メジャーデビューしたTRI4THって? SOIL社長や人気作曲家に訊く

「踊れるジャズ」を体現する音楽性とライブパフォーマンスで人気のTRI4THが、メジャーデビューアルバム『ANTHOLOGY』を11月14日に発表した。

ジャズへの憧れから始まったバンドは、クラブジャズシーンの中でベーシックを形成し、その後にロックへと接近することで、独自のポジションを獲得。現在はもはやカテゴライズ不問であり、より大衆的な存在になり得る可能性を感じさせる。SOIL&"PIMP"SESSIONSの社長、『ANTHOLOGY』のサウンドプロデューサーであるシライシ紗トリ、ウェブマガジン&雑誌『フイナム』の宮崎諒太郎から届いたコメントを交えながら、TRI4THの過去・現在・未来を追った。

「ジャズを知らないジャズバンド」から「踊れるジャズ」へ

「挑戦の歴史」の末の、逆転ホームラン。「TRI4TH、メジャーデビュー」の一報を聞いて、僕の頭にはそんな痛快なイメージが浮かんだ。

そもそもTRI4THは「ジャズに憧れて始まったバンド」だった。最初期からのメンバーであるトランペットの織田祐亮とドラムの伊藤隆郎、2008年に加入したテナーサックスの藤田淳之介は、クラシックやロックをバックグラウンドに持つプレイヤーであり、楽器演奏の技術は高いものの、ジャズに関してはほぼ初心者。また、2009年に加入したベースの関谷友貴はバークリー音楽大学でジャズを学んだものの、TRI4TH以前はエレキベースがメインで、ウッドベースに本格的に取り組んだのはこのバンドが初めて。「ジャズ」というカテゴリーにおいては、ほぼほぼゼロからのスタートだったのだ(参考記事:TRI4THが抱く、反骨精神という名の向上心。挑戦の歴史を語る)。

そんな「ジャズを知らないジャズバンド」を見初め、プロデュースを買って出たのがDJ / プロデューサーとして長く日本のクラブジャズシーンに関わってきた須永辰緒。彼自身、パンク(とヒップホップ)を経由してジャズに傾倒していった経歴があり、当時のTRI4THに親近感を覚えたのかもしれない。主催イベント『夜ジャズ』への出演などを経て、2010年に発表された1stアルバム『TRI4TH』の帯には「踊れるジャズ」と記され、時期ごとにその意味合いを少しずつ変えながらも、今もバンドの代名詞となっている。

その後にメインコンポーザーだった初代のピアニストが脱退し、新メンバーとして竹内大輔を迎えるという最初の転機を経験。2012年にはファーストに続いて須永がプロデュースを担当した2ndアルバム『TRI4TH AHEAD』、翌2013年には初のセルフプロデュースにより、5人のメンバーの個性を凝縮させた初期の集大成とも言うべき3rdアルバム『Five Color Elements』を発表した。

左から:関谷友貴、竹内大輔、伊藤隆郎、藤田淳之介、織田祐亮

「背水の陣」からの、活動12年目でのメジャーデビュー

バンドはこの先でも貧欲に変化することを選んだ。伊藤が元・東京スカパラダイスオーケストラの冷牟田竜之率いるTHE MANに参加するなど、各自がプレイヤーとしてさらなる経験を積む中、もともと内包していた多彩な音楽性が、既存の「ジャズ」の枠では収まりきらなくなったということかもしれない。そこで、バンドのリーダーでもある伊藤が目指したのが、2012年に設立され、新たなジャズのシーンをリードし始めたレーベル「Playwright」からのリリースであった。

「現代版ジャズロック」をコンセプトとしたfox capture planを筆頭に、ロック色の強いレーベルカラーが、パンクやメタルを背景に持つ伊藤や関谷にフィットしたのだろう。レーベルコンピレーション『Family』への参加に続き、2015年にPlaywrightから初めて発表されたアルバム『AWAKENING』で、伊藤のプレイはロックドラムへと大きくシフト。結成10周年のベストアルバム『MEANING』を経て、2016年に発表された『Defying』によって、「踊れるジャズ」に加え、「ロック」という新たなカラーを文字通り定義づけた。

しかし、この変化はバンドにとって大きな賭けでもあった。伊藤は過去のインタビューで当時をこんな風に回想している。

伊藤:レーベルが変わるなら、サウンドも一新しようって決めて。ホントに背水の陣というか、「これでダメだったら、もう一回浮上するのは難しいだろう」くらいの思いがありましたね。

(2016年の『JAZZ A GO GO』出演時)僕らとしては、切迫した気持ちもあったんです。もうすぐ10年目なのに、このままじゃダメなんじゃないかって。「アルバムがアッパーな方向にシフトしたのに、パフォーマンスで人を乗せられないまま10年目を迎えるようじゃ解散だな」くらいの気持ち。

冒頭で触れた「逆転ホームラン」のイメージは、こんな時期を通過したからこそなのである。彼らはさらに歩調を早め、2017年には盟友・カルメラとのスプリット『HORNS RIOT』、元・東京事変の昼海幹音らをゲストに迎えた『4th Rebellion』をリリースし、2018年にはテレビアニメ『博多豚骨ラーメンズ』のエンディングテーマにインストながら抜擢された“DIRTY BULLET”をシングルカット。

さらにはメンバーの多彩なルーツを開示したカバーアルバム『Hybrid ROOTS』を経て、11月にアルバム『ANTHOLOGY』で活動12年目にしてメジャーデビューを果たしたのだ。

SOIL&"PIMP"SESSIONSからTRI4THへ、受け継がれる「アジテーター」の上手さ

『Hybrid ROOTS』には東京スカパラダイスオーケストラからtoeまで、様々なバンドのカバーが収録されていたが、TRI4THの直接的なルーツとなるのはSOIL&"PIMP"SESSIONS(以下、SOIL)とPE’Zの2バンドだと言っていいだろう。ともにジャズをパンキッシュに鳴らしたライブが話題を呼び、PE’Zは2002年、SOILは2004年にメジャーデビュー。2006年にメジャーデビューしたSPECIAL OTHERSも含め、まだ黎明期だったロックフェスにおいて、彼らのようなインストバンドは大きな話題を呼んだ。そんな先輩格にあたるSOILの社長は、メールインタビューにてTRI4THをこのように評価した。

社長:ドラムの人は別として(笑)、親近感の湧くキュートな笑顔のメンバーたち。なのに、ひとたびステージに立てば、その笑顔のまま薙刀やマシンガンやマスコンでグサグサと魍魎という名のオーディエンスをぶった切り、そしてまた笑顔で握手を求める。そんなバンドです。

前述のfox capture planやカルメラ以外にも、一足先にビクターからメジャーデビューしていたADAM atやjizueなど、ジャズとロックをクロスオーバーし、ライブシーンで頭角を現したバンドは少なくない。しかし、フェス文化が定着し、細分化された現在において、SOILやPE’Zと同様のインパクトを残すのは難しいことだと言えよう。

逆に言えば、今は様々なタイプのフェスに出演できることが、バンドにとっての強みとなる時代である。『東京JAZZ』のようなジャズフェスから、『中津川 THE SOLAR BUDOKAN』のようなロックフェス、近年のインストバンドの再興を受けて、2015年にスタートした『TOKYO INSTRUMENTAL FESTIVAL』まで、TRI4THは国内外の多様なフェスに参加している。

社長は彼らの「ライブバンド」としての魅力をこう語る。

社長:ドラムの人がね、曲の合間に熱く煽るんですよ。オーディエンスを。すごい目つきで。そーすると、オーディエンスは熱狂して声出すでしょ。その最高潮なタイミングでカウント出して曲がスタートするんですよ。何が言いたいかって、ライブってね、曲間がとても大事なんです。ドラマーがそれを完璧にコントロールできるって、最強なんです。またあのドラムの人はね、それが天才的に上手いんですわ。

『TRI4TH“Shout”Tour』11月18日、東京・渋谷ストリームホール公演

代表曲とも言える“Dance’em All”は、ドラム・伊藤の「踊ろうぜ!」という掛け声がファンにはお馴染みの一曲。関谷がウッドベースを振り回し、藤田がサックスを吹きながらフロアを練り歩く熱狂のライブにおいて、司令塔となるのが伊藤の存在なのだ。SOILの社長から、TRI4THの伊藤へ。ここにはアジテーターの系譜が確かに受け継がれている。

欅坂46、乃木坂46の作曲も手掛けるシライシ紗トリが語る

ニューアルバム『ANTHOLOGY』には、新曲4曲と、これまでの代表曲6曲の「Anthology ver」、そして最新シングル“DIRTY BULLET”を収録。リードトラック“Maximum Shout”はやはり伊藤の「HEY HO LET’S GO」というアジテーションが印象的で、パンキッシュな演奏に体を揺さぶられる一曲だ。

本作にサウンドプロデューサーとして参加したシライシ紗トリは、バンドの魅力について次のように語っている。

シライシ:「一心不乱に没入できる音の塊の気持ちよさ」でしょうか。TRI4THの生み出すサウンドは、音楽を知らない人でも、プロでも、本当に誰でも理屈抜きで身体が動きだして楽しめるサウンドだと思います。

そして、その秘密は、彼らのバランス感覚。ベタとお洒落。ジャンクフードと和食。みたいな。一見相反してるものをひとつの料理にして提供してくるワクワク感、面白さ。でもそのサウンドの裏側にはジャズ屋らしい理屈が隠れてたりとか(笑)。そんなところがとっても魅力的だと思います。

伊藤が初めて作曲した楽曲であり、バンドのロックなイメージを決定付けた“Guns of Saxophone”、竹内のテクニカルな速弾きが耳に残る“Freeway”、管楽器の音色の美しさが際立つ“Green Field”と、アルバムに収録された既発曲の多面性からは、シライシの言う「バランス感覚」が確かに伝わってくる。

冒頭から竹内の早弾きが際立つ“Freeway”

シライシ:今回、僕は初めて関わらせていただいたということで、まずは、彼らのスタイル、目指す場所の核となる部分をなるだけ増幅するお手伝いができたらいいな、という気持ちで参加させていただきました。想定内、想定外含めて色々なアイデアを投げさせていただいて、バンドがチョイスしていくものにレスポンスしてキャッチボールしていくという感じで、エンジニアさんやサウンドの方向性などなどを提案させていただきました。

シライシ紗トリ

既発曲の中で最も古いのは、『FIVE COLOR ELEMENTS』に収録されていた“Hop”。以前はいかにもジャズ然とした演奏だったが、「Anthology ver」は冒頭に伊藤のアジテーションが挿入され、軽快なスウィング感はそのままに音圧を増し、ベースにはエフェクトをかけるなどの現代的なアプローチによって、より踊れるサウンドへと進化を遂げている。

シライシ:オリちゃん(織田)やじゅんじゅん(藤田)は前から僕の仕事をたまに手伝ってもらっていたのですが、今回はアーティストとしての2人に関わらせていただけて、違う一面を見られてとても新鮮でした。

バンドの面白さって、それぞれの出す音やスタンスに対する微妙な価値観のズレから生じる化学変化が、バンドを思いもよらない場所へ導いてくれたりすることだと思うのですが、彼らが時間をかけて積み上げてきた共通言語が、レコーディングの音に反映されていく過程がとても心地いいなあと感じながら参加させていただきました。

TRI4TH『ANTHOLOGY』(Apple Musicはこちら

『フイナム・アンプラグド』の表紙で注目を集めるイラストレーターも、TRI4THのピースに

メジャーデビューを機に、彼らのビジュアル面が変化していることにも注目したい。近年のアーティスト写真は黒シャツに白ネクタイが基本で、ロック的なイメージに一役買っていたが、現在はそれぞれが個性を主張するファッショナブルなスーツスタイルに変化。長年着物をトレードマークにしていた織田もスーツを着用し、ステッキがキーアイテムとなっている。

ファッション、カルチャー、ライフスタイルを幅広く紹介するウェブマガジン『フイナム』の編集者で、音楽にも造詣の深い宮崎諒太郎はTRI4THの魅力についてこう語る。

宮崎:クラシックなイメージが強く、若い世代にはあまり馴染みのないジャズを、現代的に昇華したニュージャンルとして発信しているTRI4TH。所属する複数のメンバーがロックやパンクに影響を受けていることもあり、これまでジャズではあり得なかったパワフルなサウンドが心を揺さぶります。ライブで踊りたくなる楽曲が勢揃いしているので、今後はたくさんのフェスで観られることを期待しています。

同じくロックなイメージだったアルバムジャケットも大きく変化。メンバー自身がモデルとなったジャケットのイラストを手掛けたのは、Beams TやUNITED ARROWSとのコラボレーションなどで注目を集め、雑誌『フイナム・アンプラグド』の表紙イラストレーションも担当する竹内俊太郎で、バンドの新たなイメージを作り出している。

宮崎:多種多様なカルチャーをミックスさせたイラストを描き出す竹内俊太郎さんらしく、ポップでユーモラスなジャケットに仕上がった印象です。メンバーそれぞれの個性や特徴がしっかりと反映されていますね。

TRI4TH『ANTHLOGY』ジャケット
TRI4TH『ANTHLOGY』ジャケット(Amazonで見る

竹内俊太郎のイラストによる、『フイナム・アンプラグド』表紙(Vol.8「2018 AUTUMN WINTER」号)

現在のTRI4THはジャズもロックも血肉化した上で、音楽性もビジュアルも、狭義のカテゴライズからはすっかり解放されている。そして、そういった存在こそが音楽というカルチャーを牽引する大衆的な存在になっていくことは、とっくの昔に「スカ」というカテゴリーから抜け出していた東京スカパラダイスオーケストラを例に出すまでもなく、これまでの歴史が確かに証明している。TRI4THは今まさに、そんなスタートラインに立ったのだ。

リリース情報
TRI4TH
『ANTHOLOGY』初回生産限定盤

2018年11月14日(水)発売
価格:3,500円(税込)
SECL-2346/7
※紙ジャケット仕様

[CD]
1. Stompin' Boogie
2. Maximum Shout
3. Sand Castle (Anthology ver)
4. Guns of Saxophone (Anthology ver)
5. Freeway (Anthology ver)
6. Green Field (Anthology ver)
7. Hop (Anthology ver)
8. FULL DRIVE (Anthology ver)
9. Volcano
10. DIRTY BULLET
11. Final Call
[DVD]
ドキュメント映像

TRI4TH
『ANTHOLOGY』通常盤(CD)

2018年11月14日(水)発売
価格:3,000円(税込)
SECL-2348

1. Stompin' Boogie
2. Maximum Shout
3. Sand Castle (Anthology ver)
4. Guns of Saxophone (Anthology ver)
5. Freeway (Anthology ver)
6. Green Field (Anthology ver)
7. Hop (Anthology ver)
8. FULL DRIVE (Anthology ver)
9. Volcano
10. DIRTY BULLET
11. Final Call

イベント情報
『TRI4TH“Shout”Tour』

2018年12月2日(日)
会場:福岡県 ROOMS

2018年12月3日(月)
会場:広島県 LIVE JUKE

2018年1月18日(金)
会場:大阪府 梅田シャングリラ

2018年1月19日(土)
会場:愛知県 名古屋 JAMMIN’

2018年3月15日(金)
会場:東京都 渋谷WWWX

プロフィール
TRI4TH
TRI4TH (とらいふぉーす)

2009年3月に、須永辰緒主宰レーベル”DISC MINOR”からアナログシングル『TRI4TH plus EP』でデビュー。2009年11月には、脚本・三谷幸喜、音楽監督・小西康陽ミュージカル『TALK LIKE SINGING』に出演、東京・ニューヨーク公演に参加する等、幅広い活動を展開。ジャズをベースにロックやスカを取り入れた音楽性が高く評価され2017年2月のNISSAN JAZZ JAPAN AWARD『アルバム・オブ・ザ・イヤー』ニュースター賞受賞。ライブではフランス『Jazz a Vienne』、デンマーク『Copenhagen Jazz Festival 2017』をはじめ、2年連続『東京ジャズ』『札幌シティジャズ』等へ出演など国内外のフェスにも出演。2018年11月にはソニー・ミュージックより満を持してフルアルバム『ANTHOLOGY』をリリース。



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