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国府達矢の苦闘の歴史。空白の15年を埋めるべく七尾旅人と語る

国府達矢の苦闘の歴史。空白の15年を埋めるべく七尾旅人と語る

国府達矢『ロックブッダ』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一

3.11のときに思ったのは、自分の人生が時代に「同調」しているということ。(国府)

—『ロックブッダ』は15年ぶりにリリースされる国府さんのアルバムですが、実際のところ、2011年頃には一度、このアルバムは完成しているんですよね? 『+1Dイん庶民』(読み:プラスワンディーインショミン)という、本作の収録曲も収めたシングルも、2011年にはリリースされている。この時期から現在に至るまでの流れは、どのようなものだったのでしょうか?

国府:2005~6年頃に『ロックブッダ』につながる音楽は生まれはじめたんだけど、それを、当時一緒にやってくれていたバンドと形にしようと思っても、全く様にならなくて。それで数年間、封印せざるをえなくなったんです。

2009年ぐらいに、今回のファーストミックスを手伝ってくれたシンタロウ(SHINTARO TSURUDA)っていう男の子と出会ったことで、また話が具体化していき、2010年にはアルバムが一度完成した……んだけど、マスタリングに納得ができなかったことから、ミックスを見直す必要に迫られ、制作が泥沼化していった。で、結局、2013年の中頃にもう一度フィニッシュしたんだけど、そこでまた精神の崩壊があって、出すことができなかったんです。

国府達矢『ロックブッダ』を聴く(Spotifyを開く

七尾:震災後(東日本大震災)くらいまで、僕と国府さんはしばらく疎遠の時期があって。震災後、また年に1回くらい会う機会ができてくるんだけど、正直、震災後の国府さんは、見ていてキツそうだった。

—それは、震災という出来事が、国府さんになにかしらの影響を与えたということでしょうか?

国府:いや、直接的な影響はないんだよね。そもそも僕は、「時代がこうだから」っていう理由で動くタイプではないし、僕はタビィのように、被災地に行ったりしたわけでもないし。

ただ、3.11のときに思ったのは、自分の人生が時代に「同調」しているということ。とても個人的な、半径5メートルの範囲の問題ではあったんだけど、確実に、人生が時代に同調してグチャグチャになっていく感覚がすごくあった。そして、その廃人状態から起き上がっていくなかで、もう2枚のアルバムの構想ができてくるんです。その2枚のアルバムを、2016年頃から作りはじめました。

—今年は、『ロックブッダ』を皮切りに計3枚のアルバムのリリースが既にアナウンスされていますけど、その3枚が揃うということに意味があったということでしょうか?

国府:うん。自分のなかのバランスとして、『ロックブッダ』だけでは足りない、という感覚があって。「3つ揃ったら外に出よう」って思っていたんです。ただ言っておくと、この先に出る作品は、本当に暗い。さっき僕の音楽を「光」と言ってくれたけど、この先に出てくるものは、完全に影と闇に向かっていく。次と、その次のアルバムは、それぞれ「シンパシー」と「エンパシー」がテーマになっていて、「エンパシー」っていうのは、つまり「同調」っていうことなんだよね。

七尾:時代に対するエンパシーか……。すごくわかる。たぶん、それはみんな少なからず感じているものなんだよね。僕は、それに対する嫌悪感で生きてきたのかもしれない。時代から完全に逃れられる人間はいないでしょう。世の中のうねりと同調しかねない自分にも嫌悪感があって、泥沼のなかで足をとられながら、カウンターを打ち続けてきたような感じ。たぶん初期作品からずっと。

七尾旅人『リトルメロディ』収録曲

七尾:でも、いま作っているアルバムは、ちょっと違うんだよね。去年、大事な人が亡くなってさ。それもあって、一度、時代とは関係のない、すごくパーソナルなアルバムを作ろうと思っているんです。最初すごくつらかったんだけど、自宅スタジオに骨壷を置いて、ちょっとずつ録音しているうちに、感謝がこみ上げてきたりして、なんだか肩の荷が下りるというか、いままでの自分から、解き放たれていってるような感覚もあるんですよね。

国府:ええ話やと思う。僕も、この先に出るアルバムを作っていくなかで、歌とギターだけ、みたいな形で自分自身が肉体化されていったとき、「こんなにも暗いものだったのか!」って気づいたんだよ(笑)。それをそのまま表現するということは、これまでの自分にとっては禁じ手だったんだけど、いまの自分はそれを認めざるをえなかったし、認めてしまうことで、なんとか楽になれた。そのアルバムの曲だったら僕は、ギター1本担いで、日本全国いろんな場所を回って、人前で歌えるんです。

僕とタビィが特殊だと思うのは、単に人間的な仲のよさだけではなくて、表現としても刺激し合える関係であったこと。(国府)

—お話を聞いて思うのは、20年のときを経て、お二人の表現が、再び近しい場所に着地しようとしている、ということで。そしてそこには、「自分の言葉で話す」という、1990年代からお二人をミュータントたらしめていた本質が刻まれているのかな、と思います。

国府:僕とタビィが特殊だと思うのは、単に人間的な仲のよさだけではなくて、表現者としても刺激し合える関係であったこと。それは、すごく恵まれていたし、奇跡的なことだと思う。「タビィに応えたい」と思ったからこそ、倒れずにいることができたしね。

七尾:僕も、「国府さんが帰ってくるまでは踏ん張っていよう」ってずっと思っていたから。

左から:七尾旅人、国府達矢

七尾:実は、この次に出るアルバム『スラップスティックメロディ』が、国府さんの全作品のなかで一番好きなんです。『ロックブッダ』は彼の思想が結晶化したような凄まじい傑作だけど、その次の作品では、国府達矢の人間味、パーソナルな部分が前面に出ている。思想もなにもなくって、空っぽのなかに、ただ素のままの彼が浮かんでいるような、そんなアルバム。この3枚を並べて聴くと、15年ぶりに、欠けていたパーツがすべて埋まっていくような感覚があるんだよね。

—最後に国府さんに伺いたいのですが、『ロックブッダ』の5曲目に収録された“アイのしるし”は、MANGAHEAD時代の曲“Lines”を思わせる部分がありますよね?

国府:そうですね。“アイのしるし”では具体的に、“Lines”のサビを移植していて。恥ずかしい話をすると、この曲はタビィのことを歌っている曲なんですよ。

七尾:あぁ、そうなんだ……。

国府:この歌の奥には、MANGAHEADから自分のことを見てくれていた人たちを包み返したい、という気持ちもあって。ここでいう「アイ」っていうのは、「愛」っていう意味もあるんだけど、それ以外にも「目印」とか、「I(私)」とか、いろんな意味を込めているんですよね。あの頃から見てくれていた人たちも文脈的につなげて、救済できるような曲になればいいなと思ったんです。

左から:国府達矢、七尾旅人

国府達矢『ロックブッダ』ジャケット
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リリース情報

国府達矢『ロックブッダ』
国府達矢
『ロックブッダ』(CD)

2018年3月21日(水)発売
価格:2,808円(税込)
PECF-1149

1. 薔薇
2. 感電ス
3. いま
4. 祭りの準備
5. アイのしるし
6. weTunes
7. 続・黄金体験
8. 朝が湧く
9. 蓮華
10. Everybody's @ buddha nature

イベント情報

『国府達矢「ロックブッダ」リリース記念ライブ』

2018年4月20日(金)
会場:東京都 新代田 FEVER
出演:
国府達矢(ROCK BUDDHA FORM)
七尾旅人
skillkills

『skillkills / 国府達矢 (ROCK BUDDHA FORM) 九州ツアー』

2018年5月24日(木)
会場:熊本県 NAVARO
skillkills
国府達矢(ROCK BUDDHA FORM)
Mulletcut!

『UTERO 8th Anniversary Live』

2018年5月25日(金)
会場:福岡県 UTERO
skillkills
国府達矢(ROCK BUDDHA FORM)
New oil deals
the perfect me

プロフィール

国府達矢
国府達矢(こくふ たつや)

1998年、MANGAHEADとしてデビュー。2001年、国府達矢としてライブ活動を開始。2003年、国府達矢『ロック転生』をリリース。2007年、salyuに楽曲提供開始。2011年、salyu×salyu『s(o)un(d)beams』に2曲作詞で参加。2011年、ロックブッダシングル『+1Dイん庶民』をリリース。2017年7月より自主企画弾き語りイベント『onzou』を開始。すでに完成している3枚のオリジナル・アルバムのリリースを控え本格的に活動を再開。

七尾旅人(ななお たびと)

シンガーソングライター。これまで『911FANTASIA』『リトルメロディ』『兵士A』などの作品をリリースし、『Rollin' Rollin'』『サーカスナイト』などがスマッシュヒット。唯一無二のライブパフォーマンスで長く思い出に残るステージを生み出し続けている。即興演奏家としても、全共演者と立て続けに即興対決を行う「百人組手」など特異なオーガナイズを行いアンダーグラウンド即興シーンに地殻変動を与え続ける。その他、ビートボクサー、聖歌隊、動物や昆虫を含むボーカリストのみのプロジェクトなど、独創的なアプローチで歌を追求する。開発に携わって来た配信システムDIY STARSを使って「DIY HEARTS東日本大震災義援金募集プロジェクト」や、世界中の貧困地域、紛争地域から作品を募り流通回路を開く「DIY WORLD」も開設。年内にニューアルバム発売予定。

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