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小袋成彬が語る、宇多田ヒカルとの制作と、全体主義に対する懐疑

小袋成彬が語る、宇多田ヒカルとの制作と、全体主義に対する懐疑

小袋成彬『分離派の夏』
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:西田香織 編集:矢島由佳子
2018/04/04

本格的なデビューを前に、すでに多くの人がその才能に気付きつつある。感情の震えを生々しく響かせる歌声と共に、新たな形で日本語の詩情を形にするシンガーソングライターとしての小袋成彬の存在感が、急速に広まりつつある。

デビューアルバム『分離派の夏』のリリースは4月25日。全曲のプロデュースをつとめたのは宇多田ヒカルだ。「この人の声を世に送り出す手助けをしなきゃいけない――そんな使命感を感じさせてくれるアーティストをずっと待っていました」という彼女のコメント、そして先行配信された“Lonely One feat. 宇多田ヒカル”は大きな反響を巻き起こした。

大学時代にR&Bユニット「N.O.R.K.」を結成、その解散後には自ら立ち上げた音楽レーベルの「Tokyo Recordings」代表として様々なアーティストの作編曲やプロデュースワークに携わってきた彼。これまではどちらかといえば裏方としてのキャリアを経てきたわけだが、しかし、このアルバムには彼自身の私的な表現が貫かれている。コマーシャリズムとは一線を画し、とても純度の高い文学性を持った音楽が形になっている。

その核にあるのはどんな精神性なのか。彼に問うた。

レーベルは、疑問を持ちながらやっていたところがあったんです。「音楽って、そういうものだっけ?」って。

—アルバム『分離派の夏』を聴いてまず最初に思ったことなのですが、小袋成彬さんが裏方としてではなく、シンガーソングライターとして自分自身を表現することに開眼した、腹が据わったタイミングがきっとあったと思うんです。そういうターニングポイントについて教えてもらえればと思うのですが。

小袋:あったかどうかと言われたら、正直、ないです。なにも変わらないですね。4年前から心境も覚悟も変わらない。ただただゆるやかな流れのなかでこうなったという感じです。

小袋成彬

小袋成彬
小袋成彬

—Tokyo Recordingsのレーベル代表としてプロデュースや作編曲の仕事(水曜日のカンパネラ、柴咲コウ、iriなど)をされていたときは、どういう意識でしたか?

小袋:レーベルを始めたときは、ビジネスなので、経営目標を立てないといけないじゃないですか。正直、そういったことに疑問を持ちながらやっていたところはあったんです。「音楽って、そういうものだっけ?」「なんとなく違うな」って。

—「なんとなく違うな」というと?

小袋:レーベルをやっていても、儲からないし、面白くもない。他のレーベルのA&Rと揉めたりしたこともあって。歌いたいと思ったことはないんですけど、自分の作品を作らなければいけないという思いがふつふつと湧いていった。そういう流れです。

小袋成彬

小袋:ひとつ、エポックメイキングなことでいうと、柴咲コウさんとお互いにすごくいい形でお仕事ができて、それが終わった日に南平台のデニーズでご飯を食べていたら、沖田さん(沖田英宣。エピックレコードジャパン ゼネラルマネージャー。宇多田ヒカルのデビュー時からの制作ディレクター)から電話がかかってきたんですよね。

—それはどういう連絡だったのでしょう?

小袋:宇多田さんと一緒にレコーディングしませんか、というオファーでした。そのときは、ちょうどそこから1か月くらいなにも仕事がない時期で。「プロデュースワークが一段落だな」と思っていたら、そういう話がきたから、「そういう流れに自分がいるんだろうな」と思ったんです。

—そこから宇多田ヒカルさんのアルバム『Fantôme』収録の“ともだち with 小袋成彬”に参加したわけですね。その経験は、単にフィーチャリングで参加したというだけでなく、彼女の姿勢や価値観に触れるきっかけになったと思うのですが。

小袋:もちろんそうですね。でも、それが(自分の作品を作ろうと思った要因として)すべてではないです。

宇多田ヒカル“ともだち with 小袋成彬”を聴く(Spotifyを開く

—宇多田さんとの出会いから受け取ったもの、刺激になったことはありましたか?

小袋:もちろんありますけど、それは他の人と変わらないですよ。いろんな人と会ったときと同じように、それぞれに学びがある。宇多田さんだから特別だったというのはない。

小袋成彬

—いろんな人との出会いで刺激がある、ということですよね。

小袋:そうです。ただ、宇多田さんは作編曲まで本当に全部自分でやっている人なんですよ。僕が知るなかでは、そういう人は他にほとんどいないんです。もちろんストリングスアレンジとか、自分が作ったものを元に誰かにお願いしているところもあるんですけど、基本的な部分は誰の手も借りていない。

そうなると、たとえば歌詞をより響かせたいときに、言葉を変えるだけではなく、ベースやドラムを抜いたり、前後の曲構成を変えたりすることができる。そういう視点がある人と話すことができて、「これでいいんだ、トップランカーはこういうことをしているんだ」とわかったのは、僕の自信にもなりました。そういう点では、いろんな示唆に富んだ出会いでしたね。

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リリース情報

小袋成彬
『Selfish』
『Summer Reminds Me』
『042616 @London』

2018年4月4日(水)から配信リリース

小袋成彬
『Lonely One feat.宇多田ヒカル』

2018年1月17日(水)から配信リリース

小袋成彬『分離派の夏』
小袋成彬
『分離派の夏』(CD)

2018年4月25日(水)発売
価格:3,000円(税込)
ESCL-5045

1. 042616 @London
2. Game
3. E. Primavesi
4. Daydreaming in Guam
5. Selfish
6. 101117 @El Camino de Santiago
7. Summer Reminds Me
8. GOODBOY
9. Lonely One feat. 宇多田ヒカル
10. 再会
11. 茗荷谷にて
12. 夏の夢
13. 門出
14. 愛の漸進

イベント情報

『小袋成彬 ワンマンライブ』

2018年5月1日(火)
会場:東京都 渋谷 WWW
料金:3,800円(ドリンク別)

プロフィール

小袋成彬
小袋成彬(おぶくろ なりあき)

1991年4月30日生まれ。R&Bユニット「N.O.R.K.」のボーカルとして活躍。音楽レーベルTokyo Recordings設立し、水曜日のカンパネラへの歌詞提供のほか、adieuなど様々なアーティストのプロデュースを手掛ける。2016年、宇多田ヒカルのアルバム『Fantôme』収録曲“ともだち with 小袋成彬”にゲストボーカルとして参加。最新ワークスは映画『ナラタージュ』主題歌を歌うadieuのデビューシングル(アレンジおよびプロデュース)。伸びやかな声と挑戦的なサウンドデザイン、文藝の薫り高き歌詞が特徴。2018年4月25日、デビューアルバム『分離派の夏』を携え、いよいよソロアーティストとしてデビュー。

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