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是枝裕和×井浦新×伊勢谷友介 まだ大人になれなかった日々の話

是枝裕和×井浦新×伊勢谷友介 まだ大人になれなかった日々の話

『是枝裕和 Blu-rayコレクション』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:森山将人 編集:山元翔一

「再現」ではなく「生成」に立ち会うという発想で映画を撮ろうとしてたんだと思う。(是枝)

—3人が初めて顔を合わせたのが、是枝監督の2作目の長編映画『ワンダフルライフ』で。あの映画は、フィクションとドキュメンタリーが入り混じった不思議な映画になっていますが、そもそもどんなアイデアやコンセプトで撮ろうと思った作品だったのですか?

是枝:あの映画の骨格となる脚本自体は、僕が25歳か26歳の頃に書いていたんだよね。僕がテレビの世界に入って2年目ぐらいのときに書いて、テレビのシナリオコンクールに出して、奨励賞か何かをもらった脚本が元になっていて。でもそれは1時間のテレビドラマ用の脚本だったのね。だから、あんなふうに一般の人をドキュメンタリーのように撮るアイデアは、もちろんその段階にはなくて、もっとミニマムな作品だったんです。

『ワンダフルライフ』より
『ワンダフルライフ』より(商品サイトを開く

『ワンダフルライフ』より
『ワンダフルライフ』より

是枝:でも、『幻の光』という1本目の映画を幸運にも撮ることができて、それがある程度の評価をいただいて2本目が撮れることになった。そのときに、自分がやりたいと思っている方法論をオリジナルの作品でやってみたい気持ちが最初にあったんだと思う。もう20年も前の話だからはっきりとは思い出せないんだけど。

—その方法論というのは?

是枝:当時はそういう言い方をしてなかったと思うけど、「何かが生まれる瞬間を撮っていく」ということは考えていたかな。何かの「再現」ではなく「生成」に立ち会うという発想で映画を撮ろうとしてたんだと思う。それは頭でしかわかってなかったことなんだけど、当時の自分が山崎(裕)さんを撮影に入れたっていうのは、そういうことなのかなと。

—山崎さんは、どちらかと言うとドキュメンタリー畑のカメラマンですよね。

是枝:そう。出演者のおじいちゃん、おばあちゃんたちが何かしゃべりはじめたら、いつの間にか山崎さんが撮ってて。ホームビデオのようにカメラを回してたから、「フィルム足りなくなるのに、どうすんだよ」って内心思ってたんだけど、上がってきたものが面白かったんだよね。それで、「俺、カッコいいこと言ってたけど、全然わかってなかったわ」って思って。だから、その方法論をいちばん身体でわかっていたのは、山崎さんだったんじゃないかな。

是枝裕和
是枝裕和

『ワンダフルライフ』より
『ワンダフルライフ』より

この2人とは、そもそも役者と監督っていう関係とは、ちょっと違う関係からはじまっている。(是枝)

—『ワンダフルライフ』は、出演者を選ぶオーディションも、かなり変わった感じだったんですよね?

伊勢谷:そう、思い出したわ。オーディション前に、「もし死んで生き返るとしたら、どの瞬間を選びますか?」っていう質問をもらったんですよ。で、「そんなの選ばないでしょう。同じところを回り続けるのとか、だいぶ幸せじゃない気がする」って、オーディションで答えて。

是枝:そうそう。伊勢谷くんがそんな話をしたので、それをそのまま映画のなかでしゃべってもらえないかって言ったのは覚えてる。

井浦:僕は「自分にとって大切な思い出をひとつ教えてください」みたいな作文を書いたら、「会ってお話しましょう」となって……軽い気持ちで是枝さんのところに行ったら大人たちがいっぱいいて、「やばい、どうしよう」って(笑)。たしか、そんな感じだったと思います。

左から:是枝裕和、井浦新、伊勢谷友介
左から:是枝裕和、井浦新、伊勢谷友介

—そのやり方にはどんな狙いがあったのでしょう?

是枝:何を考えてたんだろうな……。

伊勢谷:素人がほしかったのは間違いないですよね。お芝居ができる人を選ぼうと思っていたわけじゃない。

是枝:うん。でも、オーディションをしているときは、一般の人もドキュメンタリーのように撮るということをまだ決めてないはずなんだよな。まあ、当時は役者の演技ってものに興味がなかったんだと思う。

「何かが生まれる瞬間を撮りたい」って考えたときに、ある役者が持っているテクニックみたいなものを撮りたいとは思ってなかった。いまは役者って面白いなと思うようになったけど、当時は全然そういうふうに考えてなかったから。むしろ、一般の人にカメラを向ける感覚で、役者を撮ってみたかったんだよね。

—是枝さんは、もともとテレビのドキュメンタリーを撮っていたし、ドキュメンタリストとして撮りたいと思わせるような人を探していた?

是枝:そうだね。だから、オーディションをして、「あ、この人、撮りたいな」って思った人を選んだ感じなんだよね。「この人、芝居が上手いな」じゃなくて、「この人、好きだな。もうちょっと話してみたいな」とか「撮りたいな」って思う人を残すように。だから、この2人とは、そもそも役者と監督っていう関係とは違うところからはじまっているから、ちょっと特別なんですよね。

『ワンダフルライフ』(Blu-ray)ジャケット
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前から友介のことは知っていたけど、2人がひとつのなかに収まったときに、何か面白いことが生まれるなんて思ってもみなかった。(井浦)

—当時の2人って、どんな感じだったんですか?

是枝:いまとあんまり変わらないですよ。昔から伊勢谷くんは、しゃべりながら考えるタイプで、しゃべりながら自分が言おうとしてることにフォーカスがスーッと合っていく感じだったし、新くんはそのあいだずーっと黙って話を聞きながら、自分のなかで言葉を紡いでいるタイプだった。そこはもうみんな、変わらないよね。それぞれの場所ではきっとまた違う顔があるんだろうけど、この3人でいるときは昔からこんな感じ。

—いま話していても思いましたが、まったく違うタイプというか、ある意味真逆のおふたりで。そのコンビ感みたいなものも、きっと大事だったんでしょうね。

是枝:そうだね。それはあると思う。

井浦:でも、是枝さんが僕らをあの現場にポンって放り込むまで、自分では気づけなかったですよね。その前から友介のことは知っていたけど、2人がひとつのなかに収まったときに何か面白いことが生まれていくなんて思ってもみなくて。それはホントに、是枝さんが発見してくれたことなんですよね。

伊勢谷:そうだね。同じモデル仕事をやっていて現場で会ってしゃべったりはしてたけど、新くんはKIRIくんとかと仲がよくて、俺はKEEくん(現在は「渋川清彦」の名前で役者として活躍)とかと仲がよかったから。

是枝:あ、違うグループだったの?

伊勢谷:いや、グループっていうほど、それぞれガッチリ結びつきが強いわけじゃないんだけど、遊び方の雰囲気とかですかね。新くんはどちらかと言うと文化系で、俺は体育会系というか「イエー!」みたいな感じだったから(笑)。

左から:井浦新、伊勢谷友介
左から:井浦新、伊勢谷友介

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リリース情報

『是枝裕和監督 Blu-ray7タイトルセット』(7Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:28,728円(税込)

『幻の光』
『幻の光』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『ワンダフルライフ』
『ワンダフルライフ』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『DISTANCE』
『DISTANCE』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『誰も知らない』
『誰も知らない』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『花よりもなほ』
『花よりもなほ』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『歩いても 歩いても』
『歩いても 歩いても』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『空気人形』
『空気人形』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

プロフィール

是枝裕和(これえだ ひろかず)

1962年、東京生まれ。87年に早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出、14年に独立し、制作者集団「分福」を立ち上げる。1995年、初監督した『幻の光』が、第52回ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞。2作目の『ワンダフルライフ』(1998)は、各国で高い評価を受け、世界30ヶ国、全米200館での公開と、日本のインディペンデント映画としては異例のヒットとなった。2004年、監督4作目の『誰も知らない』がカンヌ国際映画祭にて映画祭史上最年少の最優秀男優賞(柳楽優弥)を受賞。2009年、『空気人形』が、第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、官能的なラブ・ファンタジーを描いた新境地として絶賛される。2013年、『そして父になる』で第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞ほか、国内外で多数受賞。17年、『三度目の殺人』が第74回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に正式出品、日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか6冠。18年、最新作『万引き家族』が第71回カンヌ映画祭コンペティション部門に正式出品決定、国内では2018年6月8日公開予定。

井浦新(いうら あらた)

1974年、東京都生まれ。98年に映画『ワンダフルライフ』に初主演。以降、映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。そのほか『SAVE THE ENERGY PROJECT』のアンバサダー、そしてアパレルブランド『ELNEST CREATIVE ACTIVITY』のディレクターを務めるなどフィールドは多岐にわたる。映画『止められるか、俺たちを』『赤い雪 RED SNOW』『菊とギロチン』『こはく』『嵐電』など公開が控えるほか、カンテレ・フジテレビ系2018年7月期ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』の出演も決定している。

伊勢谷友介(いせや ゆうすけ)

1976年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部修士課程修了。大学在学中、ニューヨーク大学映画コースに短期留学し、映画制作を学ぶ。『ワンダフルライフ』(是枝裕和監督、1998年)で俳優デビュー。その他代表作品としては、『CASSHERN』(紀里谷和明監督、2004年)、『龍馬伝』(NHK大河ドラマ、2010年)、『るろうに剣心』(大友啓史監督、2014年)など。2002年、初監督作品『カクト』が公開。2008年、「人類が地球に生き残るためのプロジェクト」として「REBIRTH PROJECT」をスタートさせ、株式会社リバースプロジェクトの代表を務める。

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