサウンドとグルーヴを最大の武器とするAPOGEEというバンドは、2000年代後半のロックシーンにおいては異端児的な存在であり、その歩みは決して平坦なものではなかった。しかし近年、R&Bやソウルの文脈を現代的に消化した若手バンドが数多く登場するなかにあって、彼らはもはや「先駆者」と言っても過言ではない立ち位置にいる。さあ、今APOGEEを聴かずして何を聴く。それだけの時代性と普遍性が、『Higher Deeper』という作品には確かに詰まっている。

変化というよりは、今の体制が安定した感じ。(大城)

—約3年半ぶりのニューアルバムが完成しました。このスパンは想定内か、予想よりも時間がかかったか、どちらが近いですか?

永野(Vo,Gt):想定内かな。僕らとしては、「3年に1枚出せれば」くらいに思っていたので。

大城(Syn,Programming):ゆっくりしてた感じはないよね。信じてもらえないと思いますけど、ちょっと巻いた感すらあるんです(笑)。

左から:大城嘉彦、永野亮
左から:大城嘉彦、永野亮

—この3年で、バンドの活動ペースには何か変化がありますか?

大城:変化というよりは、今の体制が安定した感じだよね。

永野:そうだね。メジャーでやってた頃は、みんなでスタジオとかに集まって音を鳴らすっていう、いわゆるバンドっぽい作り方をしてたんですけど、前作からまず僕がデモを作って、みんなで音源をリレーみたいに回して作っていくやり方になって……。

大城:そのやり方で脂が乗ってきた感じですね。

—個人としてはいかがでしょうか? 永野さんは近年もたくさんのCM音楽を手がけられていますが、音楽との向き合い方や環境に何か変化はありましたか?

永野:個人として制作をしているときは、どんどん一人で掘り下げる作業をしてる感じなので、表現の幅はかなり広がっていくんですよ。そうすると、「これはAPOGEEでもできるかも」って思うんです。僕らはとにかく無節操なバンドなので(笑)、何でもバンドの表現として取り込んでいくっていうことはずっとやっていきたい。

永野亮

—余談ですが、「アイシティ」のCMが流れていたときに、「永野さんだ!」って喜ぶファンがいる一方で、「この曲って、ミツメ? D.A.N.?」みたいに、若いバンドの名前を挙げている人が結構いたのが面白かったです(笑)。

永野:ちょうど同じ時期に「コフレドール」のCMも放送されてたんですけど、そっちはブルーノ・マーズみたいなバリバリのR&Bだったんです。どっちも評判よかったんですけど、そのふたつが同時期に自分のなかから出てきたことは、客観的に見ても面白いなって。

永野:自分のスタイルがどんどん細分化されていくと、いろんな要素が混在して音楽的にはとっ散らかってまって。だけど、僕自身の作曲スタイルが多岐に渡っても、APOGEEというバンドで演奏して、自分が歌うっていうシンプルなところに落とし込めば、どの曲も違和感なく聴けるんですよね。それは今回、不思議だなって思いました。

正直、今のほうがやりやすいんですよ。(永野)

—“TOO FAR”や“RAINDROPS”といったシングルを踏まえて、アルバムとしてはどんな青写真がありましたか?

永野:“TOO FAR”ができたときに、APOGEEとしては珍しく力強い、覚醒するようなフィーリングがあったんですよね。ギターをバーンと鳴らしたり、強く歌ったりしているわけでもないけど、シンセやビートで総体としてそういう表現になっていて。浮遊感みたいなものはうちのバンドに絶対必要なので、幻想的な感じは引き継ぎつつ、そこにもうちょっと覇気があるというか。なので、アルバムとしては、前作のチルな感覚を引き継ぎつつも、力強い感覚が出せたらっていうイメージでした。

—“TOO FAR”のようにクラブミュージックをバンドで表現するっていうのは、近年のトレンドでもあり、APOGEEが以前からチャレンジしていたことでもありますよね。

永野:正直、今のほうがやりやすいんですよ。僕らが1stアルバム『Fantastic』(2006年)を出した頃って、ギターを中心としたサウンドが多かったので、地方のライブハウスとかに行くと、「ギターじゃないの?」って言われることもよくあったりして。

大城:ちゃんと説明しないと、シンセのバランスを異様に小さくされちゃうんです。

大城嘉彦

APOGEE『夢幻タワー』(2009年)収録曲

永野:昔からR&Bとか大好きだったけど、僕らもその頃は表現が拙くて、その文脈をどうバンドに落とし込んだらいいか、自分たちでもちゃんとはわかってなかった。でも、今は「インディーR&B」っていう言葉で語られるようなディープな音楽をバンドの文脈で語ることが当たり前になったから、すごくいい時代だなって。当時流行ったネオソウルとかが、リバイバルしたりね。

大城:当時はバンド界隈の人たちと好きな音楽の話をすることが少なかった気がするけど、この間PAELLASとライブ後に話したら、普通に話が合って、新鮮でした(笑)。

—『OUT OF BLUE』が出たときはチルウェイブからインディーR&Bへの移行期で、その後に日本でもR&Bやソウルの文脈を持ったバンドが一気に増えましたもんね。

永野:「今これやっていいのか」ってわかったから、「じゃあ、乗っかってやろう」みたいなね(笑)。

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リリース情報

APOGEE『Higher Deeper』
APOGEE
『Higher Deeper』(CD)

2018年3月21日(水・祝)発売
価格:3,000円(税込)
LTT8-0006

1. Coral
2. TOO FAR
3. Echoes
4. Higher Deeper
5. Sleepless
6. Into You
7. KESHIKI
8. In Between
9. Future/Past
10. RAINDROPS

ライブ情報

『APOGEEワンマンライブ2018「Higher Deeper」』

2018年9月22日(土)
会場:東京都 代官山UNIT
開場 17:00 / 開演 18:00

2018年4月1日(日)より各プレイガイド(e+、ローソンチケット、チケットぴあ)にてチケット一般販売開始

プロフィール

APOGEE
APOGEE(あぽじー)

2003年結成、メンバーは永野亮(Vo,Gt)、間野航(Dr,Cho)、大城嘉彦(Syn,Gt)、内垣洋祐(Ba,Cho)。2006年にシングル『夜間飛行』でデビュー以降、『Fantastic』『Touch in Light』『夢幻タワー』と3枚のアルバムを発表。徹底的に作り抜かれた無駄のないスリーピースと圧倒的な存在感を放つシンセサイザーの音色に、純粋に美しい歌声とメロディーが創り出すユニークなサウンドは、ロックという形だけにとどまらない普遍的な「歌」としての心地よさをも併せ持つ。ニューウェーブなど、80年代音楽の色濃い影響を受けながらも、ブラックミュージックやエレクトロニカを含めた数多くの音楽要素をハイブリッドさせた彼らの音楽は現在も多くの人々から支持されている。

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